102 / 132
ベティルス宮殿
しおりを挟む
ディミトリさん率いるキリエスの住人と、アイス率いるテルミナの化け物たちとの戦いが幕を開けようとしていました。
もちろん僕らも、その渦中にいます。
これは戦争です。
これだけの数の両者が衝突すれば、きっと甚大な被害を受けるのは免れないでしょう。
ここは、覚悟を決めるしかなさそうです。
「そこまでだ。」
そんな緊張感を破るように、その場に声が響き渡りました。
低く芯のある声は、僕らの体の芯に振動を与えるように通っていきました。
「――あ、兄上!?」
その男は、いつの間にかアイスの隣にいました。
黒い重厚な鎧に全身を包んでいて、その顔ですら隠されています。
「兄だと!?」
ディミトリさんは、アイスが発した言葉に引っ掛かっている様子でした。
「アイスよ。ここは一旦退くのだ。」
「な、なぜですか?ここで勝負を決めてしまえば、フルガイアの統一は果たされましょうぞ。」
「ならぬ。テルミナの者を無断で失う訳にはならんのだ。やつらが降伏すれば、それで良かったのだが、戦いとなれば話は別だ。よいな、弟よ。」
いったい何の話をしているのか、僕らにはさっぱり理解できません。
「分かりました。ここは、退きましょう。」
「うむ。それでよい。」
なんと!?
どうやら敵さんは、退却してくれるようです。
これはラッキーとしか言いようがありませんね。
「ま、待て!貴様はいったい何者だ?」
ディミトリさんは、アイスの兄らしき男に問いました。
「ふっ、お前は我らの会話を聞いていなかったのか?私はアイスの兄だ、ディミトリよ。」
「そんな話は聞いたことがない。アイスよ、お前に兄などいないだろう。どういうことなんだ。」
どうやら、ディミトリさんもアイスの兄については、何も知らないようです。
しかも二人の会話を聞いていると、真の黒幕はアイスではなく、この兄と名乗る男の方かもしれませんね。
「お前には関係のないこと。」
アイスは、多くを語ろうとはしませんでした。
「我らのことを詳しく知りたいのならば明日、ベティルス宮殿まで来たまえ、ディミトリ。」
「……ベティルス宮殿だと。」
「ああ。何人連れてこようが構わん。待っているぞ。」
こうして、大規模な戦いは何とか避けることができました。
しかし、想定外の事態になってしまったことには変わりありません。
「お父さん、ベティルス宮殿っていったい?」
「サーシャよ、他の者も聞いてくれ。ベティルス宮殿とは、このフルガイアとテルミナの境に位置する場所にある古代の宮殿の遺跡だ。そこは、パンドラへの入り口とも言われている。」
パンドラといえば、未知の地であり、昔ディミトリさんが行って、力を奪われた場所。
そんな所に呼び出されて、わざわざ出向く必要はないでしょう。
ここは、無視してキリエスの防衛に時間を割いたほうが得策でしょうね。
「行くのね、そのベティルス宮殿へ。」
サーシャ様の言葉にディミトリさんは無言で頷きました。
「どうしても納得いかないのだ。あのアイスに兄がいるなんて初耳だ。私は長い時間をアイスと過ごしてきた。この私を信頼してくれていた時も確かにあったはずだ。しかし、兄の話なんて一度たりとも聞いたことがない。もしかしたら、アイスはあいつに操られているのかもしれん。だとすれば、私はアイスを救ってやりたい。」
ディミトリさん、それは余りにもお人好し過ぎます。
もしも操られていたとしても、アイスは充分に万死に値する事をやってきたのですよ。
まあ、僕たちには関係のないことなので、どうでもいいんですがね。
「だったら、私も行くわ。きっと罠だろうから、お父さん一人を行かせられないわ。」
サ、サーシャ様?
本気でしょうか。
いや、本気でないことを祈るしかありません。
「私も共に行こう。あの男、かなりの強者と見た。腕が鳴るな。」
サーシャ様とレジェスの発言に他の皆も同意しました。
僕以外はね。
しかし、サーシャ様が行くと仰るのなら行かざるを得ません。
まったく面倒なことです。
「皆、すまん。私一人では心もとなかったというのが本音だ。助かる。」
確かに今のディミトリさんでは、まともにアイスとも戦えないでしょう。
仕方ありませんね。
「キリエスの民よ。我らはベティルス宮殿へ行ってくる。その間、ここを頼んだぞ。」
ディミトリさんに同行することになったのは、
サーシャ様、レジェス、ジャクリンさん、シエルさん、ローラス、ダマン、フォックス、そして僕の八人です。
きっとただでは済まないような戦いが待ち受けていることでしょう。
しかし、行くからには何としてもアイスの首を持ち帰るくらいの気持ちが必須です。
「はぁ、気が重い。」と、思わず本音が漏れてしまう、僕なのでした。
もちろん僕らも、その渦中にいます。
これは戦争です。
これだけの数の両者が衝突すれば、きっと甚大な被害を受けるのは免れないでしょう。
ここは、覚悟を決めるしかなさそうです。
「そこまでだ。」
そんな緊張感を破るように、その場に声が響き渡りました。
低く芯のある声は、僕らの体の芯に振動を与えるように通っていきました。
「――あ、兄上!?」
その男は、いつの間にかアイスの隣にいました。
黒い重厚な鎧に全身を包んでいて、その顔ですら隠されています。
「兄だと!?」
ディミトリさんは、アイスが発した言葉に引っ掛かっている様子でした。
「アイスよ。ここは一旦退くのだ。」
「な、なぜですか?ここで勝負を決めてしまえば、フルガイアの統一は果たされましょうぞ。」
「ならぬ。テルミナの者を無断で失う訳にはならんのだ。やつらが降伏すれば、それで良かったのだが、戦いとなれば話は別だ。よいな、弟よ。」
いったい何の話をしているのか、僕らにはさっぱり理解できません。
「分かりました。ここは、退きましょう。」
「うむ。それでよい。」
なんと!?
どうやら敵さんは、退却してくれるようです。
これはラッキーとしか言いようがありませんね。
「ま、待て!貴様はいったい何者だ?」
ディミトリさんは、アイスの兄らしき男に問いました。
「ふっ、お前は我らの会話を聞いていなかったのか?私はアイスの兄だ、ディミトリよ。」
「そんな話は聞いたことがない。アイスよ、お前に兄などいないだろう。どういうことなんだ。」
どうやら、ディミトリさんもアイスの兄については、何も知らないようです。
しかも二人の会話を聞いていると、真の黒幕はアイスではなく、この兄と名乗る男の方かもしれませんね。
「お前には関係のないこと。」
アイスは、多くを語ろうとはしませんでした。
「我らのことを詳しく知りたいのならば明日、ベティルス宮殿まで来たまえ、ディミトリ。」
「……ベティルス宮殿だと。」
「ああ。何人連れてこようが構わん。待っているぞ。」
こうして、大規模な戦いは何とか避けることができました。
しかし、想定外の事態になってしまったことには変わりありません。
「お父さん、ベティルス宮殿っていったい?」
「サーシャよ、他の者も聞いてくれ。ベティルス宮殿とは、このフルガイアとテルミナの境に位置する場所にある古代の宮殿の遺跡だ。そこは、パンドラへの入り口とも言われている。」
パンドラといえば、未知の地であり、昔ディミトリさんが行って、力を奪われた場所。
そんな所に呼び出されて、わざわざ出向く必要はないでしょう。
ここは、無視してキリエスの防衛に時間を割いたほうが得策でしょうね。
「行くのね、そのベティルス宮殿へ。」
サーシャ様の言葉にディミトリさんは無言で頷きました。
「どうしても納得いかないのだ。あのアイスに兄がいるなんて初耳だ。私は長い時間をアイスと過ごしてきた。この私を信頼してくれていた時も確かにあったはずだ。しかし、兄の話なんて一度たりとも聞いたことがない。もしかしたら、アイスはあいつに操られているのかもしれん。だとすれば、私はアイスを救ってやりたい。」
ディミトリさん、それは余りにもお人好し過ぎます。
もしも操られていたとしても、アイスは充分に万死に値する事をやってきたのですよ。
まあ、僕たちには関係のないことなので、どうでもいいんですがね。
「だったら、私も行くわ。きっと罠だろうから、お父さん一人を行かせられないわ。」
サ、サーシャ様?
本気でしょうか。
いや、本気でないことを祈るしかありません。
「私も共に行こう。あの男、かなりの強者と見た。腕が鳴るな。」
サーシャ様とレジェスの発言に他の皆も同意しました。
僕以外はね。
しかし、サーシャ様が行くと仰るのなら行かざるを得ません。
まったく面倒なことです。
「皆、すまん。私一人では心もとなかったというのが本音だ。助かる。」
確かに今のディミトリさんでは、まともにアイスとも戦えないでしょう。
仕方ありませんね。
「キリエスの民よ。我らはベティルス宮殿へ行ってくる。その間、ここを頼んだぞ。」
ディミトリさんに同行することになったのは、
サーシャ様、レジェス、ジャクリンさん、シエルさん、ローラス、ダマン、フォックス、そして僕の八人です。
きっとただでは済まないような戦いが待ち受けていることでしょう。
しかし、行くからには何としてもアイスの首を持ち帰るくらいの気持ちが必須です。
「はぁ、気が重い。」と、思わず本音が漏れてしまう、僕なのでした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる