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「先生のことが、好きです」
そう伝えたのは、色気とは無縁の面談室だった。
シチュエーションなど考える余裕もなく、密室に貴正と二人きりというだけで、鼻息荒く蓮の若い理性は弾け飛んだ。
気づけば机に貴正を向かいあわせに押し倒していた。心臓はハードロックのドラムのように速く強く、全身に重低音を響かせ、息を吸うのも苦しかった。
「先生のことが……」
「ストップ。わかったから、どけ。手が痛い」
言われて、貴正の手首を強く握りしめていた手をほどいた。
自由になった貴正は、蓮から距離をとるように、机の向こう側の椅子に腰をかけた。
「佐藤、自分の言っていることが解ってる? って、解っているならそんなこと言わないか……」
どうしようかな、と呟く貴正を前に、蓮は処刑を待つ罪人の面持ちで立っていた。
だから、「そんなに好きなら、俺と付き合ってみる?」なんて言葉がさらりと返ってくるとは思わなかったし、自分が考えていたものとは程遠く、貴正の物慣れた態度に唖然としつつも、「はい」と返事をしたのだった。
かくして、ムードもへったくれもない学内の一室で、蓮は貴正という恋人を得ることに成功した。
『恋人』。
その言葉に天にも上る甘い心地になると同時に、自分の小ささに酷く落胆もする。二人が教師と生徒という間柄が、それに輪をかけているようにも思う。
貴正はいつも蓮に気遣い、未成年を保護する立場を崩さない。
手さえ積極的につなごうとしない貴正に向かって、力いっぱい抗議したくなる。今どき、中学生だって恋人とキスはしますよ! 高校生ならもっとすごいことまで済んでいる輩は大勢いますよ! と。
貴正に性欲がない……のではない、と、知っているから、なおのこと辛い。
貴正の恋愛遍歴について尋ねれば、何一つ隠すことなく教えてくれた。
当然ながら、たかだか16年しか生きていない蓮とは違って、どれも華々しく情熱的なものだった。
そんな貴正が自分とは手さえ繋がない。
他の男たちは、あの馨しい首筋に舌を這わせ、あの滑らかそうな肌に、いくつもの情熱の跡を遺したというのに。
自分とは、うっかり指先が触れただけでも、大罪を犯したような顔で「ごめん」と、謝罪するのだ。
自分だけが、それを知らない。
こんな、意味わからないことが許される━━むしろ、自分がそうして大人から守られる立場なのだと、つくづく思い知らされて、情けなくなる。
思い切って大きなデパートに出向いたが、何を贈れば喜ばれるのか、皆目見当もつかなかった。
時計。
バッグ。
フレグランス。
どれも好みがあるし、価格はピンキリだ。下手な物を贈っても、貴正が喜んでくれるとは思えない。
表面上では、何を贈っても喜ぶだろうが……。
結局、あちこちぶらついただけで、蓮のプレゼント探しは終わってしまった。
そう伝えたのは、色気とは無縁の面談室だった。
シチュエーションなど考える余裕もなく、密室に貴正と二人きりというだけで、鼻息荒く蓮の若い理性は弾け飛んだ。
気づけば机に貴正を向かいあわせに押し倒していた。心臓はハードロックのドラムのように速く強く、全身に重低音を響かせ、息を吸うのも苦しかった。
「先生のことが……」
「ストップ。わかったから、どけ。手が痛い」
言われて、貴正の手首を強く握りしめていた手をほどいた。
自由になった貴正は、蓮から距離をとるように、机の向こう側の椅子に腰をかけた。
「佐藤、自分の言っていることが解ってる? って、解っているならそんなこと言わないか……」
どうしようかな、と呟く貴正を前に、蓮は処刑を待つ罪人の面持ちで立っていた。
だから、「そんなに好きなら、俺と付き合ってみる?」なんて言葉がさらりと返ってくるとは思わなかったし、自分が考えていたものとは程遠く、貴正の物慣れた態度に唖然としつつも、「はい」と返事をしたのだった。
かくして、ムードもへったくれもない学内の一室で、蓮は貴正という恋人を得ることに成功した。
『恋人』。
その言葉に天にも上る甘い心地になると同時に、自分の小ささに酷く落胆もする。二人が教師と生徒という間柄が、それに輪をかけているようにも思う。
貴正はいつも蓮に気遣い、未成年を保護する立場を崩さない。
手さえ積極的につなごうとしない貴正に向かって、力いっぱい抗議したくなる。今どき、中学生だって恋人とキスはしますよ! 高校生ならもっとすごいことまで済んでいる輩は大勢いますよ! と。
貴正に性欲がない……のではない、と、知っているから、なおのこと辛い。
貴正の恋愛遍歴について尋ねれば、何一つ隠すことなく教えてくれた。
当然ながら、たかだか16年しか生きていない蓮とは違って、どれも華々しく情熱的なものだった。
そんな貴正が自分とは手さえ繋がない。
他の男たちは、あの馨しい首筋に舌を這わせ、あの滑らかそうな肌に、いくつもの情熱の跡を遺したというのに。
自分とは、うっかり指先が触れただけでも、大罪を犯したような顔で「ごめん」と、謝罪するのだ。
自分だけが、それを知らない。
こんな、意味わからないことが許される━━むしろ、自分がそうして大人から守られる立場なのだと、つくづく思い知らされて、情けなくなる。
思い切って大きなデパートに出向いたが、何を贈れば喜ばれるのか、皆目見当もつかなかった。
時計。
バッグ。
フレグランス。
どれも好みがあるし、価格はピンキリだ。下手な物を贈っても、貴正が喜んでくれるとは思えない。
表面上では、何を贈っても喜ぶだろうが……。
結局、あちこちぶらついただけで、蓮のプレゼント探しは終わってしまった。
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