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0 The fool 〜愚かな2人〜

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 視界が霞むー。
降りしきる雨のせいなのか、腹に空いた風穴のせいなのか。体温が低くなって体の痙攣が止まらない。
何とか剣で支えている体重も、支えるのには力が残っていない。
何とか見据えた先では、細身の男が奇声に近い笑い声を上げていた。
 彼はもう動くことは出来まい。
私は残った力で傍により、剣を首元に添えた。

「この世の不幸は貴様の存在があってこそ起りうること。それが貴様の呪いだ。」

身体に鉛が入ってきたような感覚だった。
けれども妙に腑に落ちた。

「ーーーーー。」

私の声が聞こえたかは分からない。
この雨の音でかき消されたことを願う。

動かした右腕に鈍く硬くてあたたかい感覚が伝ってくる。

視界は暗転し、土と錆びた鉄のような匂いだけが鼻腔をくすぐる。

今はまだ眠っていたいーーー。
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