57 / 67
グリフォンブルー 死闘編~Ⅲ部~
しおりを挟む
「ご気分はいかがでやすか?」
私はうっすらとした意識の中、アンダーヘアーの問いかけに頷いて応えた。
少しばかり意識を失っていたのだろうか、気がつくと私は木に、もたれかかり木陰に座っていた。
恐らくは、ほんの僅かな時間だったはずだが、不思議と頭の痛みは全く無くなっていた。
あれほどの激痛だったのが嘘みたいである。
私は立ち上がり、アンダーヘアーと共にデヴァイン城へ向け、再び歩みだした。
私たちは目立たぬよう、メインストリートから脇に逸れた小路をひっそりと歩いた。
その道を歩くこと、数分後のことだった。
私の前を歩くアンダーヘアーが突然声を上げた、
「なんじゃ、あれは?」と。
見てみると、道の真ん中に何やら大きな障害物がある。
落石でもあるのだろうか?と、周囲を見回すが、どうやら違うようである。
少しづつ近寄っていくとようやく、それが人だということに気がついた。
その大きさに私は、
「まるで巨人ではないか!」と、目を丸くしたほどだった。
「こいつぁ六牙将軍の一人、ファットですぜ、レジェス様。」
アンダーヘアーの声で、やっとファットは私たちの存在に気づいた様子である。
「あっ!本当に来た。やっぱりブラッドの言うことは間違いないんだな、うん。」
「ブ、ブラッド様の入れ知恵か。こいつぁ厄介ではありやすが、ラッキーでもありやすぜ。ここにブラッド様が直接やって来ていたら、なす術がありやせんが、このファットなら何とかなるやも、しれやせん。なにせ、この太っちょは六牙将軍の中で最弱。あっしにお任せあれ!」
アンダーヘアーは勢いよく飛び出し、剣を振りかざしファットに突進した。
私は、ものすごく不安であったがアンダーヘアーを信じてみた。
「おりゃぁあ!――ギャフン!」
アンダーヘアーは敢えなくファットの強烈な平手打ちにあい、吹き飛んで戻ってきた。
「すいやせん!やっぱ、あっしには無理でした!」と、アンダーヘアーは体育会系ばりに、頭を下げた。
「ここは私の出番だな。すぐに終わらせてくれよう。」と、私は低級魔法「パンチャー」を唱え、強化した拳でファットに殴りかかった。
私の俊敏な動きにファットは、やはりついてこれない。
ファットの懐に入った私は強烈なパンチを、がら空きの腹に打ち込んでやった。
しかしファットは、
「……ん?なに?」と、まるで効いていない様子だ。
「ば、ばかな!完璧に鳩尾に入ったというのに。」と、私は信じられなかった。
「もう、終わりなの?」というファットの言葉は、私の神経を逆撫でした。
「上等だ!この太っちょめ!私の本気を見せてやる!」と、私は上級魔法の提唱に入った。
「ああ、レジェス様!こんな奴に力を使ってしまっては、いけやせん!この後には、まだ強力な奴らがいるんですから!」と、アンダーヘアーは慌てて私を止めに入った。
しかし私は、退くつもりはない。
どのみち、ここを通らねばならないのだ。
さっさと、この太っちょを倒すのが先決である、と私は突き進んだ。
「ばか者!冷静にならんか!」
突然聞こえてきた、その声に私は凍りついたように動きを止めた。
「こ、この声は……。」と、私は声がした方を恐る恐る見た。
「ハ、ハーブティーだ!」と、私は取り乱した。
「落ち着け!と、言っておるだろうが。」と、ハーブティーは私に拳骨をお見舞いした。
「相変わらずだな、お前は。」
「本当本当、変わらないね。」
私の目の前には恐怖のハーブティーの他に、二人の懐かしい顔がいた。
――クレアとクッキーだ。
「お前には色々と世話になったからな。今度は私が助けてるぞ。」
「礼は要らないよ。僕たちは仲間だからね。でも一応、貸しだからね。」
私は自然と笑顔が溢れた――若干、クッキーの物言いには棘を感じるが、まあそれは置いておこう。
「さて、じゃあやろうか。お前は過去との因縁に決着をつけてこい。」と、ハーブティーは言った。
私はハーブティーに深々と頭を下げた。
「気にするな。お前は私の可愛い弟子だ。早く行け。」
そう自然に口にするハーブティーを、私は自然と心から尊敬できた初の瞬間だった。
「クッキー、奴の腕を封じるぞ。」
「はい師匠。」
ハーブティーとクッキーは同時に魔法を唱えた。
「ワイヤー!」
「ワイヤー!」
二人のワイヤーがファットの両腕に絡みつき自由を奪った。
「今だ!行け!」
私とアンダーヘアーはファットの両脇をすり抜けるようにして、走り抜けた。
「みんな。どうか無事で。」と、心から願いながら、私は走ったのであった。
――こちらは、ギャツビー対アーキュラの戦場。
「ギャツビーよ。こちらは我らに任せておけ。お前は存分に戦うがよい。」
「オリオス様。お言葉に甘えさせて頂きます。」
ギャツビーとアーキュラは一騎討ちとなり、残りの百人程のグリフォンブルー兵は、四大剣士が相手をすることになった。
「それでは思う存分に暴れさせてもらうとしよう。」と、まずは剣帝クラブが剣を抜いた。
「天剣ヘブンズショット!」
クラブの攻撃にグリフォンブルーの兵士たちは防御する間もなく、バタバタと倒れていく。
「それじゃあ私も。」と、ロザリアも剣を抜く。
「フェザーグリッター!」
ロザリアは華麗に舞うように敵を翻弄し、倒していく。
「……いくぞ……」と、邪気を含む剣を抜いたのは、ジェイソンだ。
「……邪剣皆殺し!」
ジェイソンは人が変わったように輝きを増し始めた。
「フハハハ!死ね死ね死ね!」と、何かに憑かれた様に敵を倒していく。
「……相変わらず恐ぇ奴だな。よし、気を取り直して次は俺がいこう。」と、オリオスは剣を抜く。
「ゆくぞ!我が剣技、ムーライトセレナーデ。」
オリオスは優雅に、そして美しく敵を倒していく。
「オリオスの技はメルヘンチックだね。まるで乙女が繰り出す剣技みたいだわ。」と、ロザリアが皮肉交じりに呟いた。
「ば、ばかなことを言うな!俺の剣は芸術だ。お前らみたいな雑な剣技とは一味違うのだ。」と、オリオスは怒った。
「それは聞き捨てならんな。」
「ええ、本当。誰の剣が雑ですって。」
「……貴様も殺す。」
オリオスの一言から、四人は一触即発状態になってしまった。
「ギャツビー。お前の師匠たちは仲間割れを始めたぞ。」と、アーキュラは口許に薄く笑みを浮かべて言った。
だが、ギャツビーは慌てることなく、
「構わんさ。いつものことだ。それに見てみろ。」と、冷静に返した。
アーキュラはギャツビーに注意を払いながら、チラッとオリオスたちを見た。
アーキュラの瞳に映った光景は、彼が予想だにしなかったものだった。
「お前は、いつもそうだ。このナルシストめ!」
「そんなんだから、女の子にもてないのよ!」
「死ね!オリオス!」
「まとめてかかって来い!雑魚どもが!」
レトの四大剣士は、激しく火花を散らしながら剣を交えていた。
しかし、彼らは互いに戦いながらも、周囲のグリフォンブルーの兵士を確実に倒していた。
グリフォンブルーの兵たちは、四人の戦いに巻き込まれるようにして、訳が分からないままに討ち取られていたのである。
そして気がつけば、アーキュラの配下のグリフォンブルー兵は全滅してしまっていた。
ようやく四人の戦いも収まり、
「ギャツビー、こっちは終わったぞ。我らは先に行くが、そいつは任せてよいか。」
