最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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封印解除

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サーシャ様の体に刻まれた封印の術式を解くための儀式が、いよいよ始まります。


「少々時間を要するだろうから、皆は茶でも飲んでおれ。」


パラドール・ジグマはサーシャ様の背に優しく手を当てながら、呟くように何かを唱え始めました。


僕らはそれをただ見守ることしかできません。

サーシャ様は背を丸めるようにしてうつむいています。

一体どうなっていくのか、ここにいる誰もが答えを知らない状況に場の空気は混沌とした雰囲気に支配されていきました。


――それからおよそ一時間ほど経過しましたが状況に進展はありませんでした。

パラドール・ジグマは変わらずサーシャ様の背に手を当てたまま目を閉じています。

さすがの僕らも緊張感が保てずに気を緩め始めた、その時でした。


突然サーシャ様が、「熱っ!」と小声で短い言葉を発しました。

するとサーシャ様の背に張り付いていた文字が青く強い光を放ち始めたではありませんか。

パラドール・ジグマはその変化にも動じることなく、何かを呟き続けています。

そしてついには、その文字が浮き上がるようにして、サーシャ様の背から少しずつ離れ始めたではありませんか。


「もう少しじゃ、辛抱するのだぞ。サーシャ。」


よくみるとサーシャ様は相当苦しそうにしておられる様子。

僕は心臓がドキドキしてきました。


サーシャ様の背から封印の術式である魔族の文字が完全に剥がれて、そのままパラドール・ジグマの手の中に吸い込まれて消失してしまうまでは非常に長く感じられましたが、実際にはほんの一瞬の出来事だったということを理解したときには、既に儀式は全て完了していました。


サーシャ様は上着を着てそのまま僕らに背を向けたまま、うつむいて動きません。

その間、額に大量の汗をかいたパラドール・ジグマは、それを拭うこともせずに、ただサーシャ様を黙って見つめていました。


その状態のまま数分ほどが経ちました。誰も口を開かないまま無言の時が過ぎていきます。

これは術式の時よりも、ただならぬ緊張感を感じざるを得ません。


「……が……私……。」


何やら聞こえたのは、恐らくサーシャ様の声でしょう。

一斉に皆がサーシャ様に視線を送りました。


「これが私。す、すごい。まるで別の生物にでもなったかの様だわ。」


「そうじゃ。それが本当のお前さんだ、サーシャよ。」


二人の会話に僕はついていけてません。一体どういうことなのでしょう。

僕はローラスとグラノールさんを見ました。

ローラスは、およそ僕と同じような反応でしたが、グラノールさんは全く違う様子でした。


「これがサーシャ……これじゃあまるで……。」


グラノールさんの反応から察すれば、決して良い方向に向かっているのではないのかなと思える感じです。


「これが本当の私。この力があれば――ハァハァハァ――ぐっ!」


何やらサーシャ様のご様子がおかしい、と思った次の瞬間でした。

突然サーシャ様が立ち上がり雄叫びを上げました。


「ウォーーー!」


それは僕の知るサーシャ様とは、全く別人の様な声でした。

その声に反響してなのか、部屋の窓や僕らが飲んでいたカップ等が粉々に砕け散ってしまったではありませんか。更に、その奇声のような音に僕らの鼓膜まで破れてしまいそうです。


「な、なんて禍々しい魔力なの。」


僕の真後ろにいたグラノールさんの声が微かに聞こえました。

このままでは皆倒れてしまいます。何とかしないと、そう思った次の瞬間でした。

これまで冷静にサーシャ様を見つめていたパラドール・ジグマが立ち上がり、そして 「オプレス!」と唱えました。

するとサーシャ様は糸の切れた操り人形のように床に崩れ落ちました。


「突然に巨大な魔力を身体に宿した為、少々暴走してしまった様じゃな。まあ、しばらく休めば問題ないじゃろ。」


パラドール・ジグマの言葉に一同は、ほっと胸を撫で下ろしました。

その後、サーシャ様をベッドに移し、皆でテーブルを囲みながら、お茶を注ぎ直し一息つきました。


「パラちゃん。あの魔力はもしかして――」


「そうじゃな。まあ、その説明は本人が起きてからにしようじゃないか。」


パラドール・ジグマの言葉に無言で頷き、お茶を啜りました。

静寂が訪れた部屋に「ズズーッ」と、お茶を啜る音が場違いの様に響きました。

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