強風の日に呼び出されて苦労しながら彼のもとへ行ったところ、婚約破棄を告げられました。なんというか、いろんな意味で切ないです。

四季

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1話「最後になって」

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「伝えるのが急になったのは悪いと思うのだが……君との婚約は破棄とすることにした」

 不自然なほど風が強いその日、私は婚約者オレットに呼び出され、彼の自宅へと向かった。

 強風だったので馬車に乗るのも怖かった。どうしてよりによってこんな強風の日に、と思ったが、呼び出されては拒否することはできず。帽子を何度も風にもっていかれそうになりながらも馬車に乗って彼の家へと向かった。

 そしたらこれだ。

「婚約破棄、ですか」
「ああ。君のことは愛せない、だからもうやめにすることにしたんだ」

 今も外は風が強いようで。
 時折窓枠ががたがた音を鳴らす。

「これまでは心に嘘をついてきた。でももうそんなことはしない、そう決意した。だから、愛せる人でない君とは生きない。我慢はもうしないんだ」

 まるで私が彼を縛り付けていたかのような言い方。
 正直不愉快さはある。
 彼の言い方だと私が悪女のようではないか。

「ということだ。今日で終わり、もう二度と君には会わない」
「そうですね。そんなに嫌ならその方が良さそうに思います」
「そうだろう」
「では……私は、帰りますね」
「理解してくれてありがとう。早速そうしてくれ」

 あぁ、最後になって……初めて「ありがとう」なんて言われた。
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