「オリオス様。問題ありません。先に行ってください。」
そのギャツビーの言葉が発せられると同時にアーキュラは動いた。
「ここを通す訳にはいかぬ!」と、アーキュラはオリオスに斬りつけた。
しかし、ギャツビーもまたアーキュラの動きに合わせて動いていた。
「お前の相手は私だ。最初の立場とは、まるで逆になってしまったな、アーキュラ。」
「くっ!ギャツビー。」
その間にオリオスら四人は先を急ごうと橋を渡りきった。
だが、そのオリオスたちを待ち構えている者たちがいた。
「どうやら間に合ったようですな、アーキュラ様。」
「助太刀に参りましたぞ。」
ラッシュ兄弟が軍勢を率いて、現れたのだ。
「ブラッドの差し金か。余計な真似を。」と、アーキュラは吐き捨てるように言った。
「また敵が増えてしまったな。」
「うっとしい奴らだ。」
「いくら来ても私たちには敵わないのにね。」
「……フフフ……また皆殺しだ。」
オリオスたち四大剣士は、すぐに戦闘を開始した。
「こちらも、さっさと決着をつけようか、アーキュラ。」
「望むところ!」
ギャツビーとアーキュラの闘いは熾烈をきわめた。
「王の制裁キングサンクション!」
「赤い牙レッドファング!」
互いの剣が折れんばかりの攻撃を二人は繰り出していく。
「――ギャツビーよ、貴様は何故グリフォンブルーを捨てた!?」
「それは前にも言っただろう、アーキュラよ!」
「そうか。やはりウェル様が国王になるのが許せぬ、ということか。」
「当然だ。本来ならレジェス様が正統な世継ぎだ。それに、もしもレジェス様がいなかったとしても、次に継承権を持つのはサファイア様の筈だ。それを、あのメルバ女王は己の保身の為に王を、たぶらかし、挙げ句のはてにはレジェス様を亡き者にまでしようとした、反逆者だぞ!そんな女狐に操られてしまった国王様の元では、私は働けない。お前は、どうなのだアーキュラよ!」
「俺は……俺は国王様に忠誠を誓った。国王様の意思こそが、このグリフォンブルーの全て。貴様とは、違うのだギャツビー。」
アーキュラの剣は凄まじかったが、ギャツビーは見抜いていた。
それはアーキュラの剣に、どこか迷いがあるということを、とっくに見抜いていた。
それは、まるでギャツビーに倒してくれと、言っているようにさえ思えた。
そして二人の勝負は、あっさりとついた。
「ぐっ!……さすがだ、ギャツビー。」
「アーキュラ、私は勝ったとは思っていない。いや、むしろ託されたと、受け取ってよいな?」
アーキュラは、笑みを浮かべ頷いた。
「ギャツビー、一つだけ言わせてくれ。この国には女狐の他に二人の魔物が住み着いている。グリフォンブルーの本当の敵は、そいつらだ。お前なら分かるよな――友よ。」
「ああ、分かっている。お前は、そこで休んでいろ。」
ギャツビーは去り際に一言、アーキュラの方は見ずに呟いた。
「この一件が終わったら、久しぶりに一杯やろうぞ。」
アーキュラは、こちらを見ていないギャツビーに対して静かに頷いた。
「我らが……負けるなんて。」
「ば、ばかな……強すぎる……。」
ラッシュ兄弟を最後に、援軍に来たグリフォンブルー兵は既に全滅していた。
「よし、今度こそ終わりだろ。」
「もう帰りてぇな。」
「何、言ってるのよクラブ。まだレジェスちゃん達は戦っているのよ。師匠である私たちが最後まで見届けなくて、どうするのよ。」
「……まだ殺り足りない……。」
「オリオス様。こちらも終わりました。さあ、レジェス様の元へ急ぎましょう。」
ギャツビーと四大剣士も、またデヴァイン城へと向かい歩み始めた。
最終決戦の足音が、季節の移ろいの様に刻々と近づいていた。
