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10話「ドレスずたずた事件」
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ドレスがずたずたにされていた。
その事実を知ったのはヴァッファリーナがそのことを伝えてくれてからだった。
「このようなことが起こるとは……」
ヴァッファリーナから報告を受けてドレスを置いていた物置へ向かった。するとそこにはあのドレスがあったのだけれど、それは以前の完全な形ではなくて。矢を突き刺されたような跡が複数あり、さらに、刃物で裂かれたような部分も大きかった。
「そんな……」
「ローレニア様?」
「せっかく……用意していただいたのに……」
どうしてこんなことに。
せっかく素敵なドレスだったのに。
そもそも、誰がこんなことを? 私のものと気づいてやったのか、あるいは、そのことは知らずいたずらがてらやったのか? ……いずれにせよ酷い迷惑行為であることに変わりはないけれど。けれども、どちらなのかによって、犯行の意味は変わってくるだろう。
「落ち着いてくださいローレニア様」
「……ヴァッファリーナさん」
「作り直すことは可能です、どうか、そのような顔はなさらないでください」
ヴァッファリーナは基本的にはいつも淡々としているが、発する言葉からはさりげない優しさも見える。
「……すみません」
「ひとまず、魔王様にこのことを伝えます」
「悲しまれないでしょうか……」
「いずれにせよ、この件は伝えなくてはなりません」
「……はい」
その日は憂鬱だった。
だってそうだろう? 大切なもの、お気に入りの服、それを破壊されたのだ。そんなことをされたら誰だって残念に思うだろう? 落ち込みもするだろう?
だが、翌朝。
「ローレニアさん!」
私の部屋へ、急にマオンがやって来た。
「これ!」
彼はいきなりドレスを出した。
昨日破壊されたものとまったく同じ見た目のもの。
「え……え、え……? どうして……?」
「話を聞き、作らせました。新作、です、でも……同じデザインです!」
「え、もう完成したのですか……?」
「はい」
「はっや!!」
思わず大きな声を出してしまって。
「……すみません、いきなり大きな声を」
こんなに早くドレスが復活するなんて……嘘みたいだ。
あれが壊された事実は変わらない。もう一度作り直したとしてもまた別のもの。最初のドレスと同じドレスとは言えない、かもしれない。けれど、それでも、ないよりは良い。ないよりかはある方が良い。
「いえいえ。ローレニアさん……そういう、わけで、服はありますので……どうか安心して、ください」
「ありがとうございます」
「落ち込んで、いないか、心配で……」
「若干落ち込んでいましたがマオン様のお顔を見たら元気が出てきました」
「えっ。あ……」
マオンは視線を逸らして顔を真っ赤に染め上げていた。
その後、マオンから、犯人について聞いた。
破壊されたドレスに魔力の痕跡が残っていたそうで、それを頼りに調査したところ、ドレスを裂いた犯人が判明したそうだ。犯人は魔王城で働いている図書室管理者の女性だったらしい。彼女は光の矢を放つ魔法が使えるらしい。さらに、ずっと前の話ではあるのだが、前にお茶会の終わりかけに光の矢が飛んできた事件があった。あの事件の犯人も、ドレスを裂いた犯人と同じ者だったそう。
彼女は、急に現れて魔王と結婚しそうな私の存在を不愉快に思い、消そうとしていたそうだ。
そう思うと、私は運が良かったのか。もし不運だったなら、どこかで殺されていたかもしれない。気づいていなかったけれど。それにしても、ずっと前から命を狙われていたのだとしたらそれはかなり恐ろしいことだ。
「犯人は、もう……つ、捕まっています……から、心配なく」
「ありがとうございます」
その事実を知ったのはヴァッファリーナがそのことを伝えてくれてからだった。
「このようなことが起こるとは……」
ヴァッファリーナから報告を受けてドレスを置いていた物置へ向かった。するとそこにはあのドレスがあったのだけれど、それは以前の完全な形ではなくて。矢を突き刺されたような跡が複数あり、さらに、刃物で裂かれたような部分も大きかった。
「そんな……」
「ローレニア様?」
「せっかく……用意していただいたのに……」
どうしてこんなことに。
せっかく素敵なドレスだったのに。
そもそも、誰がこんなことを? 私のものと気づいてやったのか、あるいは、そのことは知らずいたずらがてらやったのか? ……いずれにせよ酷い迷惑行為であることに変わりはないけれど。けれども、どちらなのかによって、犯行の意味は変わってくるだろう。
「落ち着いてくださいローレニア様」
「……ヴァッファリーナさん」
「作り直すことは可能です、どうか、そのような顔はなさらないでください」
ヴァッファリーナは基本的にはいつも淡々としているが、発する言葉からはさりげない優しさも見える。
「……すみません」
「ひとまず、魔王様にこのことを伝えます」
「悲しまれないでしょうか……」
「いずれにせよ、この件は伝えなくてはなりません」
「……はい」
その日は憂鬱だった。
だってそうだろう? 大切なもの、お気に入りの服、それを破壊されたのだ。そんなことをされたら誰だって残念に思うだろう? 落ち込みもするだろう?
だが、翌朝。
「ローレニアさん!」
私の部屋へ、急にマオンがやって来た。
「これ!」
彼はいきなりドレスを出した。
昨日破壊されたものとまったく同じ見た目のもの。
「え……え、え……? どうして……?」
「話を聞き、作らせました。新作、です、でも……同じデザインです!」
「え、もう完成したのですか……?」
「はい」
「はっや!!」
思わず大きな声を出してしまって。
「……すみません、いきなり大きな声を」
こんなに早くドレスが復活するなんて……嘘みたいだ。
あれが壊された事実は変わらない。もう一度作り直したとしてもまた別のもの。最初のドレスと同じドレスとは言えない、かもしれない。けれど、それでも、ないよりは良い。ないよりかはある方が良い。
「いえいえ。ローレニアさん……そういう、わけで、服はありますので……どうか安心して、ください」
「ありがとうございます」
「落ち込んで、いないか、心配で……」
「若干落ち込んでいましたがマオン様のお顔を見たら元気が出てきました」
「えっ。あ……」
マオンは視線を逸らして顔を真っ赤に染め上げていた。
その後、マオンから、犯人について聞いた。
破壊されたドレスに魔力の痕跡が残っていたそうで、それを頼りに調査したところ、ドレスを裂いた犯人が判明したそうだ。犯人は魔王城で働いている図書室管理者の女性だったらしい。彼女は光の矢を放つ魔法が使えるらしい。さらに、ずっと前の話ではあるのだが、前にお茶会の終わりかけに光の矢が飛んできた事件があった。あの事件の犯人も、ドレスを裂いた犯人と同じ者だったそう。
彼女は、急に現れて魔王と結婚しそうな私の存在を不愉快に思い、消そうとしていたそうだ。
そう思うと、私は運が良かったのか。もし不運だったなら、どこかで殺されていたかもしれない。気づいていなかったけれど。それにしても、ずっと前から命を狙われていたのだとしたらそれはかなり恐ろしいことだ。
「犯人は、もう……つ、捕まっています……から、心配なく」
「ありがとうございます」
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