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前編
しおりを挟むこんなに辛いことって、こんなに悲しいことって、生まれて今日まで体験したことがなかった気がする。
私は恵まれていたから。
温かい人に囲まれて育ってきたから。
だから――知らなかった、世界にはこんな絶望と闇があるってこと。
「君を愛していくのは無理だと思った。だから、婚約は破棄とさせてもらう。いいね? これで君とはおしまいだ」
婚約者ローゼフォン。
私は彼を愛していた。
けれども彼は私を愛せなくなってしまった。
「悪いが、できればもう二度と顔を見たくないんだ」
「そんな……」
「二度とその顔を晒さないでくれよ。じゃあな」
温かく接してもらえることを当たり前のように思っていた、それは馬鹿だったと思う。
でも。
二度と顔を見たくない、なんて。
どうしてそこまで嫌がるの?
どうしてそんなことを平然と言えるの?
もやもやした。
だが、その日の帰り道、とぼとぼ歩いていた私の目の前に突如大きなしゃぼんだまがふわりと流れてきて――気づけば私は透明なその中に入ってしまっていた。
どうしよう、と思っていると。
しゃぼんだまは私を取り込んだまま風に流される。
どこかへ向かっているようだ。
気ままにふわりふわりと揺れ動きつつ空を飛んでゆく。
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