私はうっすらとした意識の中、アンダーヘアーの問いかけに頷いて応えた。
少しばかり意識を失っていたのだろうか、気がつくと私は木に、もたれかかり木陰に座っていた。
恐らくは、ほんの僅かな時間だったはずだが、不思議と頭の痛みは全く無くなっていた。
あれほどの激痛だったのが嘘みたいである。
私は立ち上がり、アンダーヘアーと共にデヴァイン城へ向け、再び歩みだした。
私たちは目立たぬよう、メインストリートから脇に逸れた小路をひっそりと歩いた。
その道を歩くこと、数分後のことだった。
私の前を歩くアンダーヘアーが突然声を上げた、
「なんじゃ、あれは?」と。
見てみると、道の真ん中に何やら大きな障害物がある。
落石でもあるのだろうか?と、周囲を見回すが、どうやら違うようである。
少しづつ近寄っていくとようやく、それが人だということに気がついた。
その大きさに私は、
「まるで巨人ではないか!」と、目を丸くしたほどだった。
「こいつぁ六牙将軍の一人、ファットですぜ、レジェス様。」
アンダーヘアーの声で、やっとファットは私たちの存在に気づいた様子である。
「あっ!本当に来た。やっぱりブラッドの言うことは間違いないんだな、うん。」
「ブ、ブラッド様の入れ知恵か。こいつぁ厄介ではありやすが、ラッキーでもありやすぜ。ここにブラッド様が直接やって来ていたら、なす術がありやせんが、このファットなら何とかなるやも、しれやせん。なにせ、この太っちょは六牙将軍の中で最弱。あっしにお任せあれ!」
アンダーヘアーは勢いよく飛び出し、剣を振りかざしファットに突進した。
私は、ものすごく不安であったがアンダーヘアーを信じてみた。
「おりゃぁあ!――ギャフン!」
アンダーヘアーは敢えなくファットの強烈な平手打ちにあい、吹き飛んで戻ってきた。
「すいやせん!やっぱ、あっしには無理でした!」と、アンダーヘアーは体育会系ばりに、頭を下げた。
「ここは私の出番だな。すぐに終わらせてくれよう。」と、私は低級魔法「パンチャー」を唱え、強化した拳でファットに殴りかかった。
私の俊敏な動きにファットは、やはりついてこれない。
ファットの懐に入った私は強烈なパンチを、がら空きの腹に打ち込んでやった。
しかしファットは、
「……ん?なに?」と、まるで効いていない様子だ。
「ば、ばかな!完璧に鳩尾に入ったというのに。」と、私は信じられなかった。
「もう、終わりなの?」というファットの言葉は、私の神経を逆撫でした。
「上等だ!この太っちょめ!私の本気を見せてやる!」と、私は上級魔法の提唱に入った。
「ああ、レジェス様!こんな奴に力を使ってしまっては、いけやせん!この後には、まだ強力な奴らがいるんですから!」と、アンダーヘアーは慌てて私を止めに入った。
しかし私は、退くつもりはない。
どのみち、ここを通らねばならないのだ。
さっさと、この太っちょを倒すのが先決である、と私は突き進んだ。
「ばか者!冷静にならんか!」
突然聞こえてきた、その声に私は凍りついたように動きを止めた。
「こ、この声は……。」と、私は声がした方を恐る恐る見た。
「ハ、ハーブティーだ!」と、私は取り乱した。
「落ち着け!と、言っておるだろうが。」と、ハーブティーは私に拳骨をお見舞いした。
「相変わらずだな、お前は。」
「本当本当、変わらないね。」
私の目の前には恐怖のハーブティーの他に、二人の懐かしい顔がいた。
――クレアとクッキーだ。
「お前には色々と世話になったからな。今度は私が助けてるぞ。」
「礼は要らないよ。僕たちは仲間だからね。でも一応、貸しだからね。」
