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兄の過去
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ベティルス宮殿へ行くことになった僕ら一同は、テルミナの森の奥深くへと足を踏み入れて行きました。
僕は辺りを警戒していましたが、不思議と魔物達の気配は一切感じませんでした。
魔物が現れなければ、自然豊かなとても美しい森ですね。
心が落ち着きます。
僕が気を緩めていると突然、ディミトリさんの声が響き渡りました。
「見えたぞ。ベティルス宮殿だ。」
皆が一斉に視線を送った先には、宮殿と呼ぶにはあまりにも、かけ離れた、まるで今にも崩れさりそうな廃墟のような建物が不気味な存在感を放っていました。
緑の草に埋もれそうな、それの前には数人の人影が伺えます。
「よく来てくれましたね。お待ちしておりましたよ、ディミトリ様。」
そうやって出迎えたのは、アイスでした。
その隣にはアイスの兄と名乗った男もおります。
更に今回は、黒装束を纏いフードで顔を隠した者が他に七名、計十名の怪しい奴等が僕らを待っていました。
「それでは早速参りましょう。」
アイスはそう言ってベティルス宮殿の奥へと歩み始めました。
「待て、アイス。」
そう呼び止めたのはディミトリさんでした。
「何か?」
「我々をどこへ連れていくつもりだ。」
「そう焦らずとも、じきに分かりますよ。」
アイスは不敵な笑みを浮かべ言いました。
「――そうか焦ることもないのなら、是非そこの者に問いたい。」
ディミトリさんは、アイスの兄を指差しながら問い詰めるように言い放ちました。
「貴様は一体何者だ。名前くらい名乗ってもよいのではないか。」
するとアイスの兄は、こちらへ向き直り黒い重厚な兜の下から、低い声を出しました。
「――我が名は、モルドス。神々の奴隷だ。」
そう言って足を前に出しました。
そこには、鎧と同じく黒く重みのある足枷と鎖。
その先には大きな黒い鉄の玉。
それが両足に括りつけてあります。
その姿はまるで、どこかの囚人の様でした。
ただし、手には錠がされていません。
しかし、神々の奴隷とは一体?
「では、モルドス。貴様に聞きたい。アイスの兄を名乗る、お前は一体どこに居たのだ。アイスに兄がいるとは私は全く聞いたことがない。アイス自身が私に隠していたということも無いだろう。そんなことをしても何の意味もないはずだ。ということは、恐らくお前が、アイスの元に姿を見せたのは、アイスが私の元を去ってからだ。どうだ、違うか?」
ディミトリさんには、何か気付いたことがあるのでしょう。
根拠は分かりませんが、自信はありそうです。
「ふっ、残念だが少々違うな。我が弟の前に現れたのは、まだ弟がお前の配下にいる時だ。」
これには、さすがのディミトリさんも驚きを隠せない様子です。
「ほ、本当なのか、アイス!?」
アイスは、無言で軽く頷きました。
「まあ今更、何も隠す必要もないだろう。よかろう、少し我の事を、お前達に聞かせてやろう。」
アイスの兄、モルドスは兜をゆっくり脱ぎ、その顔を晒しました。
驚いたことにアイスと瓜二つではありませんか。
やはり兄弟だということは本当のようです。
そして更に驚いたのは、その目でした。
それは白濁した眼球。
恐らく視界は完全に閉ざされているのでしょう。
「我は生まれつき目が見えなかった。そのことで両親からは、疎まれていた存在だった。」
何だか哀れですね。
「そして弟、アイスが生まれると我は親に捨てられた。その捨てられた先は――パンドラだった。」
これには皆が驚きを隠せませんでした。
「我らの両親は、ここベティルス宮殿へと忍び入り、ここに我を捨てた。そして聞いたのだ、神のお告げを。」
「お告げ?お前は神の奴隷と自分のことを呼んだ。そして今回は神のお告げと言った。その神とは、一体何なのだ?」
ディミトリさんの仰る通りです。
この男の呼ぶ「神」とは、何なのでしょう。
これは、ちょっと話の潮目が変わってきていますね。
「神とは、すなわちパンドラのことだ。そして我はパンドラの奴隷。貴様たちが何と言おうとも決して覆ることのない真実なのだ。」
もしも奴が言っていることが正しければ、僕たちは神をも敵にまわさなければならない、ということになるのでしょうか。
「モルドスよ、お前が何者であろうと構わん。お前の目的は何だ?捨てられた腹いせにフルガイアに復讐しようとでも言うのか。それならば筋違いにも程があるぞ。」
全くその通りです。
ディミトリさん、モルドスを完全に論破しちゃってください。
「復讐?くだらん。我の望みは神々の望みなのだ。貴様らは神に抗おうとしているのだ。」
これはちょっと話しになりませんね。
この男は、かなり頭がいっちゃっているのでしょう。
ここは相手にせず、逃げるのも一手だと僕は思います。
「そろそろ話しは終いだ。お前達に覚悟があるのならば我らについてこい。まあ、来なければフルガイアは我らの手中に収まったと解釈するがな。」
「上等だ。さっさと何処へでも案内するのだ。」
先陣をきってレジェスが歩み出ました。
それに僕たちも続きます。
恐らく、この中で一番足取りが重かったのは、きっと僕でしょう。
不気味な雰囲気のベティルス宮殿の奥へと僕たち一団が吸い込まれるようにして、奥へと進んでいきました。
僕は辺りを警戒していましたが、不思議と魔物達の気配は一切感じませんでした。
魔物が現れなければ、自然豊かなとても美しい森ですね。
心が落ち着きます。
僕が気を緩めていると突然、ディミトリさんの声が響き渡りました。
「見えたぞ。ベティルス宮殿だ。」
皆が一斉に視線を送った先には、宮殿と呼ぶにはあまりにも、かけ離れた、まるで今にも崩れさりそうな廃墟のような建物が不気味な存在感を放っていました。
緑の草に埋もれそうな、それの前には数人の人影が伺えます。
「よく来てくれましたね。お待ちしておりましたよ、ディミトリ様。」
そうやって出迎えたのは、アイスでした。
その隣にはアイスの兄と名乗った男もおります。
更に今回は、黒装束を纏いフードで顔を隠した者が他に七名、計十名の怪しい奴等が僕らを待っていました。
「それでは早速参りましょう。」
アイスはそう言ってベティルス宮殿の奥へと歩み始めました。
「待て、アイス。」
そう呼び止めたのはディミトリさんでした。
「何か?」
「我々をどこへ連れていくつもりだ。」
「そう焦らずとも、じきに分かりますよ。」
アイスは不敵な笑みを浮かべ言いました。
「――そうか焦ることもないのなら、是非そこの者に問いたい。」
ディミトリさんは、アイスの兄を指差しながら問い詰めるように言い放ちました。
「貴様は一体何者だ。名前くらい名乗ってもよいのではないか。」
するとアイスの兄は、こちらへ向き直り黒い重厚な兜の下から、低い声を出しました。
「――我が名は、モルドス。神々の奴隷だ。」
そう言って足を前に出しました。
そこには、鎧と同じく黒く重みのある足枷と鎖。
その先には大きな黒い鉄の玉。
それが両足に括りつけてあります。
その姿はまるで、どこかの囚人の様でした。
ただし、手には錠がされていません。
しかし、神々の奴隷とは一体?
「では、モルドス。貴様に聞きたい。アイスの兄を名乗る、お前は一体どこに居たのだ。アイスに兄がいるとは私は全く聞いたことがない。アイス自身が私に隠していたということも無いだろう。そんなことをしても何の意味もないはずだ。ということは、恐らくお前が、アイスの元に姿を見せたのは、アイスが私の元を去ってからだ。どうだ、違うか?」
ディミトリさんには、何か気付いたことがあるのでしょう。
根拠は分かりませんが、自信はありそうです。
「ふっ、残念だが少々違うな。我が弟の前に現れたのは、まだ弟がお前の配下にいる時だ。」
これには、さすがのディミトリさんも驚きを隠せない様子です。
「ほ、本当なのか、アイス!?」
アイスは、無言で軽く頷きました。
「まあ今更、何も隠す必要もないだろう。よかろう、少し我の事を、お前達に聞かせてやろう。」
アイスの兄、モルドスは兜をゆっくり脱ぎ、その顔を晒しました。
驚いたことにアイスと瓜二つではありませんか。
やはり兄弟だということは本当のようです。
そして更に驚いたのは、その目でした。
それは白濁した眼球。
恐らく視界は完全に閉ざされているのでしょう。
「我は生まれつき目が見えなかった。そのことで両親からは、疎まれていた存在だった。」
何だか哀れですね。
「そして弟、アイスが生まれると我は親に捨てられた。その捨てられた先は――パンドラだった。」
これには皆が驚きを隠せませんでした。
「我らの両親は、ここベティルス宮殿へと忍び入り、ここに我を捨てた。そして聞いたのだ、神のお告げを。」
「お告げ?お前は神の奴隷と自分のことを呼んだ。そして今回は神のお告げと言った。その神とは、一体何なのだ?」
ディミトリさんの仰る通りです。
この男の呼ぶ「神」とは、何なのでしょう。
これは、ちょっと話の潮目が変わってきていますね。
「神とは、すなわちパンドラのことだ。そして我はパンドラの奴隷。貴様たちが何と言おうとも決して覆ることのない真実なのだ。」
もしも奴が言っていることが正しければ、僕たちは神をも敵にまわさなければならない、ということになるのでしょうか。
「モルドスよ、お前が何者であろうと構わん。お前の目的は何だ?捨てられた腹いせにフルガイアに復讐しようとでも言うのか。それならば筋違いにも程があるぞ。」
全くその通りです。
ディミトリさん、モルドスを完全に論破しちゃってください。
「復讐?くだらん。我の望みは神々の望みなのだ。貴様らは神に抗おうとしているのだ。」
これはちょっと話しになりませんね。
この男は、かなり頭がいっちゃっているのでしょう。
ここは相手にせず、逃げるのも一手だと僕は思います。
「そろそろ話しは終いだ。お前達に覚悟があるのならば我らについてこい。まあ、来なければフルガイアは我らの手中に収まったと解釈するがな。」
「上等だ。さっさと何処へでも案内するのだ。」
先陣をきってレジェスが歩み出ました。
それに僕たちも続きます。
恐らく、この中で一番足取りが重かったのは、きっと僕でしょう。
不気味な雰囲気のベティルス宮殿の奥へと僕たち一団が吸い込まれるようにして、奥へと進んでいきました。
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