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しおりを挟む皆様方、わざわざこんな辺鄙な『劇場』においで下さり、至極光栄でございます。
どうぞこちらのお席にお座りになられてください。
「私がご案内致します、【案内人】は少々お待ちください。」
ええ、任せましたよ。
ーーー侵入開始を致します。ーーー
そうして私は場を離れ壁にもたれかかりながら、腕組みをし案内するもののまだまだ慣れていないであろう『新顔』を見つめました。
(もう一人の【案内人】ももうすっかり、【案内人】の顔になりましたね。
………………言動はまだまだですが、私はこれでも貴方に期待していますよ。
それにしても…この前の朝は驚きましたね、まさかステージの上に血痕があるとは思いもしませんでした。
……案内したのは私ですが、見つけたものはまた別のものでしたし……、今頃は泡を吹いて倒れてる頃でしょう。
あれは吸血鬼の類の血を引いているものでしたが、血を見るのが苦手だと言っていましたね……。
はあ、裏方のものでも見つけてしまうのは仕方ないですね…。
今回の演目が終わったら、様子を見に行きますか……。
痕は掃除してしまいましたもので、暇を持て余しているお方もいらっしゃることでしょう。
そうしたら、オークションのものにも声掛けしましょう。
……全く、これでは休まる暇がありませんね。
…………世界の観測者も今頃は大変なことでしょうね。
それと同時に、我らに仇なす輩の牽制もしておかねばなりませんね。
…………ふん、今も外からご覧になっているご様子……。
相手方は、お暇を持て余しているようでいて意外と見るのですね。
………………五十、二百ですか。
雑魚でも、決して油断してはなりません。
ばればれなのですよ、大人しくやられてお行きなさい。)
私は、指を鳴らし人差し指を外に僅かに向け扉を開けました。
開けながら感情を見えなくさせる目をして、僅かに脚に力を入れました。
今度は結界の強度を高めて、それから隠し方を熟知しておきましょうかね。
外に行ってそう考えている中で再び指を鳴らして、侵入者を少しでも防ぐために扉を閉めました。
【もう一人の案内人】は、皆様方に聞こえないように小さく呟きました。
それから『劇場』においで下さった皆様方ににこやかに注意点と演目名を告げます。
「…………我らの情報を取るは愚行と知れ。
…………さて、皆様方、私が代わりましてご案内致します。
その前にご注意点を告げさせていただきます。」
・小説全てが、二次創作対象になります。
・オリジナルキャラが、出演する可能性がございます。
・キャラ崩壊にご注意くださいますようお願い致します。
・頻繁に回想シーンと共に視点変更シーンが挿入されますので、混乱防止のために事前に私たちがご案内させていただきます。
・情事をなさるシーン、暴力シーンがありますのでそれらがお嫌な方は劇場からご退場していただければ、全額お返しいたします。
「僭越ながら皆様方が、心からお楽しみくださいますよう精一杯私達でサポートさせていただきます。
それでは皆様方、お待たせいたしました。
一ベルを鳴らしますね。」
リィイィィイィイイィイィイイン……。
「本ベルを鳴らしますね。」
リィイイイイィイイィィィイイン……。
「今回の演目名は『し』でございます。
それでは演じ(始め)させていただきます。
開幕致しますー、開幕致しますー。」
ーーー演目開始致します。ーーー
ーーー戦闘開始いたします。ーーー
そうして、私たちの少しした闘いが始まりました。
剣戟の音が森のそこら中に響きますね……。
少々喧しいですが、仕方がないと思いつつ移動し、味方に援護射撃する形でそこにいる芥を斬り捨てました。
大丈夫ですか?
「は、はい!ですが【案内人】が出てしまわれると演劇の進行に支障が出てしまうのではと思い、ご命令通り我らで片付けておりましたが…ん…?
…………はあ、【案内人】ご武運をお祈りします。」
はい、ありがとう存じます。
私は味方の言葉を最後まで聞かず、微笑んだ雰囲気を醸し出し味方の見た方向に向かって走り人影を追いました。
そのすれ違いざまに味方の顔をしたモノの腕と、顔や声帯ごと喉笛を斬りました。
先程私が切り捨てるふりをしたものは、敵のふりをしてくれていた味方でした。
ありがとう存じます。
『こちらこそ、感謝申し上げます。』
刹那、銃声が聞こえました。
一発、二発。
それを聞いた私は、加速しました。
それと同時に、念話魔法で五十km以内の味方に向けて指示を飛ばしました。
『一ベルや本ベルとそれから銃声がしましたので、此処を守りなさい。
怪我人は『館』の中に、速やかに入ってください。
無理そうなら、他のものの手を借り遠慮なく入りなさい。
もう一人の、【案内人】もおりますので。
そして一名だけ、同行願います。』
『ーーーーーーーーーーーー。』
ふむ、良い返事です。
切りますね。
それから直ぐに、森の開けた場所に先んじましたね。
刹那、隠れるように葉の摺れる小さな小さな音がしましたので、近くにいるのは先程のものだと理解しました。
離れたところに私の姿をした人形がいるので、視覚共有だけしておいて正解でした。
そう思いながら、相手の姿を人形の眼を通して見ました。
二十m先の地面に座ってそこに居る相手は、フードを被り柔らかそうな葉っぱのような模様が両側にあるお面をつけており、顔を分からなくさせていますね。
(……身体の筋肉の張り方、身体の使い方を僅かに見ると男性だと分かりますね。)
…………貴方が今回の襲撃者ですね、『何らかの神様』。
私の言葉を最後まで聞かず、立ち上がりまるで『人形』のようにぎこちなく動きました。
ですが次の瞬間には我らのように俊敏な動きを見せて近づいてくれたモノには、感謝をせねばなりませんね。
その手にはナイフケーパー(骨すき包丁で骨を削ぐのに丁度いい包丁の一種になります。)を、握っているので同じ武器に変更しました。
………………『同じ武器の方』が、さぞや負けた時に悔しいでしょうね?
そう私は言い、からかうようにわざとナイフケーパーを大袈裟なくらいに出しました。
ーーー戦闘開始ーーー
それから一撃打ち合った後、二撃目、三撃目、四撃目、五撃目、六撃目……と攻撃をし合いました。
ナイフスキナー(皮剥ぎ包丁と言って刃先に、イカリのような引っかけがある皮を剥ぐのに便利な包丁の一種になります。)やナイフクレバー(骨断ち包丁と言いまして、鉈のような形状になっている包丁の一種になります。)はもちろんスナイパーライフル、剣とククリナイフへと変更し攻撃をし合いました。
それから直ぐに、アサルトライフルも一発ずつ撃ち合いました。
鉈も一撃ぶつけ合い、再び変更しました。
槍の刃先を相手の持っている槍の柄に向かって貫こうとしましたが、受け流されました。
槍術では敵わないと判断しレイピアに変更して、斜めに斬りました。
相手がレイピアに変更したのを見届けて、相手も同じ動作で一撃斬り合いましたが僅かにこちらは剣術の経験値が上なようで、相手のレイピアに罅(ヒビ)が入りました。
やりますね、『何らかの神様』。
『……………………。』
黙りですか、『ーーーーーー』さん。
『…………………………。』
レイピアを弾いて、私に距離を取らせてサバイバルナイフに変更して構えましたか。
少々本気になる時にはそれを出しますよね、貴方。
『………………。』
貴方は手をこちらに向けて挑発しましたが……戦闘するのは今回私ではなく、私の部下がいたします。
頼みましたよ、『マクフ・サヴェレセト』。
『……承りました、【案内人】。』
出てくるものに声をかけますと、返答が返ってきました。
これにて失礼致します。
戦闘中のお二人に私はそう言って戦線離脱しました。
『お待たせしました、すぐ戻ります。』
念話魔法で先程と同じ範囲の味方にそう言い、木々に飛び移り館に戻りました。
このまま、人形に共有しておきましょうか。
ーーー視点変更をいたします。ーーー
ーーー時々【案内人】の語りが入る時がございますので、ご了承くださいませ。ーーー
『…………はぁ、貴方ですか。
頭が痛くなりますね、これは。
ですが【案内人】の命令とあらば、遂行します。』
『……………………。』
身体を僅かに逸らしてナイフを躱しつつ、言いました。
ナイフを振るい時には追いかけてくる『かの方』に……いえ、違いますね。
更に追いかけてくるであろう『モノ』に苦渋の決断ながら、いいえ。
揺れながら惑いながら、それでも私は問いかけました。