私は自然と笑顔が溢れた――若干、クッキーの物言いには棘を感じるが、まあそれは置いておこう。
「さて、じゃあやろうか。お前は過去との因縁に決着をつけてこい。」と、ハーブティーは言った。
私はハーブティーに深々と頭を下げた。
「気にするな。お前は私の可愛い弟子だ。早く行け。」
そう自然に口にするハーブティーを、私は自然と心から尊敬できた初の瞬間だった。
「クッキー、奴の腕を封じるぞ。」
「はい師匠。」
ハーブティーとクッキーは同時に魔法を唱えた。
「ワイヤー!」
「ワイヤー!」
二人のワイヤーがファットの両腕に絡みつき自由を奪った。
「今だ!行け!」
私とアンダーヘアーはファットの両脇をすり抜けるようにして、走り抜けた。
「みんな。どうか無事で。」と、心から願いながら、私は走ったのであった。
――こちらは、ギャツビー対アーキュラの戦場。
「ギャツビーよ。こちらは我らに任せておけ。お前は存分に戦うがよい。」
「オリオス様。お言葉に甘えさせて頂きます。」
ギャツビーとアーキュラは一騎討ちとなり、残りの百人程のグリフォンブルー兵は、四大剣士が相手をすることになった。
「それでは思う存分に暴れさせてもらうとしよう。」と、まずは剣帝クラブが剣を抜いた。
「天剣ヘブンズショット!」
クラブの攻撃にグリフォンブルーの兵士たちは防御する間もなく、バタバタと倒れていく。
「それじゃあ私も。」と、ロザリアも剣を抜く。
「フェザーグリッター!」
ロザリアは華麗に舞うように敵を翻弄し、倒していく。
「……いくぞ……」と、邪気を含む剣を抜いたのは、ジェイソンだ。
「……邪剣皆殺し!」
ジェイソンは人が変わったように輝きを増し始めた。
「フハハハ!死ね死ね死ね!」と、何かに憑かれた様に敵を倒していく。
「……相変わらず恐ぇ奴だな。よし、気を取り直して次は俺がいこう。」と、オリオスは剣を抜く。
「ゆくぞ!我が剣技、ムーライトセレナーデ。」
オリオスは優雅に、そして美しく敵を倒していく。
「オリオスの技はメルヘンチックだね。まるで乙女が繰り出す剣技みたいだわ。」と、ロザリアが皮肉交じりに呟いた。
「ば、ばかなことを言うな!俺の剣は芸術だ。お前らみたいな雑な剣技とは一味違うのだ。」と、オリオスは怒った。
「それは聞き捨てならんな。」
「ええ、本当。誰の剣が雑ですって。」
「……貴様も殺す。」
オリオスの一言から、四人は一触即発状態になってしまった。
「ギャツビー。お前の師匠たちは仲間割れを始めたぞ。」と、アーキュラは口許に薄く笑みを浮かべて言った。
だが、ギャツビーは慌てることなく、
「構わんさ。いつものことだ。それに見てみろ。」と、冷静に返した。
アーキュラはギャツビーに注意を払いながら、チラッとオリオスたちを見た。
アーキュラの瞳に映った光景は、彼が予想だにしなかったものだった。
「お前は、いつもそうだ。このナルシストめ!」
「そんなんだから、女の子にもてないのよ!」
「死ね!オリオス!」
「まとめてかかって来い!雑魚どもが!」
レトの四大剣士は、激しく火花を散らしながら剣を交えていた。
しかし、彼らは互いに戦いながらも、周囲のグリフォンブルーの兵士を確実に倒していた。
グリフォンブルーの兵たちは、四人の戦いに巻き込まれるようにして、訳が分からないままに討ち取られていたのである。
そして気がつけば、アーキュラの配下のグリフォンブルー兵は全滅してしまっていた。
ようやく四人の戦いも収まり、
「ギャツビー、こっちは終わったぞ。我らは先に行くが、そいつは任せてよいか。」
「オリオス様。問題ありません。先に行ってください。」
そのギャツビーの言葉が発せられると同時にアーキュラは動いた。
