最強の戦士ここにあり

田仲真尋

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魔王再び~前編~

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(魔王再び降臨!)

その張り紙を見つけたのは、レガリアより北へ三日程歩いた場所にある、クレイヴ王国領の街ローズ・ガーデンである。

この街は普段は静かで平和な所である。

名前通り、街の至る所には色とりどりの薔薇が植えられている。

そんな、花の匂いに包まれたローズ・ガーデンは現在、魔王の話しで持ちきりであった。

「またか……どうすればいいんだ」

「今度こそ駄目かもしれない……」

人々は不安感で、いっぱいの様子だった。

そんな中、希望を口にする者もいた。

「大丈夫だ。またクレアたちが倒してくれるさ。」

「しかしクレアはレガリアの王になったと聞いたぞ。」

「俺も聞いた。レガリアの王ならば、この国の為には動かないだろう。」

「確かに。魔王は北からやってくるんだ。最初に襲われるのは、きっとこの街だ。」

「それが本当なら、早く逃げなきゃ。」

「いや、まだ希望はある。」

その一人の男の言葉に、皆が注目した。

「この街にはクッキーがいるだろ。」

私は、その名前にすぐさま反応した。

「クッキー!……あいつか?」

それは前回の魔王討伐の際、クレアのパーティーで一緒だった魔法使いの男だ。

「ちょうど今、あそこの酒場で人を集めて何かやっているらしいぞ。」

私は隣の男達の話を聞いて、その酒場へと足を向けた。



「いいですか皆さん。魔王というのは恐ろしく強いです。ですが、皆さんの力を合わせれば必ず倒せるはずです。僕の故郷でもある、この街を守るため僕と一緒に魔王を倒しませんか。」

ここは、あいつの地元であったか。

それにしても……安っぽい演説である。



酒場には沢山の人が詰めかけていた。

だが、クッキーに賛同し、共に行こうという人間はいなかった。

クッキーは、困り果てている様子だ。

そして私は、閃いた!

「これは、絶好のチャンスだ!前回は、おいしいところをクレアに全部持っていかれたが、今回は私の番だ。」

私は、すぐさま行動に出た。

クッキーなど放っておいて、速やかに酒場を後にし、手早く木の看板を作った。

「よし!これで準備万端だ。」

(魔王討伐隊員、急募。私の下僕になりたい者は集合せよ!)

――三〇分経過。

「くそ!見向きもされない。」

――二時経過。

私は無言で木の看板を破壊した。

「どうしたものか……この際、一人で片付けてくるか……いや、駄目だ。それだと証人がいない。」

私が一人考えこんでいると突然、街中に軍勢が現れた。


「我らはクレイヴ王国の薔薇の騎士団である。皆も承知だと思うが、我が国は窮地に晒されている。この国を、そしてこの街を守るため、共に我らと魔王討伐に出陣してくれる者を、これより募集する。我こそは、と思う者があれば前に出よ。」


突然始まった、クレイヴ王国正規軍の隊員募集に私は、ため息を吐いた。

私の募集が先だったのに……邪魔をするな、と言いたい。

しかし、ここで閃いた。

今日の私は冴えているようだ。

「そうだ!いっそのこと、この騎士団と共に行けばいいのだ。そうすれば、私の活躍を何百という騎士達に見せつけれるでは、ないか。」

そう思った私の行動は疾風のごとし、である。

手を挙げ騎士団の前に、堂々と姿を見せてやった。

すると、人々から歓声が巻き起こる。

思いがけない出来事に私は、上機嫌になった。

「もしかして私の知名度は、自分自身では気づかぬ間に上昇しまくっているのではないか。」

そう考えれば、この大歓声も納得いく。

「クッキーさんだ!」

「クッキー様が薔薇の騎士団と共に行ってくれるのなら、安心だ。」

結局、クッキーの人集めは不発に終わったようだ。

ばつが悪そうな顔でクッキーは騎士団に合流した。

「おのれクッキーめ。」

私はクッキーから距離をとり、奴を睨みつけてやった。



ようやく騎士団の募集も締め切りになった。

この街で集まったのは、私とクッキーを含め二十人程であった。

これで薔薇の騎士団に入団できる訳ではない、ということを踏まえると、よく集まったほうだろう。

私はソワソワと落ち着きなく、その辺りをウロウロとしていた。

もちろんクッキーには、見つからないようにである。

「大変だ、大変だ!魔王軍が攻めて来た!」

街は一瞬にして騒然とする。

騎士団は、すぐに戦闘準備に入った。

「ほう。今度の魔王は軍勢を持っているのか。フフフ、燃えてきたぞ!」

街に向かい進行してくる魔王軍は、およそ八百。

対する薔薇の騎士団は、およそ三百。

しかも、奴等は人ではない。

一体一体が戦闘力の高い魔物である。

騎士団は街を出て魔王軍を迎え討つ。

私は剣を抜き、戦闘体制をとった。



――数十分後。

戦況は不利な状況が続いていた。

薔薇の騎士団は、魔王軍を何とか街に入れないよう奮闘していた。

もちろん私も激闘中である。

恐らく一人で一五〇は倒したのでは、なかろうか。

それでも戦況は、好転しない。

「――雨だ。」

誰かが、そう呟いた。

その時、後方から魔法支援していたクッキーが最前線へと躍り出た。

「みんな下がって。」

そう言って、クッキーは魔法を唱え始めた。

「レイン・ローズ」

雨は集まり、そして薔薇に姿を変えた。

薔薇の先端は矢の様に鋭くなる。

そして無数の薔薇が敵を仕留めた。

「おお!クッキー様。」

「雨が我らに見方した。クッキー様万歳!」

バタバタと倒れる魔物たち。

しかし、それでも魔物は突進してくる。

「ハァハァ……くそ、まだ退かないのか。」

クッキーは、レイン・ローズを三度放ったが敵の勢いは弱まることを知らない。

そして、クッキーの魔力は底をつく寸前であった。



その頃、私はクッキーの魔法に心を奪われていた。

「美しい魔法だ……いかん、いかん。人の魔法に気をとられている場合ではない。……や、やってみようかな。」

咄嗟に、そう思った。

別に人の魔法をパクるとか、そういうのではない……断じてない。

私は、見よう見まねで唱えた、

「レイン・ローズ!」

思ったより簡単だ。

これなら雨が降っていなくても使えそうだ。

私が放ったレイン・ローズはクッキーの、それより凄まじい威力だった。

「うおぉ!す、すごい。クッキー様、お見事です。」

「見ろ!遂に奴等が後退していくぞ!」

「クッキー様、万歳!」

魔王軍は撤退を余儀なくされた。

クッキーは驚いた表情で辺りを見回していた。

そして、

「ああ!君は……そうか君だったか。」

私は素知らぬ顔で、すっとぼけた顔をした。

雨は何時しか止み、雲の合間からは陽の光りが射し込んでいた。

薔薇の騎士団は甚大な被害を負っていた。

それでも、街の為に戦った彼らは勇敢であり英雄である。

私は、この先に待つ魔王軍との熾烈な戦いを、この時はまだ予想だにしていなかった。

風が土埃を巻き上げ強く吹いていた。

皆が束の間の勝利に浸っていた。



(後編につづく。)

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