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前編

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 私にはかつて一度だけ出会って印象に残っている人がいる。

 確か彼はとても背が高くてすらっとしていて……それでいて髪が虹色という個性的な人だったと思う。

 彼とは植物園で出会った。
 そして何となくの流れで二人で話をして。

 その時はそれで別れて、以降一度も会ったことはなかったのだけれど――。

「貴女、もしかして、前に植物園で会った方では!?」
「あ」

 婚約者に捨てられた次の日、印象に残っていた彼と道で偶然出会った。

「どうして……こんなところに……?」
「いえ、たまたま通っただけです」
「ええっ。じゃあ本当に偶然ということですか」
「そうです」
「へえ……不思議ですね、そんなことってあるんだなぁ……」

 彼は名をモチテスと名乗った。
 何でもデザイナーをしているらしい。
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