2 / 3
2話「流れのままに」
しおりを挟む
思い返せば、彼から「ありがとう」なんて言われたのはこれが初めて。これまで一度もそんな言葉をかけられたことはなかった。崖から転落しそうになった彼を助けたあの時でさえ、彼は礼は言わなかったように思う。
そっか。
結局、私が彼の前から消えることが、彼にとっては一番良いことだったんだ。
そう思うとどこか悲しくて。
私など要らなかった。
改めてそう突きつけられたような気がして。
帰り道、馬車に乗って泣いた。
彼への感情なんてそれほど大きくないものと思っていたのに。
予想を上回って。
切なさという名の感情が胸を押し潰した。
私、幸せになりたかったんだ。
初めて気づいた。
でももう遅い。
すべては終わってしまった。
◆
その後私はしばらく落ち込んでしまった。毎日何をするでもなくぼんやりしていた。何かをする、というほどの気力がなくて。ベッドに寝転がって天井を眺めてぼんやりするばかりだった。
でも、ある日、そんな私のもとへ一人の男性がやって来て。
「急にすみません。実は貴女に話したいことがありまして……今、少しだけ、良いでしょうか?」
アルトと名乗るその男性との出会いが、私の人生に再び光を与える。
◆
なぜこうなったのか。
私は今この国を護る兵士となっている。
しかも、先月優秀者として表彰された。
「お久しぶりです」
「アルトさん!」
あの日、落ち込んでいた私のもとへやって来たアルトは、私に特殊な力があると主張して国防軍へ勧誘してきた。
最初はまったくもって意味が分からずただ戸惑うことしかできなかったのだけれど。取り敢えずお試しに、と言われ、ほぼ強制的に国防軍基地へ連れていかれて。そこで言われた通りにしたところ、強力な魔法が使えることが判明した。
その時の私は何をしたいということもなかったので、何となくの流れで頷いてしまって。
それから私は国防軍の兵の一人となった。
そっか。
結局、私が彼の前から消えることが、彼にとっては一番良いことだったんだ。
そう思うとどこか悲しくて。
私など要らなかった。
改めてそう突きつけられたような気がして。
帰り道、馬車に乗って泣いた。
彼への感情なんてそれほど大きくないものと思っていたのに。
予想を上回って。
切なさという名の感情が胸を押し潰した。
私、幸せになりたかったんだ。
初めて気づいた。
でももう遅い。
すべては終わってしまった。
◆
その後私はしばらく落ち込んでしまった。毎日何をするでもなくぼんやりしていた。何かをする、というほどの気力がなくて。ベッドに寝転がって天井を眺めてぼんやりするばかりだった。
でも、ある日、そんな私のもとへ一人の男性がやって来て。
「急にすみません。実は貴女に話したいことがありまして……今、少しだけ、良いでしょうか?」
アルトと名乗るその男性との出会いが、私の人生に再び光を与える。
◆
なぜこうなったのか。
私は今この国を護る兵士となっている。
しかも、先月優秀者として表彰された。
「お久しぶりです」
「アルトさん!」
あの日、落ち込んでいた私のもとへやって来たアルトは、私に特殊な力があると主張して国防軍へ勧誘してきた。
最初はまったくもって意味が分からずただ戸惑うことしかできなかったのだけれど。取り敢えずお試しに、と言われ、ほぼ強制的に国防軍基地へ連れていかれて。そこで言われた通りにしたところ、強力な魔法が使えることが判明した。
その時の私は何をしたいということもなかったので、何となくの流れで頷いてしまって。
それから私は国防軍の兵の一人となった。
10
あなたにおすすめの小説
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう
四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。
親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。
しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる