モブ令嬢は白旗など掲げない

セイラ

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学園編(初等部)

選手決定戦・開幕

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今日から、武術大会の選手代表を決める予選が行われる。

予選代表を決めるのは3日後だ。大人数にそんな少ない日数でいいのかと思うが違う。

1日目で3分の2は必ず脱落するからだ。1日目は学園の立ち入り禁止以外の区域が試合場。

学園の中にはあらゆる罠や仕掛けが施されている。しかし、それだけでは終わらない。

特殊な魔道具に自分の魔力を込めると、魔力を込めた者の周りに浮かぶ。

1つに魔力を込めると3つ色んな形をして物が浮かぶのだが、これを壊さなくてはならない。

つまり、学園の罠を回避しつつ魔道具で浮かぶ物を壊す事。

3つ全て壊されたら失格。条件をクリアしない者も失格とみなされる。

条件は最低でも10個は、浮かぶ物を壊さ無ければならない。

1日目は前半と後半に分かれる。前半は1年生で後半は2年生だ。魔法と協力はありとなっている。

他の生徒達はとある場所で、観戦している。でも今年は去年より罠を増やしたらしい。

アシンと学園長が怪盗スティルを捕まえる為に、去年より難しくしたとか。

これは下手すれば3分の1残るだろうか。制限時間は150分。

私は指定された位置につきアナウンスを待つ。
「それでは、1年生選手決定戦を開幕します!」

アナウンスの言葉にゴングの音が鳴り響く。始まりの合図に皆が動き出す。

私は感知魔法を使ったが、ある事に気がついた。

感知魔法では罠が何処に、仕掛けられているのか分からない。

つまり、迂闊に動く事は危険だ。でも何故、感知魔法に引っかからないのだろう。

魔力で仕掛けられていないのか?兎に角、理由は何であれ今の状況を何とかしないと始まらない。

・・・少し、試してみよう。水と火の魔法で雷を作り出す。最初、雷魔法を使い時苦労した。

それは普通に雷魔法を使った時、魔力を多く必要としたからだ。

何とか出来ないものかと試していたら、前世の科学知識が役に立ったのだ。

水と火の魔法を使えば、魔力を多く必要としない事が分かった。

そして何故私が今現在、雷魔法を使ったのかと言うと周りに雷を張り巡らせ罠を発見する為だ。

感知魔法は魔力を感じ取って、相手や物を感知する。

しかし、雷魔法の場合は魔力に関係なく雷が触れた物を感知する。

すると、罠を発見した。成る程、隠蔽魔法の一種なんだね。

隠蔽魔法の一種だから魔力感知に反応しなかったのだろう。隠蔽魔法で感知を妨害されていたのだから。

そうとなったら雷魔法で感知の範囲を広げよう。雷魔法の感知に反応が。

2人こちらに向かってる。協力しているのだろう。どちらも攻撃せず、2人で走っているのだから。

「いたぞ!行くぞ、ゲン」
「ああ、カズ!」

ゲンとカズと呼ばれた男の子2人は、コラを振り回してこちらに向かって来る。

「こっちに来ない方が・・・」

私の忠告は遅く、罠が発動してゲンと呼ばれた男の子は落とし穴に落ちた。

遅かったか・・・。カズと呼ばれた男の子はこちらを睨む。

「カズに何をした!」
「何もしていませんよ。先生方の説明をお忘れですか?」

「罠か!」
「はい。注意が足りませんよ。」

私はレイピアを構え走り出す。罠の発動はセンサーのような物、引っかからなければいいだけだ。

私はジャンプして壁を使い、ゲンと呼ばれた少年の前に降り立つ。

私は降りたった瞬間、レイピアで3発攻撃をした。砕け散る浮かぶ物。

ゲンと呼ばれた少年は尻餅をつきこちらを見上げている。開いた口が塞がらないとはこの事か。

すると落ちた穴からカズと呼ばれた少年が這い上がって来た。

「ゲン・・やられたのか?」
尻餅をつき浮かぶ物がない事を知り呆然としている。

だが、現状の理解を得たカズ少年はこちらを睨む。

「よくもゲンを!許さないぞ!」
「やめろ!お前じゃ勝てない!」

ゲン少年は叫び止めようとするが、カズ少年は止まらない。

私はカズ少年の横を一瞬で通り過ぎる。レイピアを鞘に収めると同時に浮かぶ物が全て砕けた。

通り過ぎると同時に、浮かぶ物を切ったのだ。まあ、カズ少年にも峰打ちを喰らわせたけど。

だって、あのままだと浮かぶ物を壊しても、止まりそうになかったんだもん。

つまり、峰打ちを喰らわせたカズ少年は今、地面でくの字になって倒れている。

「仇打ちの場合、敵に意識を集中させ周りの状況判断が疎かになりますよ。」

私は思った事だけ述べて歩き出す。しばらくすると反応がある。

私の斜め後ろから隙を狙っているのだろう。私は歩き続ける。

確かに気配を消す事は上手い。だけど、感知魔法を使える私にはそれだけでは足りない。

私が隙を見せたと同時に、短剣を振り下ろして来た。私はそれに合わせてレイピアで受け止める。

驚いた顔をする少年。恐らく気づかれると思っていなかったのだろう。

そのまま短剣を弾き、少年の周りに浮かぶ物を壊して剣先を少年へ向けた。

少年は両手を上げて膝をつく。その後に何人かに遭遇して勝利して行く。

「そこの人!!退いてくださいっす!」
叫ぶ方向を見ると少年が1人。

あの少年は確か・・・って!後ろのは何?少年の後ろには、大きな土球体が転がって来る。

「ぎゃあああ!こっちに来るなっす!」
物凄いスピードで走り過ぎる少年。

私はレイピアの鞘を抜き土球体へ走る。
「何してるっすか!逃げるっす!」

土球体に連撃を喰らわせる。土球体は粉々に砕け散った。私はレイピアを鞘にしまい後ろを見る。

紅いメッシュが入った白髪、オーシャンブルーの瞳にバンダナを着けた美少年。

間違いない。剣術の訓練でカインといい勝負をしていた少年だ。

「すげぇっす!セシリアさんっすよね。俺はゼネアって言うっす!」

「そうですか。」
「お願いっす。俺と勝負して下さいっす!」

「いいですよ。どの道今は試合です。勝負を拒否するつもりはありません。」

「ありがとうございますっす!」
ゼネアはファルシオンと言う武器を構えた。

私もレイピアを構える。睨み合う2人に合図をなしに動き出すゼネア。

一直線にこちらへ突っ込んで来る。右から左へファルシオンを振るって来た。

私はレイピアを縦に攻撃を受け止める。ゼネアとの距離を詰め、受け止めた構えから突きの攻撃をする。

ゼネアは1歩下がり、私の突きの攻撃を弾く。ゼネアはその隙に距離を取る。

「やっぱり強いっすね。ワクワクするっす!」
ゼネアは満面の笑みをこちらに向ける。

「楽しそうですね。」
「うっす。なんか胸が熱くなって燃えてくるんす。」

「・・・そうですか。」
「だから、負けないっす!」

私は駆け出しジャンプする。そしてゼネアにレイピアを叩きつける。

ゼネアはファルシオンを横にして、叩きつけた私の攻撃を受け止めた。

私はそのままファルシオンの鐔に、剣先を引っ掛け払いそのまま弾き飛ばす。

ゼネアに浮かぶ物を全て切った。
「流石っす。」



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