『何故あの時は『罪裁きの神』に、印をつけられることを承諾したのですか?』
問いかけながら躱しているうちに館の方に出てしまったので、館のかなり後ろの森に別のルートがあったのを思い出しました。
『かの方』を攻撃し攻撃されその繰り返しで、致命傷を与える訳には行かない私はそう思いながら闘いつつ、鋭利なそれでいて正確で躊躇も感じさせないナイフ捌きを弾いて、躱しました。
そして『劇場』がある館のかなり(1500m程度あります。)後ろにある森に逃げつつ、誘き寄せ再び質問をしました。
『……………………。』
『……はぁ、次の質問です。』
『…………………………。』
『何故『あの方』を穢したのです?』
『…………………………。』
『……なんとか言ったらどうなのです?『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』よ。』
『………………………………?』
『……………………いけません!取っては…!………貴方が……。』
『マクフ』は呆れため息をついて、質問を続けました。
すると『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は首を傾げそれから、フードを取ってお面を取りましたね。
止めようとした『マクフ』は、その続きを言うことも叶わずじまいなまま止める2秒の間もなく、衝撃波で吹き飛ばされました。
『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は『彼』から頂いていたお面を側面ごと握っていたからか、手に力が入りその側面に罅が入りました。
それを『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は、投げ捨てました。
ですが、次の瞬間にはお面は再生していました。
そうして『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』がナイフを握り直し屈んで、脚の力を入れ跳躍し一千一m程も吹き飛ばされた『マクフ』の右腕に蹴りを入れ、この森の深く深く蔓も草も生い茂ったところに……蹴り飛ばしましたね。
ーーー状況説明が入ります。ーーー
右腕に蹴りを入れ、狙いを定めたようにナイフを深く深く左肩に刺し『悲鳴も』悲鳴にならない声を、あげる『マクフ』を眺めました。
それから、嘲笑うかのようにナイフを下に滑り込ませ、神経を斬ったところでナイフを抜きそこに追撃をしました。
『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は身体ごと半回転し、引力を利用して脇腹を蹴り追撃するように、腹部を思い切り蹴り飛ばしました。
『マクフ』が出てきたところの近くにあった草たちとは『到底同じところ』とは言えない、のではないかと『皆様』は思うのでしょうが……。
ですが、あそこより更に深く暗いところでした。
蹴り飛ばされたのは三km先にある森でした。
更には所々に、獣の死骸であろう大小なりの白骨死体が、転がっていました。
……そんなところに右腕を蹴られ動かすこともままならぬのみで、左肩に切り傷を拵えて脇腹を蹴られ腹部に蹴りを一回、思い切り入れられた『マクフ』がふっ飛んでくるのですから、状況はある程度悲惨でしょうね。
ーーー状況説明を終了いたします。ーーー
同じように上空からそこに飛び込んでくる、『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』が『マクフ』の背中に着地します。
重力に従って、何らかの音がいたします。
ゴキ、バキ……恐らく背中辺りが折れたのでしょうか。
『~~ッ……。』
気絶はしていないようですが、痛みに耐えているのか背中を丸め、なかなか起き上がろうとしない『マクフ』でした。
そして『マクフ』の背中めがけてもう一度、ナイフを刺しました。
『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』が背中に刺さったナイフを抜き、脚に斬り込んで攻撃をしようとしたタイミングで、人形の眼を通してお顔を見ようとしましたが逆光で見えませんでした。
そして『マクフ』の脚の神経を斬りました。
痛みに悶える『マクフ』の頭を踏みつけ、地面に押し付けましたね。
『…………………………。』
それから何も言わぬまま、脚をどけてナイフを持っている方の手で頭を掴み、何も持っていない方の手の爪を鋭くさせ、手を前に突き出し喉を貫きました。
『……ー~ッ……ッ……~ッ!』
両手がとても冷たいです!
…まるで死人のよう……それとも溶けない氷のように、ですかね。
声帯ごと貫いたからか『マクフ』の声が、一切出なくなりました。
声を出したいでしょう、でも出せないままでございます。
それは目の前にいる『モノ』が私の喉を、貫いたからに他なりません。
爪を抜いて、身体も喉もボロボロになっている血まみれの私を眺めるそれは、口元を歪ませ嗤っていました。
だけど顔はほとんど見えないまま、『靄かなにか』……黒い黒い『ナニカ』が顔の大部分を覆っていたからです。
『……………………。』
相変わらず何も言わぬまま、指を鳴らして私の身体を拘束魔法で縛り付けました。
そして、口なめずりをされ、蹴られてものにならぬ腕をなぞられました。
『できるだけ』無事なモノを、『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』はどうしたいのかと、『皆様』は思うのでしょう。
腕をなぞられた後は身体のラインをなぞられ、刺激されて溢れ出てくる欲望に耐えつつ、身体のラインを一周なぞられていました。
(ッ……、ーーーーーーーーーーーー。)
逃げるために身体を動かそうにも、痛みと強い拘束魔法で動かせませんでしたから、逃げられはしませんでした。
そして手をカリッと軽く引っかかれつつ、手を取られて出される舌をただ見つめるしか方法はありませんでした。
そして舐められて、まず噛まれそれから牙を食い込まれつつ次に吸われると、血の出ていく感覚がわかり背筋がゾクゾクとしました。
……今回も手が冷たいです、昔に何かあったのでしょうが……私に、知る術はありませんね。
一分程度でしょうか、『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』がそうしていたのは。
牙を抜き、傷口に残った血を舐め取りますと口についた血を腕で拭き取りました。
腕の部分にも着物がありましたので、その部分にも血がベッタリとついてしまいました。
そして、持っていたサバイバルナイフを鉈に変更し私の腕を斬りました。
正に『痛みと快楽は表裏一体』でございますね、これだけに言えるものではございませんが。
声を出すこともままならず、喉に溜まったであろうものを吐血しながら痛みに悶え我慢する私を眺め、それから斬られた腕を探し五十m先の草むらに隠れていたのを掴み、悠々と足を進め戻ってきました。
戻ってくる最中に『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は血の滴り落ちる腕を舐め、喰らいました。
『ぐちゃぐちゃブチィィ……ゴキッ、グチグチッ……ゴリッゴリッバキン……クチャクチャ、もぐもぐ……モグモグ、ゴクン。』
肉の噛み千切られる音、骨の折れる音、骨を砕く音、咀嚼音、飲み込む音がこの空間に響きます。
直に食べられるよりはマシだと背筋の凍る思いを堪えながら、見つめていました。
そして、食べ終わった後も悠々とした歩みを進めてきて、私の前で止まり屈んで私の頭を撫でました。
着物と口元がかなり汚れていましたから、少し恐ろしく思いました。
その手は先程と同じく、まるで死人のように冷たかったのです。
それとも決して溶けない氷のように、でしょうか……。
さて、『皆様』のお眼に見えますは。
、『かの優しき鬼共に魅入られ魅せられたモノ』でございましょうか?
それとも、『皆様方』のお眼に見えますのは、もしかしたらそれも策略のうちで『かの狡猾な鬼共に魅入られ魅せられたモノ』でございましょうか?
ーーー閑話休題、でございます。ーーー
頭を撫でられているといきなり眠くなってきてしまい、瞼を開けたりして眠気に耐えていました。
『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』はそれを見ると、何回かバックステップをし百二十m程離れました。
一つだけ言えるなら……容姿についてですね。
ーーー『かの鬼共に魅せられたモノ』の容姿の説明に入ります。ーーー
先程の発言により、フードを取った姿でございますがそれは凡そ、『かの方』らしくありませんでした。
まさに『鬼共に魅入られ魅せられたモノ』に、相応しい格好でした。
恐らく一番皆様の目を引くであろう角が額に二本、それも黒い角が生えており少々綺麗だと思ってしまいました。
そして黒色の着物をお召しになられて、赤と所々に焦げ茶の入り混じった色の帯をつけてらっしゃいました。
先程口を拭ったところと爪や着物の帯にも、着物の帯とは違う鮮やかな赤いものがありました。
それから日に焼けていない身体に、脚と首筋や喉から覗く『呪印』が私にはどこか艶かしく思えます。
最後に、下駄を履いておりました。
ここは草やら蔓やらがありましたので、軽やかで鈴が鳴るような涼やかな音が出ないのが残念に思います。
ーーー『かの鬼共に魅せられたモノ』の容姿の説明を終了いたします。ーーー
その瞬間、『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』の背後に青い何かと赤い何かや黒いなにか。
はたまた青白いなにかが、それぞれ時間差でしたがゆらめきながら、出現し始めました。
それを見て、とても驚いて眠気が吹き飛びました。
ですが、『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』があっという間に足に力を入れて近づいてくるものですから、少し驚きました。
『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』が手を目の前にかざすと、先程より気持ちのいい眠気が私を襲いました。
それに私は耐えきれず、意識を落としました。
『………………スー、スー…………。』
そうして『マクフ』は、眠りました。
すると再びバックステップをし、先程と同じところに下がった『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』が指を鳴らして、拘束魔法を解きました。
次に『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』が一度手を閉じました。
それから開くと、豆状の小さな小さな光の球体を出現させて、『マクフ』の身体の方に手を向けつつ光の球体へと息を吹きかけると、光の球体が飛ばされました。
ふわふわと飛んでいって、身体に付くと粒子状に変換され身体に染み込むように沈んでいきました。
喉の傷も治されていきましたが声が出ない程度にしておいて、あとは全て治されて行きます。
それを離れた所で静かに見ていた、『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』の様子が、徐々におかしくなります。
『……………………!…………………………。』
頭を押さえ、フラフラと足元がおぼつかない様子で眠っている『マクフ』の近くに寄ります。
そして『マクフ』の傍に、座り込みました。
首筋に汗が出ている当たり、相当辛そうですね。
まるで、誰かにそばにいて欲しそうに近づいてくるものですから僭越ながら人形の眼を通して、見ていた私は驚愕致しました。
ーーー『かの鬼共に魅せられたモノ』のノイズ(膿)到達。ーーー
これより、『かの鬼共に魅せられたモノ』の遠い遠い昔の……果てしない昔の少しした回想に参ります。ーーー
『ここは……どこだ?…………もしかして幽世、か?』
まだこの時は『かの鬼共に魅せられたモノ』ではなく、『かの方』もとい『かの魁飌憑き』(かいふ)だったのです。
その時はまだそれに、目覚めておりませんでしたか。
『……ようこそ、『かの地獄に堕ちるはずだったモノ』よ。』
何者かの、声がした。
それで目覚めると、見知らぬ天井があった。
『地獄に堕ちるはずだった、なのに何故ここにいるんだ?』
そうして天井を見つめて、それから周りを見渡しながら呟いた。
ここはどこかの屋敷の中の、部屋のように思える。
二十m先に屏風、三十m後ろに日本酒がまだ入ってる瓶があった。
そのそばに零れた徳利、日本刀が台に飾られているところもあり、そしてこの部屋に仄かに残る甘い香り……。
そして俺のところからは屏風に遮られていたからあまり見えなかったのだけど、離れたところに所謂『座敷』の座具に座っているようだ。
その座具にいる方はと言うと、片膝を立ててゆるりともう片足を片膝の間に差し込むような、緩やかな座り方でした。
ーーー僭越ながら『そのモノ』の容姿説明に参ります。ーーー
かなり乱れた黒い着物を着ていて、その上に羽織をしていました。
羽織に蒼い龍の本格的な刺繍がありました。
本格的な刺繍を施してある龍の身体のそばには紅い果実が沢山あり、それに囲まれており、それに連綿すると示すように色とりどりの蝶が舞うような美しい模様がそのモノの身体に彫ってありました。
……まあ本当に『彫ってある』かは『皆様方』のご想像に、何なりとお任せいたしますね。
髪に隠れていて、顔が見えません。
そもそも面を被っていますので、顔が見えないのです。
ーーー容姿説明を終了いたします。ーーー
そうして座っており、面白そうに肩を少々震わせているモノがおりました。
『……何、ちょっとした興だ。
あれを困らしてみたくてな、お前をここに連れてきたというわけだ。』
……だがなるほど、何となくわかるような気がする。
『……………………「本当に」?』
顔が陰に隠れていて何者かわからんが、男の声だ。
それに向けて呟いた。
『……………………。』
残念ながら、返答は返ってこなかった。
『……ほれ、この着物に着替えるといいぞ。
精々、この屋敷の暮らしに慣れるといいな。
『魑魅魍魎が跋扈している』ここにある屋敷の、な。』
……だがなるほど。
起き上がり窓に近づいて、外を見てみれば魑魅魍魎共が確かに跋扈していたようで、それらは吸血鬼の類だったか鬼の類だったかごまんといた。
他の妖怪たちも、ここにいるようだ。
共通しているのは……。
何だと、呪印……と着物……?
『かの方』がそれに驚いている中、何者かは慣れたように、申しながら何者かが『かの方』に見えないような屏風の後ろでそばにあった、黒い着物を撫でるように手を動かすとその着物は浮きました。
………………まあそれはお前が『鬼共に魅入られ魅せられたモノ』になれば、容易く解決するのだが、な。
『かの方』の腕にふわりと移動をして、袖がすとんとパズルのようにハマるようなそれでいて着心地のよいような入り方で、帯も全て緩やかにそれでも身体にピッタリフィットするようなサイズでございましたので、最終的には全て着心地のよい中着けさせられました。
そして紋様、という名の呪印がゆるりと胸に浮かんできました。
それらは鋭い痛みを伴いつつ、頬に移動し二つに分裂致しました。
『…………………………ッ……………………
…………ッ…………。』
するとなんということでしょう、『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』の声が出なくなりました。
最初の方は着心地のよいものだ、と思いながらでしたがなにかを思い浮かべていると背筋が冷たい何かに触れたように、寒くなったような気がしたのでしょう。
(………………………これ以上考えてはいけない…………。)
ひとつは青い茨に巻かれた心臓の呪印でございまして、ふたつめは黒色の蜘蛛が赤黒い『蝶』を喰らおうとするかのような、呪印に相成りました。
それらは、ゆっくりと蠢きましてまるで宿主の意思に反するように、それぞれ好きな場所に動きました。
ひとつめは太腿に、ふたつめは首筋に動いたのでございます。
そして、それらの呪印の他にも「黒くドロドロしたようなひどく醜い呪印」が先程より鋭く持続性のある痛みを伴って喉や首筋、脚、服で隠れる背中と、ギリギリ見えないように見えづらいのですが確かにある呪印に動かれながら、手首にも徐々に徐々に浮き出ました。
『…………………………ッ……………………
…………ッ…………。』
……あいつの管理しているところになど、決して行かせてたまるか。
『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』が苦悶の呻き声を、声にならないまま微かに出ししゃがみこむところでした。
そして男が眺めている視線を受け止めながら辛抱いたしますと、別の男の声がかかりました。
『あまり声を出してはいけないよ、ここにいらっしゃるお客様に失礼になるからね。
悪いがここの決まりでね、従業員以外との会話は禁句なんだよ。
おや、『呪印』が浮かんできていたね。』
『……旦那、何故ここに?』
『…………なに、可愛い新入りさんが入ってきたとの噂がわたしの耳に入ってきただけだよ。』
『……………………。』
別の男の声が聞こえてきて、男が返答をいたします。
すると襖を開ける音がいたしまして、再び別の男の声がしました。
『ふふ、可愛くて賢い新入りさんはだいすきだよ。
じゃあとは頼むね……?』
『わかりました。』
『この後、お客様がいらっしゃるからそれまで待機してろ。
そしてお客様がいらっしゃったら、お前は酌をしろ。
…………いいな?』
男の返答が聞こえまして、別の男の声が聞こえなくなりその代わりに床の軋む音が遠ざかりました。
すると、男が『座敷』の座具から立ち上がり、ゆらりと近づいてきて話しかけてくるものですから、少し危険に思えた『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は窓から離れました。
そうして、その男はゆらりゆらりと近づいてきて頬に触れました。
髪に隠れていて、顔はよく見えませんしそもそも面を被っていますので見えません。
それが『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は恐ろしく思いましたので、緊張を解すために耳元に口を近づかせたようです。
『おいおい、そんなに身構えンな。
……なに、取って食う訳じゃねェさ。』
それから耳元でそう囁きました。
続いてこう、囁きました。
『………………この面を付けろ。』
なるほど、この方の本性がそっちなのですね。
それからもう一度頬を撫でると、口が開いているからか牙が見えておりまるで威嚇するような、はたまた怒っているような眉間にしわを寄せた、怖い形相の鬼の面が出現致しまして『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』はそれを、時折触りながら付けられておりました。
そうして男が部屋を離れるまで待機しておりましたら男の声がかかりました。
『おい、新入り。
行くぞ。』
『……………………。』
こうして『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は、頷きそれから部屋を出まして、別の宴会場に移動しましたらもう既にお客様方がいらっしゃいました。
女将様や若い衆方が料理の運搬やらをしまして、お客様が女将様を下がらせました。
すると『彼ら』率いる若い衆方が、舞踊やら芸やら酌をいたしました。
それが済みますと、女将様と若い衆方がお部屋に案内致しました。
しばらくすると良い感じに酔いましたのでお客様方が一人ずつ若い衆方の中から、お呼びになられました。
男の方の場合は女人が、女人の方の場合は男性が、違う刺激が欲しいという場合は、逆攻めにいつでもできるように……それとも男性同士の情を通じ合わせる事も、女性同士でのまぐわいも『皆様方』はもちろん私達もそう教え込まれているので、いつでも準備は万端でございますが……。
ーーー視点変更いたします。ーーー
ーーーまずは此処から部屋に入るシーンに参ります。ーーー
若い衆のお一人様を呼んでから暫く待ちますと、床が軋む音がしましてそれが近づいてきました。
『ギッ、ギッ、キシ……ギシッ、ミシ、ギ、ギッ……ギシ……キシッ…………。』
それが襖の前で止みますと、軽く優しく叩く音がいたしました。
『……トン、トン………トン…………。』
『いいですよ、お入りくださいませ。』
私が声をかけると、軽く優しく叩く音が止みました。
『スー……。』
襖の開く音がしましたね。
一瞬の間を置いて『若い衆のお一人様』が襖の前で床に頭が着くか、着かないほどに頭を下げていらっしゃいました。
それもきっちりと手を合わせて、でした。
それから頭を上げて、畳の縁を踏まないようにお入りになられました。
そして、このお方は襖を閉めました。
それからもう一度、襖のところで私に向かって深く深く、頭を下げていらっしゃいました。
そして近すぎず、遠すぎずの距離を保ちつつ座るところを見ると、真面目なお方なのでしょう。
礼儀正しいお方ですね、このお方は。
『ふふ、若い衆のお一人様。
よくいらっしゃいました。
どうぞこちらに……私の隣、においでくださいまし。』
『…………………………。』
この方が新入り様、ですか……。
鬼の面に、黒い着物を着て居られますね。
『呪印』がどこか艶かしくて趣があります……。
そうして私が眺めながら、若い衆のお一人様をこちらの隣に呼びますと、頷いていただけて私の隣りにある座具に腰掛けて頂きました。
『感謝します、若い衆のお一人様。
ふと思いましたが私の『若い衆のお一人様』、この呼び方だとお一人様は堅苦しく思えますか?
それに不快感はないのですか?』
ふとそう思いまして、質問をいたしました。
『………………………………。』
そのお方は首を横にゆっくりと、振りました。
『そうですか。』
『……酌でも、どうですか?』
そういう前に、そのお方は酒瓶を持ってらして私は少し笑ってしまいました。
『あらあら、『若い衆のお一人様』。
あなたがするべきは私に、酌をされることでございますよ?
