強風の日に呼び出されて苦労しながら彼のもとへ行ったところ、婚約破棄を告げられました。なんというか、いろんな意味で切ないです。

四季

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3話「戦いとその果てにあるもの」

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「調子はどうです?」
「え。あ……はい、そこそこ上手くいっています」
「はは、そこそこ、ですか。これまた冗談が出ましたね。先日表彰されていましたよね? 知っていますよ」

 それから現在まで私は訓練と実戦の中で生きてきた。

 乗り気でなかったけれど、いざ始めると何となく馴染めた。

「たいしたことないですよ、私なんて……少し魔法が使えるくらいで、完全にそれ頼みですから……」

 私にまともに話しかけてくれるのはアルトだけだ。
 他の知人は大抵少し離れたところから話しかけてくる。

「そう言わないでください。魔法も素晴らしい才能です」
「アルトさん……気を遣わないでくださいよ?」
「いやいや、そんなんじゃなくてですね。事実を言っただけです」


 ◆


 数ヶ月後、魔王軍の侵攻が始まった。

 その戦いでは今まで以上に魔法を使える者が重宝されることとなった。なぜなら物理攻撃が効かない敵もいるからだ。魔法でしか対抗できない状況というのもあるのである。

 私もその戦い参加した。

 で、侵攻開始から数週間、魔王軍を無事撃退することができた。


 ◆


 魔王軍を倒すことはできたがその戦いの中で負傷した私は、一線からは退くこととなった。

 そんな私を拾ってくれたのはアルトで。
 戦力になれなくなってしまった私のことも彼は必要としてくれた。

「ぜひ、よろしくお願いします」
「アルトさん……気を遣わないでくださいよ?」
「いやいやそんなんじゃないんです」
「本当ですか?」
「もちろん! 当然ですよ」

 そうして私はアルトと結婚した。

「アルトさん……これまでありがとうございました。そして……これからも、末永く、よろしくお願いします」

 ちなみに元婚約者のオレットは、私に婚約破棄を告げたあの強風の日の晩に、突風で家ごと吹き飛ばされて落命したそうだ。

 でもそれを聞いても、亡くなっていたのか……、としか思わなかった。

 だってもう他人だろう?
 他に思うべきことなんてあるのか?

 ……あるわけがない。

 切り捨てられたあの日から私と彼は他人なのだから。


◆終わり◆
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