最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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大魔道士との対面

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僕たち一向は集落の外れにポツンと佇む簡素な造りの家……というより小屋に近い建物へとやってまいりました。

こんな所に伝説の魔法使いが住んでいるとは、正直驚きました。

小さな家ですから、おそらく一人で暮らしているのでしょう。

以前書物で見た彼の肖像画からは想像できません。

その肖像画には恰幅がよく、誰からも愛されるような満面の笑みを浮かべている幸せそうな男が描かれていました。

そんな男が晩年を、こんな寂れた場所で一人、余生をおくっているのかと想像すると何だか哀れでなりません。


「さあ、行くわよ。」


グラノールさんはノックもせずに扉を開きました。

木製の古びたドアがギギィっと今にも壊れてしまいそうな音を立てながら開きました。


部屋は薄暗く何だか埃っぽい空気に包まれています。


「誰だ?」


部屋の片隅のほうから低い声が聞こえてきました。


「私よ、パラちゃん。」


「おお、グラちゃんか。こりゃ珍しい――で後ろの方々は?」


「この二人は私の弟子よ。んでこっちがピートちゃん。」


グラノールさんは僕らを紹介しつつ部屋のカーテンを全開にし、窓を開け放ちました。


「ほうほう、君が黒い刃か。思ったより若いな。」


僕のことを知っていたことには確かに驚きましたけど、それよりもパラドール・ジグマの姿に僕は驚きました。

前に見た肖像画とは明らかに別人です。まず、丸々としていた顔ではありません。顎はシャープに尖っているし、目は眼光鋭し。銀縁のスタイリッシュな眼鏡が似合う知的なおじさまという感じです。


「よく、ご存知で。ですがもう僕は引退していますから。」


「ああ、知っているよ。もったいないな。まだまだ強くなると思っていたが。」


しかし、驚かされることばかりです。何せ、このご老体はゆうに九十歳は越えているはず、下手すれば百を超えていてもおかしくありません。

しかし、目の前にいるのはどう見ても五十代くらいの男です。

グラノールさんといい、パラドール・ジグマといい化け物ばかりですね。


「パラちゃんは名だたる戦士に興味があるのよ。なんでも本当は戦士になりたかったらしくて、今でもその夢を追っているのよ。本当ガキよね。」


なんと!?歴史上最強の魔法使いが、実は戦士になりたかったと?これは実にユニークな人です。僕もちょっとだけ彼に興味が湧きました。


「うるさいのう、別にいいじゃろ、趣味じゃ、趣味。ところで今日は何の用じゃ?」


グラノールさんは思い出した様に自分の後ろに隠れていたサーシャ様をパラドール・ジグマの前に連れ出しました。


「ちょっと、この子を見てほしいのよ。」


「――はっ!な、なんと!」


パラドール・ジグマも驚きを隠せないようです。それはサーシャ様の瞳でしょう。グラノールさんが、パープルアイズと呼んでいた、その瞳を見た大魔導師も、さすがに目を見開いてサーシャ様を見つめています。


「う、美しい。なんという美少女じゃ!たまらん!」


「あ、あの?」


「結婚してください。」


「断る。」


これは一体何の茶番でしょうか?


「師匠!なんですかこのおっさん、急にキモいんですけど。」


さすがのサーシャ様も半泣きでグラノールさんにしがみつきました。


「はぁー、やっぱりこうなっちゃったわね。こいつは無類の女好きなのよ。」


先ほどは強い戦士が好みなのかと、気味が悪いと思っていましたが、実に健全な男子だったのですね。よかったよかった。


「す、すまん。もう何年ぶりか、可愛い女を目の前にしたのは。さすがに結婚は突然すぎたのう。じゃあ、まずはお付き合いしてからということでどうじゃ、手をうたんか?のう。」


「無理。」


「そ、そうか……やはり年の差か……で、では友達からということで――。」


「しつこいわね。あんた歳を考えなさいよ!サーシャはまだ十代よ、あんたは幾つだい!この老いぼれ!」


グラノールさんの、きつめの口調に流石のパラドール・ジグマも、しゅんとなってしまいました。ちょっとかわいそうな気もします。

パラドール・ジグマは、恐る恐るサーシャ様を見つめました。


「えーっと……生理的に無理。」


サーシャ様の、その言葉がとどめだったようで、パラドール・ジグマはがっくりと肩を落としてしまいました。

どうやら諦めがついたようです。


「そんな事より、ちょっと相談があるんだけど。」


グラノールさんは、サーシャ様の魔力の不安定さの原因を探るべく、事の詳細を説明しました。


「なるほどのう。まぁグラちゃんの頼みなら無下には断れんのう。茶でも飲みながら少し話を聞かせてもらうことにしよう。よいなサーシャ。」


先ほどまでの老人とは思えないほど、パラドール・ジグマを包む雰囲気が、がらりと変化しました。

どうやらこれが大魔導師が持つ本来のオーラなのでしょう。

小さな部屋の空気が、まるでひび割れていくようなそんな特別な圧力を感じました。


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