最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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オタム剣技大会~part3~

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サーシャ様は二回戦、三回戦と順調に勝ち上がりました。次は決勝。勝てれば決勝トーナメント進出です。

この日の予定は予選トーナメント決勝戦まで。決勝トーナメントは翌日からスタートし、最後の決勝は翌々日となります。


「サーシャ様。次の相手は女性みたいですね。」


「リオンという相手だな。私は見ていないが、どんな奴だった?」


僕は焦りました。実をいうとサーシャ様のブロックの試合を全く見ていなかったのです。何をしていたかって?


「実は他のブロックに、とてもセクシーな女性がおりまして、その子をストーカーのように、ずっと眺めていました。」


そんなことは絶対に言えません。僕は適当に、「なかなか手強い相手ですよ。」と、当たり障りのないことを言って誤魔化しました。



「それではBブロック決勝を始めます。サーシャ様、リオン様は、こちらへ。」


サーシャ様の登場で、にわかに観客たちが盛り上がっているでは、ありませんか。どうして?


「サーシャちゃん。可愛い!」

「こっち向いてくれ。」

「愛してる!」


なんということでしょう。いつの間にかサーシャ様にファンがついているではないですか。僕は激しく嫉妬しました。こんなむさ苦しい野郎共にサーシャ様は渡しません。呪ってやるくらい睨み付けてやりました。


「えーっ……リオン様?リオン様は、おられませんか?」


おやおや?どうやら対戦相手が、出てこない様子です。逃げたのでしょうか?


「す、すいません。リオンは、ここに。」


僕は彼女の、その奇抜な姿に目を丸くさせました。リオンは頭部以外の全身を黒いタイツみたいなもので包んでいるではありませんか。まあ、全身タイツですね。ピタリと身体に張りついています……しかし、なんというナイスバディーでしょう。隠しきれない巨乳。それでいて、括れた腰つき。足も細く長い。極めつけは、その童顔。可愛らしいこと、この上なしです。


「うぉぉお!リオンちゃん!」

「可愛いい!可愛い過ぎる!」

「……天使だ。」


先ほどまでサーシャ様に声援を投げ掛けていた屑共は、今度はリオンに熱狂し始めました。

ちなみに僕も、どさくさに紛れてリオンさんに愛のエールをおくりましたけどね。


「ピート。覚えておけよ。」


僕は恐る恐るサーシャ様を見ました――鬼です。鬼が出ました!

どうやら僕の声援がサーシャ様の耳に入ったようです。なんという地獄耳でしょうか。

だが心配はありません。後でサーシャ様に、こう言ってやるつもりです。


「あの声援はサーシャ様の怒りを買うために、わざと言ったのです。その怒りのパワーを試合で発揮できるようにと。心配いりませんよ。僕はサーシャ様だけです。ただ、ちょっと嫉妬に狂ったサーシャ様を見てみたかっただけですから。」


……確実にあの世行きでしょうね。


「頑張れ、サーシャ様!」


とりあえず応援だけはしておきましょう。


さて、あのリオンという子は、どんな剣術を使うのでしょうか。どうやら剣自体は至ってシンプルの模様です。


「なあ、あれって『オライオン』のリオンじゃないのか?」

「まじか!?あんな可愛らしい子が、信じられねえ。」


観客たちが何やら噂話をしています。オライオンとは何でしょう。気になった僕は彼らに聞いてみることにしました。


「エクスキューズミー。先ほど話されていた『オライオン』って何なのですか?」


「ああ、あんたよそ者か。オライオンっていうのは、剣各集団だよ。まだ新しい組織だし活動範囲も広くないが、この辺じゃ結構有名なんだぜ。」


剣各集団……ギルドみたいな感じでしょうか?はっきりとは分かりませんでしたが、どうやら只者ではないようですね。まあ、予選とはいえ、決勝まで残っているのですから当然といえば当然なんですがね。


「それでは――始め!」


開始の合図とともに先に仕掛けたのはリオンでした。右からと思わせての上段、下段から切り上げるように剣を振り上げてからの急旋回。リオンは、放つ一撃全てにフェイントを入れて撹乱させようとしています。しかも、どれも並みの早さではありません。凄まじいスピードです。


「早い!だが見切れる!」


しかし、恐るべきはサーシャ様かもしれません。リオンの超速攻撃を寸前で捌いていきます。


「私の攻撃についてくるなんて、凄い。」


リオンは、どこか嬉しそうな表情だった。そして今度は更に速度を上げた。彼女の変幻自在の剣はサーシャ様に襲いかかる。だが、サーシャ様は、それさえも見切りました。

スピードではサーシャ様の勝ちです。やはりリオンの、あの胸の大きさが仇となっているのでしょう。それに比べると……サーシャ様はラッキーです。


「――ハッ!」


何やら殺気のこもったサーシャ様の視線を感じ、僕は変な汗が吹き出てきました。


「当たらない。やっぱり小細工では駄目ね。」


リオンは今までの構えとは、うってかわりシンプルな突きの構えをとりました。


「私の必殺の一撃です。どうか避けて致命傷は避けてください。じゃないと死にますよ。」


何と!そんな可愛いい顔をして、クールな一言。僕は胸を矢で射ぬかれた衝撃を受けました――しかし!まだサーシャ様には及びませんよ。


「面白い。私の心臓をよく狙え。一発で仕留めないと地獄を見ることになるよ。」


きた!さすがサーシャ様。彼女に生きているのも辛いくらいの地獄を体験させてあげて下さいまし!


「貫け!私の突き!」


リオンは光速の突きを放ちました。それは電光石火の如しです。空気を貫くような刃がサーシャ様の心臓めがけて飛んでいきました。


「蛇踊り《スネークダンス》!」


その突きに合わせてサーシャ様も突きを出しました。しかし!サーシャ様の刀身が妙な動きを見せます。リオンの刀身に、まるで蛇の様に巻きつきながら迫っているではありませんか。


「勝負――ありだな。」


リオンの剣先はサーシャ様の脇腹辺りを掠り外れました。一方、リオンの刃に、まるで蛇の様にグルグル回りながら放たれたサーシャ様の剣先はリオンの額まで僅か数センチの所で止まっていました。


「サーシャ様、とどめを!」


僕は心の中で祈るように願いました。


「私の突きを避けてなお、こんな攻撃ができるなんて……完敗です。」


「勝者、サーシャ様!」


いつの間にか増えていた観客たちは多いに盛り上がりをみせた。

しかし、その観客の一人から、こんな声が上がった。


「今のは魔法剣じゃないのか?」と。

魔法剣?サーシャ様がそんな器用な真似をできるはずがないでは、ないですか。しかし、確かに多少の魔力を感じます。やはりあのスパロウティアズの魔力でしょうか?


観客の物言いに場は騒然となった。

この大会のルールでは魔法は全面禁止です。それは例え魔法剣でもです。ちなみに魔法剣とは魔法を剣にかけ、その攻撃力をアップしたり付加攻撃ができるようにしたり、防御力をアップしたりと様々なことができます。相手に直接攻撃を加える魔法や自分自身に魔法をかけ身体能力を向上させる魔法と違い、センスとテクニックが要求される高度な魔法です。


「えー、皆さん。只今の試合でサーシャ様が放った攻撃が魔法剣ではないのか?という疑問にお答え致します。」


どうやら大会の運営の人間が出てきたようです。さすがサーシャ様。トラブルメーカーですね。


「審判団からは、先ほどの攻撃が魔法剣かどうかを判別するのは難しいという判断を致しました。そこで今回は本人にその真偽を問いたいと思います。どうですかなサーシャ様。」


絶対に認めてはいけませんよ、サーシャ様。僕は強く念じました。


「私は魔法剣など使えない。つまり使っていないということだ。」


「――なるほど。ならば我らは納得いたしましょう。明らかに魔法剣と分かれば失格にいたしますが、あの攻撃は剣技ということですね。それでは対戦相手のリオン様にも、お伺いしましょう。リオン様、何か反論等あればどうぞ。」


「いえ、私は異論ありません。サーシャちゃんが、そういうなら間違いないのでしょう。何にせよ私は全てにおいて劣っていたのですから、負けて当然だと感じています。」


全てにおいて劣っている?勝っていますよ――胸は。胸を張って下さい、リオンさん。


「ではBブロックの勝者はサーシャ様に決定いたしました!」


高らかに宣言されました。サーシャ様は優勝です……まあ、まだ予選ですけどね。

だが今は、おめでとうと申し上げましょう。

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