強風の日に呼び出されて苦労しながら彼のもとへ行ったところ、婚約破棄を告げられました。なんというか、いろんな意味で切ないです。

四季

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2話「流れのままに」

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 思い返せば、彼から「ありがとう」なんて言われたのはこれが初めて。これまで一度もそんな言葉をかけられたことはなかった。崖から転落しそうになった彼を助けたあの時でさえ、彼は礼は言わなかったように思う。

 そっか。
 結局、私が彼の前から消えることが、彼にとっては一番良いことだったんだ。

 そう思うとどこか悲しくて。

 私など要らなかった。
 改めてそう突きつけられたような気がして。

 帰り道、馬車に乗って泣いた。

 彼への感情なんてそれほど大きくないものと思っていたのに。
 予想を上回って。
 切なさという名の感情が胸を押し潰した。

 私、幸せになりたかったんだ。

 初めて気づいた。

 でももう遅い。
 すべては終わってしまった。


 ◆


 その後私はしばらく落ち込んでしまった。毎日何をするでもなくぼんやりしていた。何かをする、というほどの気力がなくて。ベッドに寝転がって天井を眺めてぼんやりするばかりだった。

 でも、ある日、そんな私のもとへ一人の男性がやって来て。

「急にすみません。実は貴女に話したいことがありまして……今、少しだけ、良いでしょうか?」

 アルトと名乗るその男性との出会いが、私の人生に再び光を与える。


 ◆


 なぜこうなったのか。
 私は今この国を護る兵士となっている。

 しかも、先月優秀者として表彰された。

「お久しぶりです」
「アルトさん!」

 あの日、落ち込んでいた私のもとへやって来たアルトは、私に特殊な力があると主張して国防軍へ勧誘してきた。

 最初はまったくもって意味が分からずただ戸惑うことしかできなかったのだけれど。取り敢えずお試しに、と言われ、ほぼ強制的に国防軍基地へ連れていかれて。そこで言われた通りにしたところ、強力な魔法が使えることが判明した。

 その時の私は何をしたいということもなかったので、何となくの流れで頷いてしまって。

 それから私は国防軍の兵の一人となった。
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