最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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一触即発

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「断る。」


カモミール姫からの頼みをサーシャ様は一刀両断しました。

さすがです。それで良いのです、サーシャ様。ブラボー。


しかし、それに対してカモミール姫の機嫌を、どうやら損ねてしまった様です。


「なぜ?ここはブレイズ国内よ。貴女の返答次第では全員縛り首になるかもしれないわよ。」


ノー!それは止めてください。

というより卑怯ではありませんか。

この姫様は僕の中の姫様像を、とことんぶち壊していきます。


「いいえ、お引き受けはできません。」


サーシャ様、ここは譲ってはいけません。

僕はキリエスなんかには死んでも行きたくありませんからね。


「姫様。もう止めるんじゃもん。こやつらは儂が招いた客人じゃもん。」


「タイゾウは黙ってなさい。シエル、この頑固娘を説得してちょうだい。」


「嫌だよ。私はサーシャが行かないって言うのなら従うわ。」


シエルさんもナイスです。

これでカモミール姫は孤立しましたね。

あとは皆で説得するのみです。


「誤解しないで欲しいのですが。私は絶対行かないとは言っていない。」


サーシャ様!?

突然、何を言い出すのでしょう。

僕は不安になってきました。


「どういうこと?」


「キリエスへ行くには戦力不足だと言いたいのです、姫様。」


「……確かにそうね。分かったわ、こちらで腕のたつ兵を調達しましょう。タイゾウ、バランダを呼んでちょうだい。」


話しの展開の雲行きが怪しくなってきました。

誰か、カモミール姫を止めて頂きたいです。


「姫様。お言葉ではありますが、バランダだと潜入調査には向いてないんじゃもん。」


おお!まさか敵方と思われていた、タイゾウが味方に回りました。ナイスです。


「そ、そうね。剣の腕は良いけど、あの体格では目立っちゃうわね。だったら、ワッツならどう。あいつの魔法はなかなか強力よ。」


「ワッツは魔法使いとしては優秀だけど、あやつは極度の人見知りじゃもん。他の者との連携は無理じゃもん。」


ま、まともな人は居ないのでしょうか?

ブレイズは、どうやら人材不足のようですね。

ですが、これでカモミール姫も諦めてくれることでしょう。


「姫。私からお願いがあるのですが。」


「いいわ、言いなさい。」


「人を探してもらいたい。もちろん私達の協力者としてね。」


「いい宛てがあるのね。分かったわ、言いなさい。」


「レジェスという者の所在を調べて欲しいの。」


これは驚きました。

まさかサーシャ様の口から、彼の名前が出るとは思ってもいませんでした。


「レジェス。誰なんだ、その人は?」


ローラスは、知らない様子です。

ギアン大陸では、もっと有名なのかと思っていたのですが、どうやら違ったみたいですね。


「あの坊やが仲間になってくれれば百人力ね。」


シエルさんは、彼の事を僕より、おそらくずっと後に知っている筈です。

そのシエルさんが太鼓判を押すのですから、間違いなく彼は――レジェスは強くなっているのでしょう。


「レジェス……どこかで聞いたことのある名前ね。タイゾウ、知っているかしら?」


「確か、グリフォンブルーの王子という噂は聞いたことがあるんじゃもん。しかし、現在は王の継承権を捨てて旅に出ていると聞いてますんじゃもん。」


グリフォンブルーの王子?

彼はそんな高貴な身分だったのですか?

それならば、もっと彼に尽くしておけば良かったですね。

そうすれば余生は楽な人生が待っていたかもしれません。


「なるほどグリフォンブルーね。だったら相当強いのでしょう。」


「ええ。その強さは、もはや人間ではないとか。しかし、あくまで噂じゃもん。本当の所は謎じゃもん。」


「サーシャ。分かったわ、そのレジェスとかいう男を探してみましょう。そしてレジェスが貴女に協力するよう説得してみるわ。そうしたらキリエスへ行ってくれるわね。」


「仰せのままに。」


「では、その間はブレイズでゆっくりしていなさい。タイゾウ、早速探索チームを発足させるわよ。」


カモミール姫とタイゾウは急いで僕らの前から姿を消しました。

その後、僕らは専用に用意してもらった一軒家に案内されました。

どうやら、ここに軟禁されることになったようです。


「しかし、サーシャ様がまさかあんな事を言い出すとは思わなかったですよ。」


「あらそう?まあ、時間稼ぎよ。おそらくレジェスって人は簡単には見つけられないでしょうからね。」


そういえば、フェイトフル・リアルムのパークさんも彼の消息が掴めないと言っていました。

最悪、見つからなければ僕らがキリエスへ行く必要はないですからね。

まったく悪知恵だけはよく働きますね、サーシャ様は。


「ところでローラス。あなた、帰らなくていいの?」


「ああ、大丈夫だ。調査の報告書はアトラスへ送っておけば問題ない。それにサーシャ達と一緒に居た方が、いい修行が出来そうだしな。」


今はローラスみたいなのでも、戦力として欲しいところですからね。

これから、どう転ぶか全くもって予想できませんから。


「それで、これからどうします?」


サーシャ様は、にやりと微笑みました。

その微笑みは美しくもあり恐ろしくもありました。


「せっかくだからね。街へ繰り出そう!」


お気楽ですね。まあ、どうせそんなことだろうと思っていました。


「おお!賛成!行こう行こう。」


シエルさんも呑気です。そもそも、キリエス行きの話しを持ってきた張本人が無責任な人……いえ、エルフだということが問題なのですよ。


「ちょっと待て。こんな時にこそ修行をするべきじゃないか。」


ローラスは、やはりまともな感性を持っているようです。

これには僕も同意見です。

少しでも強くなって頂かないと、僕が抱く夢が遠のくばかりです。


「何、言ってんのよ。遊びも修行よ。さあ、レッツゴー!」


サーシャ様の理不尽極まりない、言葉に僕たちは街へと出かける事になりました。


外は少し蒸し暑く、何もしていないのに、じわりと汗が流れ出すような、そんな夏の前の気配がありました。


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