騎士団に入る事になりました

セイラ

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第2章・第3騎士団と魔道師団

23,怪我人の治療

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私が連れて行かれたテントには、大怪我をした人達がいた。

「悪いがここを頼む。人手不足で、この怪我人達まで見切れないんだ。」

いやいや、だからってこんな小娘に大怪我の人を任せますか?

「助手として、ウィルとエナが付くから。」
「「宜しくお願いします!」」

男の子と女の子だ。私と同じくらいか、少し上だろうか。

「彼等は?」
「新人だ。」

新人でも医学に詳しい人だよね?!判断仰ぐ人間違ってない!?

「頼んだぞ。後で見に来るからな。」
まさかの試験か!?

アーサー先生は出て行った。あの野郎、これが終わったら殴ってやる。

「あ、あの……」
先ずは怪我人を治さないとね。

「私はレイラと申します。お2人共、宜しくお願いします。」

「僕はウィルです。」
「私はエナです。」

ウィル君は、茶髪にエメラルドの瞳をした優しそうな美青年。

エナちゃんは、三つ編みにした赤茶髪に、茶色の瞳をした可愛らしい美少女。

「では、まず怪我の情報を教えて下さい。」
そう言うと、困った顔をされた。

「あ、あの……すいません。ここの方々の専門医師の方はまだ、見ていなくて。」

なっ!?この人達の怪我の具合は、まだ見れていないの?!

これは、予想より多くの怪我人がいるのか。なら、急ぐべきだ。

私は長い髪を結び、手袋をして2人に指示を出す。

「2人は、適度な温度にしたタオルで、怪我人の傷口を拭いて下さい。」

「あの、何故傷口を拭くんですか。」
訝しげに聞いて来た。

「傷口にバイ菌が入るのを防ぐ為です。傷口に菌が入れば状態は更に悪くなります。」

「「分かりました!」」
これは常識な筈なんだけどな。

いちいち説明していたら、キリがない。1人1人観て行き、最優先を決める。

傷の状態が悪い人を、最優先に見るのは普通である。

どうやって分かるんだと聞かれたら、鑑定魔法である。

これは、師匠と修行していた時に出来る様になった。

鑑定魔法で、傷を確認し治療を始める。私の治療法は殆どが前世の知識だ。

違う事と言えば、魔法を使って治すと言う事である。

少量の回復魔法をかけつつ、風魔法で糸を使って傷口を塞ぐ。

素早く精密に、普段の様に持って来ていた薬草や薬も使う。

これらは、私が調合した薬やポーションである。数もまあまあ持って来た。

本当は全部、自分の怪我した時用なんだけどね……。

「あの、傷口を拭き終わりました。」
ウィル君とエナちゃんが言いに来た。

「なら、包帯を巻いてくるますか?」
「「分かりました!」」

魔力も考えて使っている為、消費も少なく順調に治す。

私はただ回復魔法をかけている訳じゃない。治るまでかけ続けたら、倒れるのは当たり前。

それを防ぐ為に知識を学ぶ。これで、全員治療し終えた。

「的確な指示、尊敬します!」
「治療が的確で凄かったです!」

2人は、めちゃくちゃ尊敬の眼差しを送って来る。

そんなに見つめないで欲しい。そんな時、アーサー先生が入って来た。

「観に来たぞ。大丈夫か。」
アーサー先生はフラフラである。

貴方の方が大丈夫か?顔色も悪い。睡眠も十分に取れていないだろう。

「終わったのか?」
驚愕の眼差しを向けられる。

「これがそれぞれの傷の具合と、治療方と使った薬と薬草です。」

私は紙をアーサー先生に渡す。アーサー先生は、紙に目を通していく。

「心配でしたら、1人1人観て頂いて構いません。」

「いや、この紙に書かれた内容から、治療が的確なのが分かる。」

なら、大丈夫だね。さて、私はそろそろ団長達の所に戻ろうかな。

そう思っていたら、アーサー先生が言葉を発する。

「色々聞きたい事はあるが、今は怪我人が優先だ。次のテントを頼む。」

はっ!?
「お前達は、ここを頼むぞ。」

「「はい!」」
えっ?私はアーサー先生に連れて行かれた。

先生は、私の事を猫か何かと勘違いしていないか?

テントには、2人の青年がいた。1人は銀色の髪に金の瞳をした美青年。

もう1人は、赤髪にグレー色の瞳をした美青年。彼等は誰だ。

「こいつらは、俺の弟子だ。銀髪がヨナで赤髪がカイだ。」

「誰、この女。邪魔なんだけど。」
「先生、この人は誰ですか?」

「第2騎士団のレイラです。」
「レイラは第3のテントを任せる。」

「「「!?」」」
第3のテント!?

テントにはそれぞれ番号がある。番号ごとに怪我人も分かれている。

そして、第4・第3・第2のテントは、怪我人の治療テント。

第2が重傷者が集まるエリアで、その次が第3である。

「第3の怪我人の数が非常に多い。だから、お前らで対処しろ。」

「第3の怪我人の中で、重傷者が出た場合は、先生に報告に向かいますか?」

「俺は第2で手一杯だ。リサーナも同じくだ。分からない場合はこいつに聞け。」

何故私を指さす。弟子の2人もこっち見てるし。いや、銀髪君は睨んでるな。

「先生を疑う訳ではありませんが、彼女は騎士団ですよね。」

「そうだ。いいから行け!」
アーサー先生が怒鳴った。

その時である。アーサー先生がふらついた。赤髪君が駆け寄る。

「やっぱり無理してたんですね!」
「そんな柔じゃない。」

「3日も飲まず食わず、ろくに睡眠も取ってなかったらそうなる!」

マジで?!アーサー先生の身体が持たない。必ず限界が来る。

「患者が大切なら、自分の体調も気にすべきだ。先生。」

「黙れ。さっさと持ち場に行け!」
「なら、せめて誰かサポートを!」

「くどい!お前達の所には、俺達以上に人数が多いんだ。更に人員を減らせるか!」

「なら、私がその1人分のカバーに周ります。それなら、大丈夫ですよね。」

「お前、軽く言うなよ!1人、人員を減らすのにどれだけ大変か!」

「今ここで無駄話をしていても、仕方がないでしょう。」

「無駄話だと!」
「当たり前です。ここでは彼が責任者。」

その言葉に銀髪君は黙る。
「指示通りに動くのが私達です。ご判断を。」

「……カイは俺達のサポートに回れ。ヨナとレイラは第3テントを頼む。」

「「「了解」」」
カイ君とアーサー先生は出て行った。

「勘違いするなよ。カイの分まで治療するのは俺だ。足を引っ張るなよ。」

「人が多く救えるならどうでもいいです。」
私は叫ぶヨナ君を無視して先に行く。


「皆、こいつもカイの代わりに治療する。分からなければ、こいつにも判断を聞いてくれ。」

ヨナ君が私を紹介した。皆の反応は様々だった。困惑・疑い・無視。

恐らく、皆はヨナ君に判断を聞くだろう。その分、私が立ち回ればいい。

正直、聞かれても困るのだ。私は医師じゃないし、治療方法も違うのだから。

そして案の定、私の所には誰も聞きに来なかった。

その間に、私は素早く精密に治して行く。資料作成も忘れない。

「すいません!治療で、大変な事になっているのですが!」

若者であろう。私に声をかけて来た。
「詳しく説明して下さい。」

治療しながら、若者……男性の説明を聞く。何でも、傷を治療師が治したそうだ。

傷を治せたのはいいが、患者が違う苦しみにもがいているそう。

痛む部分がさっきとずれているそうだ。……それって、傷口を塞いだだけだろ。

根本的な傷は治ってないと思う。そこに傷口を塞いだら、血が中で溜まる。

そうなれば、更に状態が悪化する。下手したら、アーサー先生の範囲になる。

重傷者を受け持つアーサー先生達に、更に負荷をかける事になる。

「ヨナさんには判断を聞いたのですか?」
「そ、それが、ヨナ様に貴女を連れて来いと。」




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