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fateful encounter
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サーシャ様と出会ったのは一年程前でした。
僕は、とある田舎町で毎日フラフラとしながら暮らしていました。
「ああ、何か面白いことないかな。」
この日は小春日和で爽やかな風が吹いていました。スカイブルーの空には純白の美味しそうな雲がモクモクと浮かんでいます。
僕はやることもなく、暇だったので木陰で本でも読むことにしました。
日射しは柔らかでしたが、日に焼けるのが嫌でしたからね。
数十分経った頃でしょうか。僕の前を一人の女性が歩いていきました。本に夢中になり始めた時でしたので、最初気にもとめませんでした。
だけど、そこは滅多に人通りがない場所でしたので、僕は自然と彼女の方へ顔を上げました。
すると、どうでしょう。僕の目の前を過ぎてゆく黒髪の美しい女性は全身が血だらけではありませんか。
「ち、ちょっと。どうしたんですか。大丈夫ですか?」
すると、彼女は立ち止まりました。そして自分の全身を下から上へ眺めてから言いました。
「ああこれか。これは返り血だから平気だ。」
そう言って彼女は微笑みました。血まみれの彼女が天使の様な笑みを浮かべていたのです。
僕は、彼女に見とれてしまいました。そして胸を矢で射られたような感覚を味わいました。
もう、これは一種の恋のようなものだったのかもしれません。
「あ、あの。僕を従者として雇ってください。」
咄嗟のことでした。自分でも驚きでしたよ。
「あなた名前は?」
「僕はピート。二十五歳、独身です。料理も得意ですし手先も器用ですので、お役にたてるかと思います。どうか、お供を。」
この時は必死でしたよ。なにせ運命の出会いでしたから。
「私はサーシャ。十七歳、独身だ。最強の称号を求めて旅をしている。ついてきてもいいが、厳しいぞ私は。」
こうして僕は、サーシャ様と共に旅を始めたのです。
「いやあ懐かしいな。」
「何が?」
「サーシャ様との運命の出会いを思い出していたんですよ。」
「気持ち悪い奴だな。それより歩き疲れた。ピート、馬。」
僕のことを何でも出せる猫型ロボットとでも思っているのでしょうか、この方は。この辺鄙な土地で馬なんて簡単に手に入れることなんて、どう考えても無理です。野生の馬でも捕まえてくるしかありません。
「ピート。やっぱり馬だと、お尻が痛くなるから馬車にしてくれ。乗り心地の良いやつな。私は、ここで少し寝るから。よろしく。」
僕は軽く舌打ちしてから、辺りを散策してみることにしました。
まあ、ご主人様の命令は絶対ですから仕方ありませんが……さて、どうしましょう。
僕たちはレト大陸の北西部にあるソルディウスという国へ向かっている途中でした。キリエスから独立した国です。この二つの大国は敵対しているのですが、最近は目立った争いはないようで安定しているようです。
今いる、ここはちょうどソルディウスの国境あたりになります。何もない場所です。
そんな何もない場所を、しばらく歩いていくと街が見えてきました。
「なんだ、こんな所に大きな街があるじゃないか。サーシャ様も、ここまで我慢して歩いていれば良かったのに。まったく、あの人は辛抱が足らないというか気まぐれというか――。」
そんな不満だらけだった僕の視界に、ある張り紙が飛び込んできました。それは剣術大会の告知がされているものでした。
なになに――(優勝者には五百萬エーンと副賞として産地特製の高級肉一年ブーン)と書き記してある。
最後の方は意味不明ですが、これは好機です。大金を獲得できれば高級馬車だって、いや運転手付きだって夢じゃありません。
しかもサーシャ様の修行にも、もってこいではありませんか。
「おお!優勝賞金が豪勢だな。俺も出場しようかな。」
「でも噂では黄金の剣士ダマンが出るらしいぞ。」
「ええ!じゃあ優勝なんか無理じゃんか。」
街の人々の会話が、あちらこちらから聞こえてきます。どうやら盛大な大会のようです。
しかし、ダマンといえばソルディウス屈指の剣豪。確か僕のリストによるとAランク。
ああ、なぜよりによって。しかし、せっかくのチャンスです。なんとかサーシャ様には出場してもらわねばなりません。
僕は街中に貼ってある告知紙を一枚剥ぎ取り、それを手に急ぎサーシャ様の元へ走りました。
「サーシャ様、サーシャ様!」
「おお早かったな……で、馬車は?」
僕は焦りました。ですが無いものは無い。ひとまず大会の告知紙を手渡します。
「なんだこれは……肉!!」
きた!食いつきました。サーシャ様の好物、お肉の効果は絶大です。
「サーシャ様。これは優勝しかありません。」
僕は必死です。彼女には是が非でも出場して頂くしかありません。
「出る。これに出て優勝し――肉祭りだ!ゆくぞピート。」
「ああ、そうそう。この大会にソルディウスの黄金の剣士ダマンが出るらしいです。彼は僕のリストによるとAランクですから苦戦は必至ですよ。」
すると珍しくサーシャ様の顔色が変わりました。
「あれ?サーシャ様どうされたんですか、びびりました?」
「ダマン……奴は父の敵だ。」
えーっ!なんというドラマチックな展開でしょうか。僕は、このようなシチュエーション嫌いではありませんよ。
こうしてサーシャ様は大会にエントリーされました。
思わぬ強敵が参戦するようですが、何やら因縁深い相手のようで、それはそれで楽しみで仕方ありません。
優勝は、恐らく難しいでしょうが、それなりに見応えのある大会になるようなので、僕は満足しているのでありました。
僕は、とある田舎町で毎日フラフラとしながら暮らしていました。
「ああ、何か面白いことないかな。」
この日は小春日和で爽やかな風が吹いていました。スカイブルーの空には純白の美味しそうな雲がモクモクと浮かんでいます。
僕はやることもなく、暇だったので木陰で本でも読むことにしました。
日射しは柔らかでしたが、日に焼けるのが嫌でしたからね。
数十分経った頃でしょうか。僕の前を一人の女性が歩いていきました。本に夢中になり始めた時でしたので、最初気にもとめませんでした。
だけど、そこは滅多に人通りがない場所でしたので、僕は自然と彼女の方へ顔を上げました。
すると、どうでしょう。僕の目の前を過ぎてゆく黒髪の美しい女性は全身が血だらけではありませんか。
「ち、ちょっと。どうしたんですか。大丈夫ですか?」
すると、彼女は立ち止まりました。そして自分の全身を下から上へ眺めてから言いました。
「ああこれか。これは返り血だから平気だ。」
そう言って彼女は微笑みました。血まみれの彼女が天使の様な笑みを浮かべていたのです。
僕は、彼女に見とれてしまいました。そして胸を矢で射られたような感覚を味わいました。
もう、これは一種の恋のようなものだったのかもしれません。
「あ、あの。僕を従者として雇ってください。」
咄嗟のことでした。自分でも驚きでしたよ。
「あなた名前は?」
「僕はピート。二十五歳、独身です。料理も得意ですし手先も器用ですので、お役にたてるかと思います。どうか、お供を。」
この時は必死でしたよ。なにせ運命の出会いでしたから。
「私はサーシャ。十七歳、独身だ。最強の称号を求めて旅をしている。ついてきてもいいが、厳しいぞ私は。」
こうして僕は、サーシャ様と共に旅を始めたのです。
「いやあ懐かしいな。」
「何が?」
「サーシャ様との運命の出会いを思い出していたんですよ。」
「気持ち悪い奴だな。それより歩き疲れた。ピート、馬。」
僕のことを何でも出せる猫型ロボットとでも思っているのでしょうか、この方は。この辺鄙な土地で馬なんて簡単に手に入れることなんて、どう考えても無理です。野生の馬でも捕まえてくるしかありません。
「ピート。やっぱり馬だと、お尻が痛くなるから馬車にしてくれ。乗り心地の良いやつな。私は、ここで少し寝るから。よろしく。」
僕は軽く舌打ちしてから、辺りを散策してみることにしました。
まあ、ご主人様の命令は絶対ですから仕方ありませんが……さて、どうしましょう。
僕たちはレト大陸の北西部にあるソルディウスという国へ向かっている途中でした。キリエスから独立した国です。この二つの大国は敵対しているのですが、最近は目立った争いはないようで安定しているようです。
今いる、ここはちょうどソルディウスの国境あたりになります。何もない場所です。
そんな何もない場所を、しばらく歩いていくと街が見えてきました。
「なんだ、こんな所に大きな街があるじゃないか。サーシャ様も、ここまで我慢して歩いていれば良かったのに。まったく、あの人は辛抱が足らないというか気まぐれというか――。」
そんな不満だらけだった僕の視界に、ある張り紙が飛び込んできました。それは剣術大会の告知がされているものでした。
なになに――(優勝者には五百萬エーンと副賞として産地特製の高級肉一年ブーン)と書き記してある。
最後の方は意味不明ですが、これは好機です。大金を獲得できれば高級馬車だって、いや運転手付きだって夢じゃありません。
しかもサーシャ様の修行にも、もってこいではありませんか。
「おお!優勝賞金が豪勢だな。俺も出場しようかな。」
「でも噂では黄金の剣士ダマンが出るらしいぞ。」
「ええ!じゃあ優勝なんか無理じゃんか。」
街の人々の会話が、あちらこちらから聞こえてきます。どうやら盛大な大会のようです。
しかし、ダマンといえばソルディウス屈指の剣豪。確か僕のリストによるとAランク。
ああ、なぜよりによって。しかし、せっかくのチャンスです。なんとかサーシャ様には出場してもらわねばなりません。
僕は街中に貼ってある告知紙を一枚剥ぎ取り、それを手に急ぎサーシャ様の元へ走りました。
「サーシャ様、サーシャ様!」
「おお早かったな……で、馬車は?」
僕は焦りました。ですが無いものは無い。ひとまず大会の告知紙を手渡します。
「なんだこれは……肉!!」
きた!食いつきました。サーシャ様の好物、お肉の効果は絶大です。
「サーシャ様。これは優勝しかありません。」
僕は必死です。彼女には是が非でも出場して頂くしかありません。
「出る。これに出て優勝し――肉祭りだ!ゆくぞピート。」
「ああ、そうそう。この大会にソルディウスの黄金の剣士ダマンが出るらしいです。彼は僕のリストによるとAランクですから苦戦は必至ですよ。」
すると珍しくサーシャ様の顔色が変わりました。
「あれ?サーシャ様どうされたんですか、びびりました?」
「ダマン……奴は父の敵だ。」
えーっ!なんというドラマチックな展開でしょうか。僕は、このようなシチュエーション嫌いではありませんよ。
こうしてサーシャ様は大会にエントリーされました。
思わぬ強敵が参戦するようですが、何やら因縁深い相手のようで、それはそれで楽しみで仕方ありません。
優勝は、恐らく難しいでしょうが、それなりに見応えのある大会になるようなので、僕は満足しているのでありました。
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