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フード平原と真打ち
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シグレ島を発ってから一日が経ちました。
僕たちは今、岐路に立たされています。
「だから、こっちは危ないって言ってるの。」
「危なくったって、こっちの方が断然早いのよ。」
サーシャ様とシエルさんが揉めだして、小一時間ほどが経過しています。
ここはソルディウスとキリエスの国境付近。こんな所で目立ってしまっては、また面倒事が起きそうで気が気ではありません。
「フード平原なんて歩いてたら、またキリエスの兵士に見つかっちゃうのよ。分からず屋!」
「キリエス兵がなによ、この臆病者!」
なかなか厄介ですね。行くなら行く、迂回するなら迂回しなくては、本当に大変な事が起きそうです。
何せ、ここはもうフード平原なんですから。
確かにフード平原を縦断すれば、迂回して行くよりかなり早くフォンダンに到着します。危険性は高くなりますけど。
逆に一旦、ソルディウスへと回り込んで行くと遅くなりますが安全でしょう。
ちなみに、このフード平原というのはレト大陸をほぼ縦断している縦長の平原です。
ここはキリエスとソルディウスが、しばしば小競合いしている場所でもありますが、普段は旅の商人なども通っているので、もしかしたら大丈夫かもしれません。
どっちにせよ早く決めていただきたいですね。
僕は二人のやり取りに飽きてきたので少し休ませてもらうことにしましょう。
草原の草の上に座り、くつろごうとした時でした。
「あの、すいませんが道を訊ねてもええですか?」
言い争っていた二人は、その声に瞬時に反応して振り返りました。
そこには旅人らしき中年の男が一人立っていました。
恐らくはキリエスの兵士ではありません。
僕も、ゆっくりと腰を上げました。
「ええ、構わないわよ。」
サーシャ様は警戒心を緩めないまま言いました。
「シグレ島には、どう行ったらええかな?」
そのワードに今度は僕ら全員が警戒レベルを上げました。
「シグレ島にいったい何の用があるの?」
「んだ、ちょっと届け物があっての。」
まあ単なる偶然なのかもしれません。しかし、タイミングが良すぎますね。
僕たちがシグレ島を出てきたばかりなのだから、変に疑ってしまいます。
だいたい、シグレ島に用がある人なんて滅多にいないでしょうから。
「何を届けに行くの?」
「いや、それはちょっと言えんな。」
サーシャ様が執拗に問うのも分かります。自分が育った場所に、変な奴を行かせたくないのでしょうね。
また、あのフォックスのような輩かもしれませんからね。
「いいえ、言ってもらうわ。誰に何の届け物か、はっきりと言いなさい。」
サーシャ様は、もう止まりません。遂には剣を抜き、男に迫りました。
そうです。そのまま斬っちゃいましょう。そうすれば憂いは絶てます。
「ひぃぃい――あれ!?あんた、その剣はスパロウティアズじゃないのかい?もしかして貴女がサーシャさんかい?」
「あなたいったい何者?」
「俺はサムってもんだ。パークさんから預かったこいつを、シグレ島に持っていく途中だったんだ。」
サムと名乗る男は大事そうに持っていた布製の袋から一本の剣を取り出しました。
「そ、それはスパロウティアズ!?」
確かに見た感じそっくりですね。単なる紛い物でしょうか?
「ん?その、剣にも魔力が宿ってるわね。サーシャの剣と同じような魔力ね。」
シエルさんの言う通り、その剣はどこからどうみてもスパロウティアズそのものでした。
しかも依頼主がパークという方らしいです。
パークといえば、まさにこれから僕たちが会いに行こうとしていた人物です。
「んだ。これはスパロウティアズだ。パークさんがディミトリ様より預かっていたと聞いとる。なんでも、ちょうどあんたのスパロウティアズが限界に達しとるそうでね。」
いったいどういうことでしょう。僕たちは全員困惑状態に陥りました。
サーシャ様は、半信半疑で自負の剣を眺めて見ました。
「あっ!」
サーシャ様が発見したのは自分の剣に入っていた亀裂でした。
ああ、それは結構な傷ですね。もうすぐ、ぱっきりと折れてしまうでしょう。
「ど、どうして、そんなことが分かったの。」
「いや、それは俺に聞かれても。ただ、このスパロウティアズの方が真打ちらしいで。」
見た感じは同じですが、要はこの新しいスパロウティアズこそが本物のスパロウティアズということでしょうか。
サーシャ様は受け取った瞬間に、その違いに気づいた様です。
「こ、これは凄い。全然違う。」
そう言って試しにビュンビュンと剣を振り回した。
「確かに、お渡ししたので。じゃあ俺は、これで――。」
早々に立ち去ろうとしたサムをサーシャ様は慌てて止めました。
「ちょっと待って!パークさんってどんな人。」
これから探さなければならない人物ですからね。情報収集しておかなければなりません。
サムから絞り取れるものは全て絞り取りましょう。
「なんだい会ったことないのか。パークさんはフェイトフル・リアルムの戦略担当室長だ。知的な御仁だ。」
これには全員が驚きました。
フェイトフル・リアルムとは、フォンダンの隣りの国です。
この国はフォンダンと同じ程の面積を保有しております。
海に面しており、港町としても有名です。
外交と戦争を得意としており、かつての超大国キリエスにも属さなかった歴史ある独立国家です。
ソルディウス、フォンダンがキリエスから独立する前の、このレト大陸で独立した国を、まともに保っていたのはフェイトフル・リアルムくらいではないでしょうか。
もちろんキリエスの進攻を幾度となく受けています。
しかし、フェイトフル・リアルムは戦上手です。簡単には落ちません。
そして外交も得意としており、キリエスをいいように振り回してきました。更にはギアン大陸との交友を深め、キリエスが簡単に攻め入れないよう地盤を固めていきました。
なんにせよ凄い国なんです。
「ねえねえ、パークさんってフォンダンに居るんじゃないの?」
シエルさんの発言に僕も激しく賛同しました。
するとサムは驚いたような顔をして、
「あんたら知らんのか。フォンダンはもう無くなってしもうたぞ。」と、言いました。
僕たちは今、岐路に立たされています。
「だから、こっちは危ないって言ってるの。」
「危なくったって、こっちの方が断然早いのよ。」
サーシャ様とシエルさんが揉めだして、小一時間ほどが経過しています。
ここはソルディウスとキリエスの国境付近。こんな所で目立ってしまっては、また面倒事が起きそうで気が気ではありません。
「フード平原なんて歩いてたら、またキリエスの兵士に見つかっちゃうのよ。分からず屋!」
「キリエス兵がなによ、この臆病者!」
なかなか厄介ですね。行くなら行く、迂回するなら迂回しなくては、本当に大変な事が起きそうです。
何せ、ここはもうフード平原なんですから。
確かにフード平原を縦断すれば、迂回して行くよりかなり早くフォンダンに到着します。危険性は高くなりますけど。
逆に一旦、ソルディウスへと回り込んで行くと遅くなりますが安全でしょう。
ちなみに、このフード平原というのはレト大陸をほぼ縦断している縦長の平原です。
ここはキリエスとソルディウスが、しばしば小競合いしている場所でもありますが、普段は旅の商人なども通っているので、もしかしたら大丈夫かもしれません。
どっちにせよ早く決めていただきたいですね。
僕は二人のやり取りに飽きてきたので少し休ませてもらうことにしましょう。
草原の草の上に座り、くつろごうとした時でした。
「あの、すいませんが道を訊ねてもええですか?」
言い争っていた二人は、その声に瞬時に反応して振り返りました。
そこには旅人らしき中年の男が一人立っていました。
恐らくはキリエスの兵士ではありません。
僕も、ゆっくりと腰を上げました。
「ええ、構わないわよ。」
サーシャ様は警戒心を緩めないまま言いました。
「シグレ島には、どう行ったらええかな?」
そのワードに今度は僕ら全員が警戒レベルを上げました。
「シグレ島にいったい何の用があるの?」
「んだ、ちょっと届け物があっての。」
まあ単なる偶然なのかもしれません。しかし、タイミングが良すぎますね。
僕たちがシグレ島を出てきたばかりなのだから、変に疑ってしまいます。
だいたい、シグレ島に用がある人なんて滅多にいないでしょうから。
「何を届けに行くの?」
「いや、それはちょっと言えんな。」
サーシャ様が執拗に問うのも分かります。自分が育った場所に、変な奴を行かせたくないのでしょうね。
また、あのフォックスのような輩かもしれませんからね。
「いいえ、言ってもらうわ。誰に何の届け物か、はっきりと言いなさい。」
サーシャ様は、もう止まりません。遂には剣を抜き、男に迫りました。
そうです。そのまま斬っちゃいましょう。そうすれば憂いは絶てます。
「ひぃぃい――あれ!?あんた、その剣はスパロウティアズじゃないのかい?もしかして貴女がサーシャさんかい?」
「あなたいったい何者?」
「俺はサムってもんだ。パークさんから預かったこいつを、シグレ島に持っていく途中だったんだ。」
サムと名乗る男は大事そうに持っていた布製の袋から一本の剣を取り出しました。
「そ、それはスパロウティアズ!?」
確かに見た感じそっくりですね。単なる紛い物でしょうか?
「ん?その、剣にも魔力が宿ってるわね。サーシャの剣と同じような魔力ね。」
シエルさんの言う通り、その剣はどこからどうみてもスパロウティアズそのものでした。
しかも依頼主がパークという方らしいです。
パークといえば、まさにこれから僕たちが会いに行こうとしていた人物です。
「んだ。これはスパロウティアズだ。パークさんがディミトリ様より預かっていたと聞いとる。なんでも、ちょうどあんたのスパロウティアズが限界に達しとるそうでね。」
いったいどういうことでしょう。僕たちは全員困惑状態に陥りました。
サーシャ様は、半信半疑で自負の剣を眺めて見ました。
「あっ!」
サーシャ様が発見したのは自分の剣に入っていた亀裂でした。
ああ、それは結構な傷ですね。もうすぐ、ぱっきりと折れてしまうでしょう。
「ど、どうして、そんなことが分かったの。」
「いや、それは俺に聞かれても。ただ、このスパロウティアズの方が真打ちらしいで。」
見た感じは同じですが、要はこの新しいスパロウティアズこそが本物のスパロウティアズということでしょうか。
サーシャ様は受け取った瞬間に、その違いに気づいた様です。
「こ、これは凄い。全然違う。」
そう言って試しにビュンビュンと剣を振り回した。
「確かに、お渡ししたので。じゃあ俺は、これで――。」
早々に立ち去ろうとしたサムをサーシャ様は慌てて止めました。
「ちょっと待って!パークさんってどんな人。」
これから探さなければならない人物ですからね。情報収集しておかなければなりません。
サムから絞り取れるものは全て絞り取りましょう。
「なんだい会ったことないのか。パークさんはフェイトフル・リアルムの戦略担当室長だ。知的な御仁だ。」
これには全員が驚きました。
フェイトフル・リアルムとは、フォンダンの隣りの国です。
この国はフォンダンと同じ程の面積を保有しております。
海に面しており、港町としても有名です。
外交と戦争を得意としており、かつての超大国キリエスにも属さなかった歴史ある独立国家です。
ソルディウス、フォンダンがキリエスから独立する前の、このレト大陸で独立した国を、まともに保っていたのはフェイトフル・リアルムくらいではないでしょうか。
もちろんキリエスの進攻を幾度となく受けています。
しかし、フェイトフル・リアルムは戦上手です。簡単には落ちません。
そして外交も得意としており、キリエスをいいように振り回してきました。更にはギアン大陸との交友を深め、キリエスが簡単に攻め入れないよう地盤を固めていきました。
なんにせよ凄い国なんです。
「ねえねえ、パークさんってフォンダンに居るんじゃないの?」
シエルさんの発言に僕も激しく賛同しました。
するとサムは驚いたような顔をして、
「あんたら知らんのか。フォンダンはもう無くなってしもうたぞ。」と、言いました。
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