ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

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第93話 戦場の習い

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心踊る開戦間近にヤベェ興奮で動悸が止まらない……

「総司令、ケーリンネガー軍が現れました」

偵察部隊より敵発見の報がもたらされた。

「わかった。伝令! 『王国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ』」

「ハッ!」

伝令に全兵員にげきを飛ばし、参謀には『王国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ』を意味するZ旗を掲げるよう命じた。

「司令官。いよいよですな」

カルイ副司令官が強張った顔で僕を見た。

「ああ、とりあえず第1防衛ライン陣地まで行って来るよ」

「それでは、私もお供いたしましょう」

僕とカルイ副司令、数人の参謀を引き連れて第1防衛ライン陣地へと向かった。

第1防衛ライン陣地に着くと。ケーリンネガー軍からケーリンネガー王国の軍旗を立てた数人の集団が我が陣地に向かってきた。多分、開戦の口上でもするのだろう。

「いや~ 正直、今さら何だけど…… 今でもこの慣わしが残ってたんだね。戦争なんて、ここ100年無かったのに」

僕が呆れた顔で言うと、

「アレク様それは仕方がないありません。戦場の習いですから」

「しょうがない。行ってくるか。カルイ副司令官はここに残ってくれ」

「アレク様わかりました。騎士の習いとして騙し討ちは無いかと思いますが、どうかお気をつけて」

「わかった。防御魔法を掛けてから行ってくるよ」

「では、お気をつけて」

僕は数人の兵士と共に防御魔法を掛け、ケーリンネガー軍の使者の元へ向かった。

開戦前の両軍のご挨拶なんて、時代遅れも甚だしい。鎌倉武士の魂を受け継いだ漢《おとこ》としては些か馬鹿げている慣わしだ。僕なら奇襲を仕掛け、ついでに放火しまくるんだけど……



ケーリンネガー軍の使者の前に着き、体格の大きい厳つい顔をした如何にも、私は高級軍人です。みたいなヤローと嫌味たっぷりな顔をしたヤロー達だった。


 ――すぐに僕達に殺されるんだろうけど……


「ケーリンネガー王国陸軍フロンガスター王国攻略軍司令官のギヤー・バイ・スウーである」

厳つい顔をしたヤローが丁寧に挨拶をしてきた。

「フロンガスター王国防御軍総司令官のアレク・ガルラ・フラスターだ」

僕が総司令官だと名乗ると、嫌味くさい顔をしたお供達は、僕が幼い若僧だと馬鹿にした態度をしていた。 


――お前らは確実に僕が直接って殺《ヤ》るから大人しく待ってろよ!


「貴軍に降伏を勧告する。従わなければ、刃を持って打ち破るまでだ」

ギヤーのヤローがギャーギャーうるさい!

「こちらもフロンガスター王国国王陛下より敵を討ち果たせとの命《めい》がある。軍人として従わなければならない。刃を交えて勝敗を決しようぞ」

僕は毅然と言い返した。

「あい、わかった。では、戦場で雌雄を決しようぞ」

「貴軍のご武運を。では」

僕はそう言ってその場から立ち去ろうとした。

「貴軍もな」

ギヤーのヤロー達もそう言って自軍へと戻って行った。これで昔からの戦場の習いってやつが終わった。





そして、ついに最初の戦闘が開始された。

最初の戦闘は遠距離からの魔法攻撃から始まった。

『ゴォォーー ゴォォーー』

ケーリンネガー軍側から大量の火球が打ち込まれた。それに対して僕らは魔法防御でしのぐ。どちらが早く魔力が尽きるかの消耗戦となった。

こちらは、専守防衛が基本なので攻撃魔法は使わない。そして、僕も魔法防御を展開させて我が軍の防御を上げる。

二時間ほど過ぎただろうか、敵軍からの遠距離攻撃魔法が止んだ。敵も魔法攻撃では、埒が埒が明かないと判断したのだろう。次は、槍を持った軽装備歩兵隊一個大隊400名ほどがゆっくりと横隊のまま前進してきた。

こちらはまだ射撃命令は出さない。敵を十文引き付けてからの命令を出そうとしたが初戦故に止めておいた。まあ、様子見と言ったところだろうか。

敵軍が200m手前の所で足を止めた。我が軍が出て来ないことに躊躇したのだろう。陣形を密集させ、またゆっくりと移動を開始した。

そして、馬防柵から50m前で突撃開始を始めた。

『ワァァァァ! オォォォォ!』

敵軍は雄叫びを上げながら突進してきた。

その勢いは激しく見事な突貫ぶりであった。

しかし、馬防柵から5m手前で、その勇敢なる姿は魔法でも掛けられたように、その姿を消していった。
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