4 / 12
4話「いきなり事情が明かされる」
しおりを挟む
用意してもらった部屋の中にいる間、ヴァッファリーナから、魔王マオンに関して聞くことができた。
彼は魔族の王、魔族らからは偉大な王として尊敬されているらしい。
ただ、女性と接することが苦手らしく、幼い頃から知り合いだった一部の女性を除く女性と会話するとなると緊張してしまうそうだ。
女性そのものに嫌悪感を抱いている、というわけではないようだが。
ただ、どうしても女性と上手く関わることができないそうで、そのせいでなかなか結婚もできないらしい。
しかも厄介なことに、まったく接触せず形だけの結婚するのは女性に失礼、という考えを持っているそうで。その意思は固く、これまで周りが形だけの結婚を提案した際にはそのすべてを拒否したとのことだ。
「そういう事情もあり、これまで、いろんな種族の国から妻候補を呼んでみたのです。しかしなかなか上手くいきませんで、今に至ってしまっているのです」
「そうでしたか……」
牛柄のメイド服とクリーム色のショートヘアが個性的なヴァッファリーナは、淡々とした調子ながら、マオンに関する情報を丁寧に教えてくれた。
また、マオンの母親が人間であったということも、隠すことなく明かしてくれた。
今日ここへ来たばかりの私に明かせるということは秘密事項ではないのだろうが、それでも、こんなにいきなり明かしてもらって良かったのだろうかと思ってしまった。
「それゆえ、魔王様の容姿は人に近いのです」
「確かに……見た目は人間のようでしたね」
「はい。ですが、魔王様には魔力があります。そこは人間と異なります」
「魔力……。それは、その、魔法が使える、とか……?」
「そうですね、そのような感じです」
「凄いですね。魔法を使える、というのは、人間とは違う部分ですね」
言い終えてから「余計なことを言ってしまった!?」と密かに焦る、が、ヴァッファリーナは怒りも叱りもしてこなかった。
それから一時間ほどが経った頃、部屋の入り口、扉がじわじわと開いてきた。
開き方が不自然なので何事かと思っていると。
「し、失礼……し、しま……しまします……」
開いた扉の隙間から見えてきたのは男性にしては長い黒の髪。それに加えてどこかおどおどした声の調子だったので、入ってこようとしている者が何者なのかはすぐに察することができた。
「ローレニア、さん」
マオンだ。
彼は両手を背中側に回したままこちらへ歩いてくる。
「とても良い部屋をありがとうございます」
「……あ、い、いえいえ」
マオンは気まずそうに発したが、その直後、勢いよく花束を差し出してきた。
「どうぞっ!!」
青い花がたくさん塊になっている花束だ。
「え? あの、これは?」
「贈り物の花束ですッ!!」
「いただいて良いのでしょうか」
「もちろんです!!」
恐る恐る腕を伸ばす。
「ありがとうございます、魔王様」
彼の手から花束を受け取った。
その時の彼の腕は震えていた。
花束を受け取った私へ、彼は視線を向けてくる。彼は何か言いたそうな視線を送ってきていた。彼の赤い双眸はこちらを確かに捉えている。
「何かあるのでしょうか?」
一応そう問いかけてみると。
「実、は……その、できれば……マオン、と、呼んでください……」
呼び捨て?
いや、それはさすがにまずいだろう。
だって彼は魔族の王。私はただの妻候補の人間。そんな私が彼を呼び捨てになんかしたら、きっと、魔族に怒られてしまうだろう。なんて失礼な人、と思われかねない。
「ではマオン様でよろしいですか?」
「あっ……は、はい! そ、そ、それ、で……問題ありません!」
彼は魔族の王、魔族らからは偉大な王として尊敬されているらしい。
ただ、女性と接することが苦手らしく、幼い頃から知り合いだった一部の女性を除く女性と会話するとなると緊張してしまうそうだ。
女性そのものに嫌悪感を抱いている、というわけではないようだが。
ただ、どうしても女性と上手く関わることができないそうで、そのせいでなかなか結婚もできないらしい。
しかも厄介なことに、まったく接触せず形だけの結婚するのは女性に失礼、という考えを持っているそうで。その意思は固く、これまで周りが形だけの結婚を提案した際にはそのすべてを拒否したとのことだ。
「そういう事情もあり、これまで、いろんな種族の国から妻候補を呼んでみたのです。しかしなかなか上手くいきませんで、今に至ってしまっているのです」
「そうでしたか……」
牛柄のメイド服とクリーム色のショートヘアが個性的なヴァッファリーナは、淡々とした調子ながら、マオンに関する情報を丁寧に教えてくれた。
また、マオンの母親が人間であったということも、隠すことなく明かしてくれた。
今日ここへ来たばかりの私に明かせるということは秘密事項ではないのだろうが、それでも、こんなにいきなり明かしてもらって良かったのだろうかと思ってしまった。
「それゆえ、魔王様の容姿は人に近いのです」
「確かに……見た目は人間のようでしたね」
「はい。ですが、魔王様には魔力があります。そこは人間と異なります」
「魔力……。それは、その、魔法が使える、とか……?」
「そうですね、そのような感じです」
「凄いですね。魔法を使える、というのは、人間とは違う部分ですね」
言い終えてから「余計なことを言ってしまった!?」と密かに焦る、が、ヴァッファリーナは怒りも叱りもしてこなかった。
それから一時間ほどが経った頃、部屋の入り口、扉がじわじわと開いてきた。
開き方が不自然なので何事かと思っていると。
「し、失礼……し、しま……しまします……」
開いた扉の隙間から見えてきたのは男性にしては長い黒の髪。それに加えてどこかおどおどした声の調子だったので、入ってこようとしている者が何者なのかはすぐに察することができた。
「ローレニア、さん」
マオンだ。
彼は両手を背中側に回したままこちらへ歩いてくる。
「とても良い部屋をありがとうございます」
「……あ、い、いえいえ」
マオンは気まずそうに発したが、その直後、勢いよく花束を差し出してきた。
「どうぞっ!!」
青い花がたくさん塊になっている花束だ。
「え? あの、これは?」
「贈り物の花束ですッ!!」
「いただいて良いのでしょうか」
「もちろんです!!」
恐る恐る腕を伸ばす。
「ありがとうございます、魔王様」
彼の手から花束を受け取った。
その時の彼の腕は震えていた。
花束を受け取った私へ、彼は視線を向けてくる。彼は何か言いたそうな視線を送ってきていた。彼の赤い双眸はこちらを確かに捉えている。
「何かあるのでしょうか?」
一応そう問いかけてみると。
「実、は……その、できれば……マオン、と、呼んでください……」
呼び捨て?
いや、それはさすがにまずいだろう。
だって彼は魔族の王。私はただの妻候補の人間。そんな私が彼を呼び捨てになんかしたら、きっと、魔族に怒られてしまうだろう。なんて失礼な人、と思われかねない。
「ではマオン様でよろしいですか?」
「あっ……は、はい! そ、そ、それ、で……問題ありません!」
1
あなたにおすすめの小説
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました
藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、
騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。
だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、
騎士団の解体と婚約破棄。
理由はただ一つ――
「武力を持つ者は危険だから」。
平和ボケした王子は、
非力で可愛い令嬢を侍らせ、
彼女を“国の火種”として国外追放する。
しかし王国が攻められなかった本当の理由は、
騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。
追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、
軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。
――そして一週間後。
守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。
これは、
「守る力」を理解しなかった国の末路と、
追放された騎士団長令嬢のその後の物語。
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
婚約破棄されたので、慰謝料で「国」を買うことにしました。~知識ゼロの私ですが、謎の魔導書(AI)に従ったら、いつの間にか王家のオーナーに~
ジョウジ
ファンタジー
「セレスティア、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーで王子に断罪された公爵令嬢セレスティア。
慰謝料も貰えず、腹いせに立ち寄った古道具屋のワゴンセール。 そこでたった銅貨数枚(100円)で買った「黒い手鏡(スマホ)」を起動した瞬間、運命が変わる。
『警告。3年後の国家破綻およびマスターの処刑確率は99.9%です』 「はあ!? 死ぬのは嫌! それに、戦争が起きたら推し(アルド様)が死んじゃうじゃない!」
知識ゼロ、あるのは魔力と行動力、そして推しへの愛だけ。 パニックになった彼女は、スマホに宿るAI(ジェミニ)の極悪な経済作戦を、自分に都合よく「超訳」して実行に移す。
「敵対的買収……? 要するに、お店の借金を肩代わりして『オーナー』になれば、商品は全部タダ(私のもの)ってことね!?」
これは、内心ガクブルの悪役令嬢が、AIの指示を「素敵なお買い物」と勘違いしたまま国を経済支配し、 結果的に「慈悲深い聖女」「経営の天才」と崇められていく、痛快・勘違い無双コメディ!
※全10話の短期集中連載です。お正月のお供にどうぞ!
※テンポを重視してダイジェスト10話版となります。反響があれば長編の執筆を開始します!
※本作は、物語の構想・執筆補助にAI技術を活用し制作されました。
※小説家になろう・カクヨムにも投稿
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる