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2話
しおりを挟む切なくて、辛くて、悲しくて。それと同時に悔しさもあって。涙が止まらなかった。ただ泣くことしかできない、が、それが今やりたいことなのだ。だからどこまでも沈み込むように泣いた。涙を流して、拭いて、また溢れさせて。
そして、溜め息をつく。
――絶望の夜は長い。
◆
「ねえ聞いた!?」
「あ、母さん」
翌日の朝のことだ。
「アーロンくん、亡くなったんですって」
「え」
朝一番に告げられたのは衝撃的なことであった。
「ど、どういう……亡く……? ほ、本当なの……? そんな、ことって」
「昨夜家に強盗が入ったそうで」
「まさか、それに殺されて……?」
唇の先まで震えてしまう。
「ええ、そうみたい。彼も、ご両親も、愛犬も」
「愛犬まで……」
彼のことなんてもう愛してはいない。
だって彼は私を傷つけた人。
特に今は一番嫌いなくらいの人なのだ。
だから彼がこの世から消えたってそれほど辛くはないはず、なのに――けれどそれでも心が震えた。衝撃と恐怖に。
彼が死ぬなんて思っていなかったから、だろうか。
「信じられない……」
悲しくはないけれどショックは多少受けている。
「貴女を裏切ったから、傷つけるような酷いことをしたから、きっと天罰がくだったのだわ」
そう述べる母の顔つきは冷ややかだった。
ああ、そうか。
母は母なりに私を傷つけた彼に対して腹を立てていたのだ。
落ち着いていても、冷静に見えても、それでも。彼女は彼女なりに彼への怒りを抱えていたのか。
……私は孤独ではなかったのだ。
そう気づいた時、私は、希望の光を見た気がした。
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