『鬼神の救済記』

影狼

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これはとある女性の露見日記ー雨の日にアネモネー

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1回公開した時に説明がなかったので付け足しました。
今後このようなことがないよう努めますのでご容赦くださいませ。



これは【とある女性の露見日記ー雨の日にアネモネー】という小説です。

【小説自体はまだまだ続くのですがこれは一部切り抜き状態なのでございます。】

御楽しみにしてくださいますと、作者のモチベーションが上がります。





さて。全ての小説は二次創作でございます。

オリジナルキャラが出ます。
他の作品と被っている場合は、コメント欄にてご教授くださると、幸基に至ります。


では始め(演じ)させていただきます。






今日は雨だ……。

保健室から家に帰ろう……。
濡れる前に早く帰らないと。

こんな日は思い出すなぁ…。

何時だったろうか……。


だけれど日時を忘れてしまってもありありと思い出せるものがある。


出来事とやらはとうに記憶の彼方に屠ってしまった。

いつもは朧気だけど……雨になると血の匂いが香ってくるような気がしてならない。

あの時から血の香りが身体に、脳に染み付いてきているような気がする。

悲しみは、夢のようにあっという間に消え。

霞のようにふっ、と音もなく消えてしまった。
絶望は、血の香りだけは染み付いて。
「取れない……。」
「はは、私は何を口走っていたんだ……。」

夜中の誰もいない道に、私の乾いた笑いが虚しく響いた。

「忘れておくれ。」


私は誰に、言っているのだろうか。

【そこには】ダレもいないというのに。


さあ……あと少しで家だ。ここを右に曲がり真っ直ぐ行って、左の路地裏を通った先に行き止まりがある。

行き止まりだと思ったら間違いなのよ…。
1人が通れるほどの細い道があるからそこを進んだら開けた場所に出る。
そこが家だ。

帰宅したら安心した。
早速濡れ、冷えた身体を温めるためにシャワーを浴び、就寝することにする。
……まだ雨が降っている。

今宵は、雨が降っている為血の匂いに怯えて、眠れなくなるのだろう。

誰かがいないと、眠れないほどに血の香りに、幻想に囚われてしまうから。


こんな想いを私はずっと抱え続けながら、生きて行けるのだろうか。


……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……。
こんな想いをもう終わらせたい……。

もう幻想に、囚われたくない……。

……………………だれか…た、すけて……
安寧を……だれか……ください……。

幻想に、囚われない日常を……だれか……もう……疲れた……。

だれか……幻想から、血の香りから私を連れ出して……、逃げさせて……。

「おねがい……。」

誰にも届かないか細い声を、怯えた声をベッドの中で、私は出した。



「どうか……助けて。」


終わらない悪夢を……終わらせて…。


「幻想から誰か……」

こびりついて、取れない血の匂いから…。



「ぁぁ……、ああ、ああぁ……ぁあぁああああぁあああぁああああああぁ……助けて……1人は嫌だ。」

しばらく、そうしていた。

だけれども、叫んだって。

泣いたって。

「幻想に、何もかも奪われたくない……。」
呟いたとしても。
「もう疲れた……。」

誰も、助けてはくれない。

しばらくの時が経って。

落ち着いた私は再び記憶の糸を、手繰り寄せた。

記憶の中にある幼い私の眼に、映るのは死体。
そして自分の身体を見ると、服についた血があった。


【それ。】
誰かが何かを指して言う無機質な声が響く……。

この後は、思い出せない。


思い出そうとすると、頭痛が酷くなるから。
そんな時だ。
「誰かの死体が、雨に紛れて香る鉄のような匂いが……」
無意識にそれを呟いたのは。

「誰かの笑う顔が……とても恐ろしい。
純粋な笑顔のはずなのに。
血に塗れた顔が映る…………。」
【それ。】
記憶の中にいる誰かの無機質な声がもう一度響く。嫌よ。

【それ。】
もう一度響く。嫌よ。嫌嫌。

『はじめまして、お嬢ちゃん。ー不気味な声。ー』

【嫌々と首を横に振っていてもどうにもならないこともあるんだよ、お嬢ちゃん。
だから諦めな、可愛い可愛いお嬢ちゃん。】

記憶の中にあるようで、自分の頭の中から語りかけてくるような、この低い低い声は……。
……ッ……。

【困惑、いや。
動揺しているようだね。】

面白そうに笑う声が響く。
【それ……。】
聞きたくない。
【それ……とても。】
何……何なの!?
【それ……とても、じゃない。
その赤い花とても……綺麗だね。】


「……花?」
何の?

記憶の中に、ある花?

……それは、赤い花?

いや、違う。

【返り血で赤くなったアネモネの花。】

【記憶の中で、幼い私が握っているアネモネの白い花束が、赤くなっていた。】


白いアネモネは【期待】【真実】


では……赤いアネモネは?

【君を愛す】


ベッドの中にいる彼女の顔が、恐怖に歪んだような気がする。

その刹那、絶叫が部屋に響いた。

それは怒りか。
それは恐怖か。
それは悲しみか。
わからない。
分からない方、がいい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……強い彼女の、弱音が露見したのかもしれない。
昔の出来事が、露見したのかもしれない、それとも……彼女の傍にいた【今は見えない幻影】から血の匂いが漏れ出したのかもしれないね。

けれども、確実に何かが漏れ出してる。

確実に、何かが誰かの耳に届いた。

確実に彼女の隠したいことは、露見してる。

……漏らすことは、許されない。唯それだけ。

……だけれどね。【漏らしてしまったんだよ。】

秘匿するべき情報【もの】を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……それは春の日に、雨が降った夜の、白いアネモネの花びらが赤く鈍く反射する出来事。
【彼女だけに限られるのだけども、それは忌まわしい出来事が甦る春の雨の日の夜。】
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