最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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団結

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僕たちは、キリエスの街の中へ逃げ込みました。

もうじきテルミナの化け物が、ここへなだれ込んで来る。

ディミトリさんと、フルガイアの民たちは、街全体に強力な魔法の結界を張って対処するようですが、果たして食い止めることが出来るのでしょうか。


「ここは、私が何とかするから、サーシャたちは街の安全な場所に避難しておいてくれ。」


そうですね。

僕たちは避難したほうが良さそうですね。


「私も手伝うわ。ここは、私の故郷でもあるんだから。」


「――サーシャ……すまん、助かる。」


サーシャ様の申し出に、ローラス、シエルさん、ジャクリンさん、レジェス、ダマンも同意して、立ち上りました。

もちろん僕も最初から、そのつもりでしたよ……本当ですよ。


「それで、ディミトリ殿。結界を張ると言っていたが、それで奴等を止められるのか?」


ダマンの問いかけに、ディミトリさんは、苦笑いを浮かべ、

「いや、無理だろうね。」と、答えました。


「テルミナの者の中には、想像を遥かに越えた強さを持つ者もいる。それに加えて、あの数だ。まともに戦えば、我らは滅びるだろう。」


こ、これは予想外でした。

まさか、あの魔物たちにそんな力があるとは、驚きです。

僕は、てっきりフルガイアの民たちのほうが圧倒的に強いと思っていましたから。

ちょっとまずい状況だということを肝に命じておかなければ、なりませんね。


それからしばらくすると、テルミナの森の方角から大きな土煙が巻き上がっているのを確認できました。

もしかして、あれがテルミナの魔物なのでしょうか。

その土煙を上げながら近づく魔物たちの姿を確認した時、僕らには死の予感が脳裏を過りました。


「あ、あの数はやばいだろ。」


ローラスが発した言葉通り、テルミナの魔物の数は恐ろしいほどの大軍でした。


「皆、無理はするな。何とか押し返して、街の中へ入れなければそれでいい。」


そうは言っても、あの勢いです。

止めることすら困難な気がします。


「まずは、私が結界を張る。どこまでもつか分からないが、破られたら、頼んだぞ。」


僕らの他にもキリエスのフルガイアの民たちが数多くいます。

あの数といえども簡単には突破はできないと信じたいですね。


ディミトリさんは、強い魔力を放出して魔力のバリアを街全体に張り巡らしました。

これだけの規模の街を包んでしまうのですから、その魔力は絶大といえます。


「来るぞ!」


全員が身構え、戦闘態勢をとりました。

ところがです、魔物たちは街に到達しようとした寸前で、ぴたりと、その足を止めたではありませんか。

これは、ディミトリさんの魔法結界が効いているのでしょうか。


「と、止まった。お父さんが止めたの?」


「いや、違う。奴等が止まっただけだ。しかし、なぜ急に?」


テルミナの魔物たちは、足並みを揃える様に足を止めました。

すると、その魔物たちの先頭に一人の男が現れてきました。


見覚えのある男は、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってきました。で


「……アイス。」


「久しぶりですね、ディミトリ様。」


「お前がテルミナの者どもを操っているのか?」


「それには、お答えできません。それよりも、どうでしょう、おとなしく降伏されては。そうして頂ければ、我々も無理は致しませんよ。」


その口振りとは、裏腹にこれは明らかな脅迫ですよね。

そもそも、降伏したところで本当に身の安全を保障する気なんてあるのか疑わしいです。


「それは、お前にひれ伏せということなのか。」


「ええ。何も恥じることはありませんよ。フルガイアの猛者たちだってそうしてきたのですから。そうですよね、ゼイン。」


テルミナの魔物たちの合間を縫って現れたのは、色黒な巨漢の男でした。


「はい。俺はアイス様に仕えられて本望です。」


「ゼ、ゼイン!?まさか、お前までもがアイスに……。」


「かつてはフルガイアの覇者に一番近いとされていた、あのゼインが今や私の配下ですよ。そういう時代なのですよ、ディミトリ様。もはや、残るは貴方たちだけです。諦めなさい。」


「冗談ではないぞ。私は絶対に諦めん。アイスよ、お前がフルガイアの王になろうと、一向に構わん。だが、このキリエスだけは絶対に守る。私は心にそう誓っているのだ。」


さきほどから、レジェスやサーシャ様、フォックスまでもが、アイスの隙を常に狙っています。

アイス本人は、正直なところ隙だらけです。

不意をつけば、あっけなく討ち取れるかもしれません。

ですが、彼の側にいるゼインという男が問題です。

この男には、隙はありません。

もし、迂闊にもアイスを殺ろうと仕掛ければ、おそらくゼインに返り討ちにあうことは必須。

かなりの、やり手だと見受けられます。


「もし、降伏しないのであれば、一つ提案があります。」


「――提案?」


「私とディミトリ様の一騎討ちで勝敗を決めるというのは、如何でしょう?勝てば、今回は見逃してあげても構いません。しかし、負けたのならば潔くキリエスの街を明け渡して頂きましょう。」


これは、安易に受けないほうが良策といえます。

全盛期ならば可能性はあったかもしれませんが、今のディミトリさんは、人間界へ行く力さえなくしたと言っていました。

おそらく、そのことはアイスも既に折り込み済みでしょう。


「……断る。私では、お前には勝てない。」


「随分と素直ですね。分かりました。それでは、このゼインとならどうでしょう?条件は同じ。貴方が勝てば、我々は撤退しましょう。」


「それも無理だ。私は力を大きく失った。もう、お前たちのクラスとまともに戦うことは不可能だ。」


「それでは、キリエスを明け渡してもらいましょう。もう、それしかないようですしね。」


「それも断る。おとなしく帰れ、アイス。」


ディミトリさんも、なかなか頑固者ですね。

こういう所を見ていると、やはりサーシャ様と似通っている部分がありますね。


「ディミトリ様、相変わらずですね。ですが、子供の我が儘に付き合ってはいられないのです。そもそも、このフルガイアでは、力が全て。力のないものは淘汰されていくべきなのです。お忘れですか、ディミトリ様。」


「確かに、そうだった。だが、気づいたのだ。力だけが全てではないと。このキリエスでは、多くのフルガイアの民が暮らしている。私には力がないのに、ついてきてくれる者が大勢いるのだ。それが、何故なのかは、今のお前には到底理解できないだろうがね。」


「理解したくもありませんね。ただ分かったことは、ここにいる者は全て腑抜けた腰ぬけだということ。それで、どうするんです?解決策は、もうありませんよ。」


ディミトリさんは、この状況で口元に笑みを浮かべました。


「そんなことは決まっている。戦うんだ――皆でな!」


ふと見ると、キリエスに住むフルガイアの民たちが、いつの間にか集結していました。

その目には、はっきりと闘志がみなぎっていました。

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