「ここを通す訳にはいかぬ!」と、アーキュラはオリオスに斬りつけた。
しかし、ギャツビーもまたアーキュラの動きに合わせて動いていた。
「お前の相手は私だ。最初の立場とは、まるで逆になってしまったな、アーキュラ。」
「くっ!ギャツビー。」
その間にオリオスら四人は先を急ごうと橋を渡りきった。
だが、そのオリオスたちを待ち構えている者たちがいた。
「どうやら間に合ったようですな、アーキュラ様。」
「助太刀に参りましたぞ。」
ラッシュ兄弟が軍勢を率いて、現れたのだ。
「ブラッドの差し金か。余計な真似を。」と、アーキュラは吐き捨てるように言った。
「また敵が増えてしまったな。」
「うっとしい奴らだ。」
「いくら来ても私たちには敵わないのにね。」
「……フフフ……また皆殺しだ。」
オリオスたち四大剣士は、すぐに戦闘を開始した。
「こちらも、さっさと決着をつけようか、アーキュラ。」
「望むところ!」
ギャツビーとアーキュラの闘いは熾烈をきわめた。
「王の制裁キングサンクション!」
「赤い牙レッドファング!」
互いの剣が折れんばかりの攻撃を二人は繰り出していく。
「――ギャツビーよ、貴様は何故グリフォンブルーを捨てた!?」
「それは前にも言っただろう、アーキュラよ!」
「そうか。やはりウェル様が国王になるのが許せぬ、ということか。」
「当然だ。本来ならレジェス様が正統な世継ぎだ。それに、もしもレジェス様がいなかったとしても、次に継承権を持つのはサファイア様の筈だ。それを、あのメルバ女王は己の保身の為に王を、たぶらかし、挙げ句のはてにはレジェス様を亡き者にまでしようとした、反逆者だぞ!そんな女狐に操られてしまった国王様の元では、私は働けない。お前は、どうなのだアーキュラよ!」
「俺は……俺は国王様に忠誠を誓った。国王様の意思こそが、このグリフォンブルーの全て。貴様とは、違うのだギャツビー。」
アーキュラの剣は凄まじかったが、ギャツビーは見抜いていた。
それはアーキュラの剣に、どこか迷いがあるということを、とっくに見抜いていた。
それは、まるでギャツビーに倒してくれと、言っているようにさえ思えた。
そして二人の勝負は、あっさりとついた。
「ぐっ!……さすがだ、ギャツビー。」
「アーキュラ、私は勝ったとは思っていない。いや、むしろ託されたと、受け取ってよいな?」
アーキュラは、笑みを浮かべ頷いた。
「ギャツビー、一つだけ言わせてくれ。この国には女狐の他に二人の魔物が住み着いている。グリフォンブルーの本当の敵は、そいつらだ。お前なら分かるよな――友よ。」
「ああ、分かっている。お前は、そこで休んでいろ。」
ギャツビーは去り際に一言、アーキュラの方は見ずに呟いた。
「この一件が終わったら、久しぶりに一杯やろうぞ。」
アーキュラは、こちらを見ていないギャツビーに対して静かに頷いた。
「我らが……負けるなんて。」
「ば、ばかな……強すぎる……。」
ラッシュ兄弟を最後に、援軍に来たグリフォンブルー兵は既に全滅していた。
「よし、今度こそ終わりだろ。」
「もう帰りてぇな。」
「何、言ってるのよクラブ。まだレジェスちゃん達は戦っているのよ。師匠である私たちが最後まで見届けなくて、どうするのよ。」
「……まだ殺り足りない……。」
「オリオス様。こちらも終わりました。さあ、レジェス様の元へ急ぎましょう。」
ギャツビーと四大剣士も、またデヴァイン城へと向かい歩み始めた。
最終決戦の足音が、季節の移ろいの様に刻々と近づいていた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる