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サーシャ様の謎
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サーシャ様が目覚めたのは、倒れてから約半日が過ぎた真夜中でした。
僕たちは、テーブルを囲んだままウトウトと浅い眠りについていました。
ベッドから、むくりと起き上がったサーシャ様に気がついたのは僕でした。
「サーシャ様!?」
僕は少し恐る恐るサーシャ様に声をかけました。また、いきなり暴走し始めるのではないかと不安があったからです。
「――ピート……私はいったいどうしたんだ?」
どうやら大丈夫そうで、なによりですね。
僕は皆を起こしてお茶の準備を始めました。
その間、パラドール・ジグマがサーシャ様に事の次第を説明していました。
「そ、そうですか。私にそんなことが……全く覚えていない。だけど明らかに私の内に渦巻く魔力が以前とは桁違いになっているのは感じる。」
「それは、お前さんの持つ本来の力の片鱗に過ぎない。この先、もっと魔力が上がることじゃろう。」
おお!ということはサーシャ様の魔法剣のレベルも格段に上がるということではありませんか。喜ばしいことです。
しかし、先程からグラノールさんの顔色が優れないのは何故でしょうか。
「パラちゃん。」
グラノールさんは訴えるようにパラドール・ジグマを見ました。
「分かっとる。これから話すつもりじゃ。」
そう言ってパラドール・ジグマはお茶で喉を潤しました。
「よいか、サーシャよ。お前さんには酷なことになるかもしれんが、聞くのだ。」
「なに?」
サーシャ様は場の空気に反するように、気の抜けた返事をしました。
ですが、僕やローラスには何となく深刻な話が、これからなされるということを頭のどこかで察知していました。まあ、あんなサーシャ様を見た我々だからこそなのでしょうが。
「はっきりと言うとじゃなサーシャ、お前さんには魔族の血が流れておる。」
なんですと!?
これには僕も驚きを隠せません。それはつまり早い話しサーシャ様は魔物ということ。
これには僕も興奮を抑えきれません。
しかし当の本人は、「へーっ。」と、呆れた反応しか示しません。鈍感なのでしょうか。これは、天地がひっくり返るほどの衝撃というのに。
「その血が、お前さんの両親のどちらかか、はたまたその両親のどちらか、もしくはもっと前の先祖か。その血の濃さは俺には分からんが、確実にお前さんの身体には魔族の血が流れておる。」
「ち、ちょっと待ってください。どうしてサーシャに魔族の血が流れていると断言できるのでしょうか?」
そう割り込んできたのはローラスでした。
「ローラスちゃんには感じなかったのね。あの禍々しいほどの巨大な魔力を。」
グラノールさんは、やはり何かを感じていたのですね。それに比べてローラスは、まだまだですね。
まあ、僕にも分からなかったですけどね。でも僕は魔法使いや魔法剣士ではないので分からなくても当然ですけどね。
「確かに変わった魔力だと感じましたけど、私がこれまで戦ってきた魔物とは性質が全く違っていました。」
「それはのう若者よ、ランクが違うのじゃ。」
「ランク、ですか?」
「そうじゃ。お前さんが戦ってきたのは、いわゆる魔族の中でも底辺に属する言葉もろくに喋れん魔物じゃ。魔物には、ハイクラスな種族がおる。そやつらは言葉をしゃべり高度な魔力と知性を持つのだ。覚えておくのじゃ、いずれ出会うこともあるかもしれん。」
これは勉強になりますね。しかし、ということはサーシャ様の血は魔物のハイクラスのものと解釈していいということです。僕のワクワクは更に高まっていきます。
「何でもいい。」
サーシャ様は突然口を開き、そう言いました。皆が驚くようにサーシャ様に視線を移しました。
「何でもいい。私が最強の称号を手にいれれるのならば、魔族の血でも何でも受け入れるわ。」
ブラボー!よくぞ言ってくれました。それでこそ僕が見込んだサーシャ様です。僕は少し感動してしまいましたよ、本当に。
「はぁー、あんたって子は。まぁ、それがサーシャらしいわね。」
「そ、そうだ。サーシャはサーシャだ。」
グラノールさんとローラスはそう言いましたが、サーシャ様は魔物ですよ。あなた方にはサーシャ様の面倒は無理です。
僕が全て面倒みますのでお任せ下さい、と僕は心の中で呟きました。
「サーシャよ。こんなことを推測で口にするのは好まんが、言わせてくれ。」
パラドール・ジグマは若干言いにくそうにして咳払いを一つして続けました。
「お前さんの母について調べてみてはどうかの。そこに何かしらの秘密があるような気がするんじゃ。」
確かに皆の疑惑はサーシャ様の母上に向けられるのは自然の成り行きでしょう。
だけどサーシャ様は、きっとこう言うでしょう、「興味がない」とね。
「そうね。修行が終わったら、そうしてみるわ。」
……ねっ。
「あら、パラちゃんにしては、随分まともな提案ね。もしかして魔法の穴に関して何かしらのヒントでも得ようとしてるのかしら。」
たしか魔法の穴が、この世界のどこかに存在すると、グラノールさんは言っていましたね。ということは、パラドール・ジグマも、その穴について研究しているということですね。そして魔族である、サーシャ様の生い立ちから、そのヒントを見つけようという、藁にもすがる思いというわけですか。
何と、ずる賢い爺でしょうか。
あっ!先程のサーシャ様の台詞予想を見事に外してしまった腹いせでは、ありませんよ。
「残念じゃが見当違いじゃ。魔法の穴の追求は、もう止めた。今は、こっちに夢中なんでな。」
そう言ってパラドール・ジグマは一枚の紙切れを僕らに見せました。
そこには一人の戦士らしき人相絵と名前が記されていました。
「レジェス?へーっ、パラちゃんが、そんなに入れ込むということは、その子相当強いのね。」
「無論じゃ。こいつは歴代の数々の戦士たちを遥かに凌駕した最強の戦士じゃ。」
パラドール・ジグマの『最強』というフレーズに敏感に反応したのを僕は逃さず見ていました。
それよりも――。
僕は、その紙に描かれた男の顔を、いつのまにか食い入るように見ていました。
「なんじゃ、お前さんもしかして、この男の事を知ってるのか?」
急に、そう言われて僕は我に返りました。
「い、いえ。彼の名前に聞き覚えはありません。けど、どこかで会ったことがあるような気がして。まあ、他人の空似でしょう。」
結局、その日は朝方まで皆が起きていました。
外からは朝を告げる小鳥たちの声が寝不足な僕たちの神経を逆撫でしたのでありました。
僕たちは、テーブルを囲んだままウトウトと浅い眠りについていました。
ベッドから、むくりと起き上がったサーシャ様に気がついたのは僕でした。
「サーシャ様!?」
僕は少し恐る恐るサーシャ様に声をかけました。また、いきなり暴走し始めるのではないかと不安があったからです。
「――ピート……私はいったいどうしたんだ?」
どうやら大丈夫そうで、なによりですね。
僕は皆を起こしてお茶の準備を始めました。
その間、パラドール・ジグマがサーシャ様に事の次第を説明していました。
「そ、そうですか。私にそんなことが……全く覚えていない。だけど明らかに私の内に渦巻く魔力が以前とは桁違いになっているのは感じる。」
「それは、お前さんの持つ本来の力の片鱗に過ぎない。この先、もっと魔力が上がることじゃろう。」
おお!ということはサーシャ様の魔法剣のレベルも格段に上がるということではありませんか。喜ばしいことです。
しかし、先程からグラノールさんの顔色が優れないのは何故でしょうか。
「パラちゃん。」
グラノールさんは訴えるようにパラドール・ジグマを見ました。
「分かっとる。これから話すつもりじゃ。」
そう言ってパラドール・ジグマはお茶で喉を潤しました。
「よいか、サーシャよ。お前さんには酷なことになるかもしれんが、聞くのだ。」
「なに?」
サーシャ様は場の空気に反するように、気の抜けた返事をしました。
ですが、僕やローラスには何となく深刻な話が、これからなされるということを頭のどこかで察知していました。まあ、あんなサーシャ様を見た我々だからこそなのでしょうが。
「はっきりと言うとじゃなサーシャ、お前さんには魔族の血が流れておる。」
なんですと!?
これには僕も驚きを隠せません。それはつまり早い話しサーシャ様は魔物ということ。
これには僕も興奮を抑えきれません。
しかし当の本人は、「へーっ。」と、呆れた反応しか示しません。鈍感なのでしょうか。これは、天地がひっくり返るほどの衝撃というのに。
「その血が、お前さんの両親のどちらかか、はたまたその両親のどちらか、もしくはもっと前の先祖か。その血の濃さは俺には分からんが、確実にお前さんの身体には魔族の血が流れておる。」
「ち、ちょっと待ってください。どうしてサーシャに魔族の血が流れていると断言できるのでしょうか?」
そう割り込んできたのはローラスでした。
「ローラスちゃんには感じなかったのね。あの禍々しいほどの巨大な魔力を。」
グラノールさんは、やはり何かを感じていたのですね。それに比べてローラスは、まだまだですね。
まあ、僕にも分からなかったですけどね。でも僕は魔法使いや魔法剣士ではないので分からなくても当然ですけどね。
「確かに変わった魔力だと感じましたけど、私がこれまで戦ってきた魔物とは性質が全く違っていました。」
「それはのう若者よ、ランクが違うのじゃ。」
「ランク、ですか?」
「そうじゃ。お前さんが戦ってきたのは、いわゆる魔族の中でも底辺に属する言葉もろくに喋れん魔物じゃ。魔物には、ハイクラスな種族がおる。そやつらは言葉をしゃべり高度な魔力と知性を持つのだ。覚えておくのじゃ、いずれ出会うこともあるかもしれん。」
これは勉強になりますね。しかし、ということはサーシャ様の血は魔物のハイクラスのものと解釈していいということです。僕のワクワクは更に高まっていきます。
「何でもいい。」
サーシャ様は突然口を開き、そう言いました。皆が驚くようにサーシャ様に視線を移しました。
「何でもいい。私が最強の称号を手にいれれるのならば、魔族の血でも何でも受け入れるわ。」
ブラボー!よくぞ言ってくれました。それでこそ僕が見込んだサーシャ様です。僕は少し感動してしまいましたよ、本当に。
「はぁー、あんたって子は。まぁ、それがサーシャらしいわね。」
「そ、そうだ。サーシャはサーシャだ。」
グラノールさんとローラスはそう言いましたが、サーシャ様は魔物ですよ。あなた方にはサーシャ様の面倒は無理です。
僕が全て面倒みますのでお任せ下さい、と僕は心の中で呟きました。
「サーシャよ。こんなことを推測で口にするのは好まんが、言わせてくれ。」
パラドール・ジグマは若干言いにくそうにして咳払いを一つして続けました。
「お前さんの母について調べてみてはどうかの。そこに何かしらの秘密があるような気がするんじゃ。」
確かに皆の疑惑はサーシャ様の母上に向けられるのは自然の成り行きでしょう。
だけどサーシャ様は、きっとこう言うでしょう、「興味がない」とね。
「そうね。修行が終わったら、そうしてみるわ。」
……ねっ。
「あら、パラちゃんにしては、随分まともな提案ね。もしかして魔法の穴に関して何かしらのヒントでも得ようとしてるのかしら。」
たしか魔法の穴が、この世界のどこかに存在すると、グラノールさんは言っていましたね。ということは、パラドール・ジグマも、その穴について研究しているということですね。そして魔族である、サーシャ様の生い立ちから、そのヒントを見つけようという、藁にもすがる思いというわけですか。
何と、ずる賢い爺でしょうか。
あっ!先程のサーシャ様の台詞予想を見事に外してしまった腹いせでは、ありませんよ。
「残念じゃが見当違いじゃ。魔法の穴の追求は、もう止めた。今は、こっちに夢中なんでな。」
そう言ってパラドール・ジグマは一枚の紙切れを僕らに見せました。
そこには一人の戦士らしき人相絵と名前が記されていました。
「レジェス?へーっ、パラちゃんが、そんなに入れ込むということは、その子相当強いのね。」
「無論じゃ。こいつは歴代の数々の戦士たちを遥かに凌駕した最強の戦士じゃ。」
パラドール・ジグマの『最強』というフレーズに敏感に反応したのを僕は逃さず見ていました。
それよりも――。
僕は、その紙に描かれた男の顔を、いつのまにか食い入るように見ていました。
「なんじゃ、お前さんもしかして、この男の事を知ってるのか?」
急に、そう言われて僕は我に返りました。
「い、いえ。彼の名前に聞き覚えはありません。けど、どこかで会ったことがあるような気がして。まあ、他人の空似でしょう。」
結局、その日は朝方まで皆が起きていました。
外からは朝を告げる小鳥たちの声が寝不足な僕たちの神経を逆撫でしたのでありました。
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