ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

文字の大きさ
1 / 148

第1話 鬼畜な乙女ゲーム

しおりを挟む
夕日が沈みかけた時刻。僕は仕事帰りのバスに揺られ、今日1日の事を思い出していた。

嫌味な上司の叱責、先輩、同僚、後輩達の無理難題な仕事の押し付け等々、嫌になることばかり、流石に社畜魂が標準装備されている僕でさえ、肉体的疲労と精神的疲労のWパンチで、二時間の残業でのみで帰宅することにした。

バスの中で、途中で仕事を投げ出した罪悪感と解放感に、今はゆっくりとしたいと思っていたが、ある一部の集団の女子高生達がうるさくて、それどころではなかった。


「クックククク…… みてよ。理香のヤツまた首チョンバされちゃったわよ」

「うっせぇーよ! アンタだって人のこと言えないの! アンタだって追放されたじゃんか!」

女子高生達が何やらゲームをしているようで、どんなゲームをしているかわからないが言い争いをしている。ゲームごときで、どうしてそこまで罵り合える。

「クッソー! この腐れ王子! イケメンじゃなきゃぶっ殺してやるところよ!」

「アンタがただ下手なんじゃないの? 『プリスト』のセンス無いじゃん」

「沙希! アンタだって、クリアしてないくせに人の事とやかく言える立場じゃないでしょ!」

「アンタら、もうその辺にしたら? ここバスの中だよ。こっちが恥ずかしいよ」

「「ごめん……」」

言い争っていた二人は周りからの冷たい視線に静まり返った。

口の悪い二人を止めてくれた仲間であろう女子高生に僕は最大限の賛辞を送りたい…… 名もなき聖女よ。二人を止めてくれてありがとう。もう、うるさいからソイツらと一緒に次のバス停で降りてくれ!

「アンタのせいで紫音に怒られたじゃんか」

「私に言ってるの? もとを正せばアンタが下手なのがいけないじゃないの!」

「な、なに~ アンタも『プリスト』クリアしてから言ってよ」

「もう、二人ともうるさいって! アンタら仲が良いのか悪いのかどっちかにしたら?」

再度バトルを繰り広げる二人。レフェリー状態の彼女。三人でお笑い芸人になったらどうだ? 

「だって…… 紫音。沙希のヤツが……」

「理香! 人のせいにするな!」

「二人ともまた、同じ事繰り返すなよ……」

「「はい……」」

二人はまた静かになったが、いつ火山が噴火するかわからないが、二人を止めて黙らせたレフェリー聖女に拍手を送りたい。

「プリストかぁ~」

通称『プリスト』は『プリンセス ストーリー~星の輝く夜空をあなたと共に~』という長いタイトルで、中世ヨーロッパと思わせる世界観を舞台とした学園育成恋愛乙女ゲームだ。乙女ゲームには珍しく、プレイヤーはメインヒロインをはじめ5人のヒロインの中から1人選びプレーをする。攻略対象の男は10人! ゲームメーカーは『最低50回は楽しめる最高のラブストーリーをあなたに』を謳い文句に発売した。

その攻略対象断トツの人気ナンバー1は『アレク・ガルラ・フラスター』という超イケメン王子だ。ゲームメーカーによれば、絶対に攻略出来ないラスボス! と言っているだけあって攻略が激ムズ鬼畜仕様となっている。1ヶ月に一回はアップデートされ攻略難度が上がって行く、コイツを攻略するのは廃人必至の至難の技とまで言われている。プレイヤーの評価は、

激ムズ。
全女性をガチで泣かせるな。
メーカーの悪意と殺意を感じる。
クリアさせる気が全然ない鬼畜ゲー。
素人はやるな。やるのはガチ勢のみの玄人。
イケメン大好き♡

など賛否両論だ。しかもよくわからんが小説、マンガ、アニメ、CD、音楽配信など人気も凄まじい。

なぜ僕がそんなに詳しいかと言えば、妹が泣きながらギャルゲープロ&ギャルゲーマスターの僕に、この王子の攻略を頼んできたのだ。

兄として可愛い妹の為、そしてギャルゲープロ&ギャルゲーマスターのプライドが僕を一肌脱がせた感じだ。しかし、ヤツは好感度が上がらない。イベントをクリアしても顔色一つも変えない。最終好感度イベントをクリアしてもバッドエンディングになる鬼畜仕様。

メーカーの悪意を感じ、この僕を『王子ぶっ殺すマン』に爆誕させてしまうほどの高難度でクリアー出来なかった僕のプライドをズタズタに引き裂いた。一時期バグじゃないかと噂になったが鬼畜メーカーはバグではない、ラスボスに相応しい高難度に設定していると発表していた。 ――マジかよ! 冗談だよな? 

しかもだよ、王子狙いでバッドエンディングを迎えるとヒロインに待っているのは…… 

絞首刑、ギロチン、火炙りの刑、終身刑、国外追放のどれかがプレゼントされるというプレイヤーにトラウマをガチでブチ込んでくる鬼畜メーカーの優しさよ…… 狂ってやがる…… あの女子高生の二人がブチギレている理由も痛いほどわかる。

バスの中はあの女子高生も静かになり、バスの揺れでついウトウトと眠気に誘われ目を閉じて、数分後……

急ブレーキと衝撃音、それと同時に迫りくる衝撃!  

当たり前、一面が真っ暗になり、頭と身体が押し潰されたように痛む……

真っ暗闇から光が差し込み目の前にぼんやりとした風景が広がる。そして、ガヤガヤと人の声。その後声を上手く聞き取れない。

――おっ!? なんだ? 何が起こったんだ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

処理中です...