最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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フェイトフル・リアルムの攻防

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戦闘が始まって、およそ二日が経とうとしていました。

戦況は、芳しくありません。

最初は、連合軍に勢いがありましたが、少しづつ押されてきたように思います。

しかし、どうして急に勢いが弱まったのでしょうか。

おそらく、誰もがそう感じていた筈です。

それを察したパークさんが、皆に説明を始めました。


「この戦の流れには幾つかの、はっきりとした原因がある。」


「原因?それはいったい何なのです、マスターゼロ。」


「まず一つ目は、フェイトフル・リアルムだ。彼らは本来、防衛戦において秀でていた。それは、あの鉄壁と言われた城壁があったからだ。しかし、今はその城壁を攻めねばならない状況下にある。おそらく、敵に渡った城壁は彼らの想像以上に手強く感じているだろう。」


味方の内は頼もしいですが敵に回すと厄介ということですね。


「それから、もう一つはブレイズの兵たちだ。ブレイズにとってここは慣れぬ土地なのだ。それに、キリエスと実戦で合間見えるのも初めてだろう。更にそれに加え、長い船旅の影響もある。軍としては纏まっているが、思うように戦えず苦戦を強いられているように見受けられるな。」


それはパークさんの言う通りでしょう。

現にこの高台から見ているだけでも、ブレイズ軍の苦戦は見てとれます。


「まあ、グリフォンブルーに関しては、予想通り動けているし、よくやっている。だが、あの戦力ではこの戦をひっくり返す程の影響力はないだろう。」


パークさんは客観的に見て、この戦いを冷静に分析しているようでした。


「この流れを変えるには、もう一つ何かが不足している。どうすればよいのか……。」


そのパークさんの呟きに、真っ先に手を挙げたのは、レジェスでした。


「私が行こう。そうすれば、この戦勝てますぞ、マスターゼロ。」


最初は、渋っていたパークさんですが、他に手立てがない以上、それを許可するしかありません。


「ならば、もちろんお供いたします。」


ジャクリンさんもレジェスが戦場へ向かうというのであれば、行かぬ訳にはいきませんからね。


「私も、一緒に行くよ。」


そう言い出したのは、まさかのサーシャ様でした。

ちょっと待って下さい。

ということは、従者である僕も当然、行かなければならなくなります。

ここは、一つ考え直してもらいたいものです。


「だったら俺も共に行くぞ。」


「じゃあ私も行っちゃおうかな。」


ローラスとシエルさんまで……。

これはまずい状況です。

最後の頼みは、パークさんしかいません。

何とか皆さんを宥めてください。

どうかお願いします。


「――そうか。行ってくれるか。すまぬな、皆頼んだぞ。」


いやいやいやいや、ちょっと待って下さい。

この戦いは、僕らには関係のないことですよ。

僕らの目的は、アイスのみです。

こんな、大戦なんて命が幾つあっても足りません。

絶対に行きたくありません。

ここは、仮病を使ってでも逃げなければなりません。


「任せておいて。私たちが終わらせてくるわ。」


サーシャ様、自惚れにも程がありますよ。

僕たちが行っても何も変わりはしません。

そうだ!レジェスだけに行ってもらいましょう。

きっと彼一人で間に合います。

そうだ、そうしよう。

そして、僕は考えをまとめ、口を開こうとした、その時でした。


「ちょっと待て!あれは……。」


その言葉を待っていました。

パークさんが、きっと止めてくれると信じていました。

しかし、「あれは」とは?


パークさんの、その視線の先には何やら、大軍勢が見えます。

あれは、どこの軍でしょうか?

先頭には、何やら眩いばかりの黄金を身にまとった人が見えます。

黄金……!?

まさか――。


「あれは、ダマン!ということは、ソルディウスか!」


レジェスの言葉で、それは確信に変わりました。

やはり、あのド派手な鎧は、黄金の剣士ダマンでした。

以前、サーシャ様と大会で戦ったことがあるので、僕にも分かりました。


「――ダマン……誰だっけ?」


サーシャ様……貴女が前に負けた男ですよ。

一応、サーシャ様の父上を倒した剣士です。

忘れるなんて、信じられません。


「あっ!思い出した。あの時の――。」


本当に思い出したかどうか、怪しい限りですが、追及はしないでおきましょう。

それよりも、これで僕たちが戦場に行くことはありませんよね。

あのソルディウスからの援軍、なかなか大規模ですからね。

今度こそ、キリエスを倒せると信じていますよ。



「まさか、これ程の援軍を送ってくれるとは、ピーター・ドレイクもやるものだな。」


「ええ、彼は信用できる男ですぞ、マスターゼロ。」


「お前が、そう言うのならきっとそうなのだろう。いつか会ってみたいものだ。」


本来なら、ドレイク三世を名乗るのは、長兄のピーターだった筈です。

因果なことですね。

今や、キリエスと敵対しているのですからね。


「しかし、あれほどの軍勢を送ってきたとなれば、ソルディウスは手薄になっているのではあるまいか?近くにはフード平原に陣を敷く別のキリエスの軍勢がいるのに、大丈夫なのか?」


確かに、それは気になります。

これでもし、ソルディウスがキリエスに落とされでもしたら、状況は大混乱になります。

これから、フード平原へ向かう僕たちにとっても、ただ事ではありませんよね。


「おそらく、ピーターは何かを見越して兵を送ったのだと思う。

彼は無策なことはしないはずだ。何か勝算があってのことでしょう。」


どうやら、レジェスはピーター・ドレイクを高く評価しているみたいですね。

それじゃあ僕も彼を信じてみましょうか。



戦いは、やはり大きく動きました。

ソルディウスの参戦により、息を吹き返した連合軍は、徐々にキリエスを押していきます。

そして、その後僅か数時間の内に城壁を奪還しました。

ここからは、完全に連合軍が有利に事を運んでいきます。


そして、耐えきれなくなったキリエス軍は遂に退却を始めました。

勝利です。

やりました。

被害は、小さくありませんが、この勝利は大きなものです。


しかし、気になることもあります。


「奴らが退却した方角はマビン・グラスではない。あちらには、フード平原――つまり合流するつもりだ。」


パークさんから、不吉なことを聞かされて、一気に不安が募ったのでありました。



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