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後編
しおりを挟む「え……」
「はは、驚いたか? だがこれは現実なのだよ。婚約は破棄する、そう言っているのだ」
「本気、なのですか」
「ははは、当たり前だろう! ま、信じられないし信じたくない、という気持ちも分からないではないがね。なんたって切り捨てられるのだからな、はっははは!」
戸惑う私を見て彼はとても楽しそうだった。
愉快そうに笑っていた。
どうしてそんな風に……。
とはいえ、リュージュアに縋りつく気もなかったので、ここは大人しく頷いておくことにした。
「そうですね、では、そういうことで。婚約破棄、受け入れます」
落ち着いてそう返すと、彼は少しばかり意外さに衝撃を受けたような顔をしていたけれど。
「ははっ、ま、いい覚悟だね」
平静を装ってそれだけ返してきた。
この日をもって、私とリュージュアの関係は解消となる。
だが、ちょうどそのタイミングで、私は一人のおばあさんのような容姿の魔法使いに才能を見抜かれ――彼女に弟子入りすることとなった。
それから五年、みっちり彼女のもとで修業を受け、それによって才能を開花させた私は魔法使いとして新たなる人生を歩むこととなる。
少々不思議な世界、でも、そこへ踏み込むことに迷いはなかった。
なぜって、その時の私には何もなかったから。
それに、魔法使いというものには本で馴染んでいたから。
こうして私は魔法使いとして大成し、富を築き、国を護る聖女と呼ばれるようになり――かつての婚約破棄など気にもならないくらい素晴らしい道を歩めることとなった。
ちなみにリュージュアはというと、あの後いろんな女性と顔合わせをしてみるもその残念な性格からほとんどの女性から即座に拒否されてしまい、やがて心が折れて死を選んだそうだ。
◆終わり◆
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