最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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オタム剣技大会~part4~

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予選が終わった後、僕らは近くの格安宿屋へ宿泊することにしましました。

大会中ということもあり各地から人が集まってきていますので当然、泊まる所を探すのも一苦労でした。もちろん僕が町中を駆けずり回って、ようやく見つけだした宿です。


「ピート、なんかここ汚なくないか?」


「サーシャ様。仕方ないですよ、僕らにはお金がないんだから。」


贅沢を言ってもらっては困ります。僕たちの旅は貧乏旅なのですから。だいたい泊まる所があるだけでも感謝して欲しいものです。大会参加者や観客の中には泊まる所もなく野宿している者だって数多くいるのですから。

僕だって正直いえば高級な宿に泊まりたいんですよ。しかし、僕のご主人は何せ、お金に無頓着です。資金のやりくりは全て僕任せ。従者を始めて一度だってお給料を頂いたことがないのですよ。


「なあピート。今夜の食事は高級な肉にしようよ。優勝したんだしさ。お祝いの宴だ。」


まったく能天気なのもいいところです。


「優勝って言っても予選でしょう。本選で優勝してから言ってください。それに食事はさっき済ませたでしょう。明日に備えて早く休んでくださいサーシャ様。」


「なっ!?あれが晩飯?冗談でしょ。ピート、冗談は顔だけにしておけよ。」


「無いものは無いんですよ。じゃあ、お先におやすみなさい。」



――翌朝。

僕らは早起きして、柔らかい日差しの中を気持ちよく歩いて会場を目指しました。


「気持ちの良い朝だこと。ねえ、ピート。」


今朝は不思議とサーシャ様のご機嫌もよろしい様で、僕としましても爽快な朝を迎えておりました。

ただ先ほどから気がかりな事があります。何故か道行く人々が僕を見てクスクスと笑っている様な気がしてならないのです。

ふとサーシャ様を見ると、彼女も僕を見て笑い転げているではありませんか。


「あの、サーシャ様?」


「こ、こっちを見るな!プッ!――顔。」


顔?はて、何のことでしょう?

僕は建物の窓に自分の顔を映し覗きこみました。


「なんじゃこりゃあ!」


僕の顔面には無数の落書きが施されているでは、ありませんか!

しかも、とてもここでは言えない様な卑猥な落書きも……あの、クソガキ!……失敬。

こんな子供じみた悪戯にいちいち構ってなどいたら身が持ちません。きっと昨晩の食事の腹いせでしょう。

子供っぽい主人を持つ従者の宿命でしょうね。我慢我慢――いつかやり返す。



さて、僕たちが会場に到着すると、既に多くの人が集まっていました。余興に、太鼓や鐘が打ち鳴らされ、まさにお祭り状態です。

テンションが上がります。

しばらく余興を楽しんでいると、「対戦表を貼り出しました。出場者の皆さんは速やかに、ご確認ください。」という発表がありました。


僕はサーシャ様の代わりに対戦表を見ました。


「相手はオズモット、という男のようですよ。」


「で、どんな奴?」


どんな奴?と、聞かれても困ります。僕が知るはずありません。女性ならチェックしますが、男のことなど見ているわけがない。

しかし、それでは通らないのが従者の宿命でしょうね。とりあえず何か適当なことを言っておけばよいでしょう。


「サーシャ様。オズモットは……男です。」


バキッ!


あっ、ちなみに今のは頭を殴られた音です。まあ、いつものパワハラなので気にしませんが。とりあえず痛いです。



「それでは決勝トーナメント一回戦を始めたいと思います。ご自分のブロックの指定の場所へ移動してください。」


この決勝トーナメントは十三人で行われます。第一回戦は計六試合あります。残った一人は運営委員の決めた選手です。今回は、圧倒的な力を誇る黄金の剣士ダマン、ということになったそうです。

彼の出番は準決勝からだそうです。なんとも羨ましい限りです。

しかし、彼の強さは本物です。ですから、誰一人として文句は言いません。というより、もはやこの大会はダマンを倒すのが目的になっているといっても過言ではない気がします。


「私は何ブロックだっけ?」


「Dですよ。発音が似ているからって、Bと間違えないでくださいね。」


ようやくサーシャ様を送り出した僕は一息つけます。まったくどこまでも世話のやける、ご主人様です。


「ではDブロック一回戦を開始致します。オズモット様、サーシャ様。前へ。」


「おいおい、オズモットって、オライオンのオズモットじゃないか。」


「ほ、本当だ。切り裂きオズモットだ。」


「あの女の子かわいそうに、ズタズタに切り裂かれちまうぞ。」


オライオン――またですか?ということは手強い相手とみて間違いないでしょう。予選で戦ったリオンという女の子も相当な強さでしたからね。

しかし……切り裂きオズモットとは興味をそそられます。彼の持つ短剣は奇妙な形をしていた。刀身が波打っているようです。あの禍々しい短剣はクリスダガーと呼ばれている代物。

懐に入られると厄介です。

だけど……サーシャ様がじわじわと切りつけられる姿も見てみたい。僕の中で、サーシャ様の勝利と、なぶられるサーシャ様を見たい願望とが激しく葛藤している状況に、とても苦しみます。


「こりゃあ極上の姉ちゃんだ。俺の剣でズタズタに切り裂いてやるぜ。ヒヒヒッ。」


「それでは、始め!」


オズモットは軽やかにステップを踏むようにサーシャ様との距離を一定に保っています。あれよりもう半歩ほど近寄ればサーシャ様の間合いです。どうやら見切られているようですね。

一瞬強い風が会場を吹き抜けました。その隙をオズモットは見逃しません。

間合いを詰めて素早くサーシャ様を切りつけました。


「いい感じだな、姉ちゃん。たまんねえ!」


サーシャ様の太もも辺りを切りつけてオズモットは興奮しています。黒のパンツからサーシャ様の白い肌と赤い血が見てとれました。

なんだか僕まで興奮してきましたよ。いけ!オズモット!

しかし、サーシャ様は何故か笑っています。

確かにスピードではサーシャ様も負けていません。だが、相手は短剣です。懐に入れてしまえば完全に相手の間合いです。

何か策でもあるのでしょうか?あるようには到底思えませんが、ここは見守っておきましょう。


「次は胸辺りをいっちおうかな。ヒャッホ!」


オズモットは、いとも簡単にサーシャ様の間合いを、かい潜り至近距離まで詰め寄りました。


「楽勝だぜ!――な、なに!?」


ドゴッ!


おお!これは面白い。なんとサーシャ様は己の懐に飛び込んできたオズモットの頭を、剣の柄で思いきり上から潰すように殴ったではありませんか。あの間合いで剣を振っても振り幅が小さい分、相手を斬り倒すことは不可能。よくて相討ちです。しかし低姿勢で突っ込んでくるオズモットを上から剣の柄で殴るのは、そう難しいことではないでしょう。


「楽勝?それはこっちのセリフ。あんたよりリオンの方が強かったよ。」


さすがはサーシャ様。僕の期待通りの展開になりましたね。オズモットを応援していたくせに、ですって?……そうでしたっけ?

まあ何にせよ勝利です。おめでとうサーシャ様。


「それまで。勝利者はサーシャ様!」


会場からは割れんばかりの拍手喝采です。さすがに予選とは観客の注目度が違います。

この勢いで優勝ですよ、サーシャ様。

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