さ、徳利をお手にお取りくださいませ。
……それに、こんな綺麗な蒼い月の光がここに降り注いでおられることですし今夜はゆるりと過ごせることでしょう。
それはなにものにも代え難きの幸甚で、安らかな一瞬でございます。
あなたも、そう思っておりますか?
『若い衆のお一人様』。』
とくとくと徳利に酒を注ぐ、私に向けて何かを噛み締めるようにゆっくり頷いた『若い衆のお一人様』でした。
お面を少々ずらして口元に徳利を持っていって、ゆっくりと呑む『若い衆のお一人様』と私は月の光に当たらないように窓の陰にいました。
『まだまだ夜は長いのです、今夜は私の傍でゆっくり呑んで下さいませ。
そして逢う機会がありましたら今宵と同じように、ゆっくり語らって呑んでくださいますか?』
徳利に五杯目の酒を注ぐところで私はそう言いました。
『………………………………。』
頷くかと思いきや、徳利を置きお面を少々ずらし遠慮がちに、顔を近づけてきて私の唇に口付けをしました。
『チュッ…。』
それから、手の甲と首筋に口付けしました。
驚いている私を優しく、それでいてまだ遠慮がちに、抱きしめました。
『………………………………。』
『………………………………。』
しばしの沈黙のあと、それだけをして下さったので私は満足しまして背中に手をポンポンと優しく置いて、離れるように促しました。
離れてくださったので、徳利を持ち上げ手渡して酒の瓶を徳利に傾けました。
そうして呑み彼女が眠ったあと、『かの若い衆のお一人様』は2つの楽器を魔法で取り出しました。
『あちら』の世界にあると伝えられているとの噂で、『かの若い衆のお一人様』は素早く今夜にでも練習しようと買い求めました。
それが『三線』、『クーチョー』でございます。
『三線』は『あちら』の世界のとある国から伝来したそうです。
ーーー『三線』の見た目説明に入ります。ーーー
『三線』の見た目は丸いところから先端の少し前まで三本の弦が張ってあり、その右と左に掴むところがあります。
その少し下にも、同様のものがあります。
錦蛇という蛇の皮を、使っているそうです。
ーーー『三線』の見た目説明を終了いたします。ーーー
ーーー続きまして、『クーチョー』の見た目説明に入ります。ーーー
今宵は、そうして穏やかに過ぎていきました。
夜が明ける前に彼女は起きて、まだ起きていた彼に耳元で囁きました。
『今宵の事、秘めていただけますか?』
頬に口付けをされて、それが返答だと分かりましたので私はまだまだ語らいたかったですね、と囁いて後ろ髪を引かれる思いで帰りました。
それからの夜のこと。
『若い衆のお一人様』もとい『鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は女を誘い誘われ、喋れないのでその代わりに仕草や舞で籠絡し籠絡され、それはそれは代わる代わる女を変え激しい口付けをし、赤い花をその柔い身体に散らし、甘い甘い蜜をたっぷり啜ったようです。
ただ一人の女性を除いて、他の女は籠絡し弄び誘いその口で悦ばせ、時には貪りました。
ーーー『かの鬼共に魅せられたモノ』の遠い遠い昔の……、果てしない昔の苦痛と慰めや情事、もしくは女狂いにまみれた少しした回想を終了いたします。ーーー
それは、焼かれて消えない痛みに更に油をかけられ油が好きな蟲に身体を喰われる程なのだと私は感じます。
その時にこの痛みに、頭を抑えるほどの痛みに出会ったのですね。
貴方の痛みは、恐らくこれだけだとは私たちは思えません。
貴方に、何があったのですか?
はたまたそれらは、霧のように現れ次第に揺らめきながら形作られていきました。
二十、五十、二百、とどんどん増えていきました。
そのうちの十は白いものだったものが赤くなりつつあるもの、元々赤いもの、青いもの、黒いもの、赤黒いものでした。
それらがゆらりゆらりと何か『マクフ』に近づくと、『鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は頭を抑えながら爪を鋭くさせそれらを切り裂き、喰らいました。
すると『鬼共に魅入られ魅せられたモノ』の後ろに人影が現れ、元のフード姿に戻しました。
『全く……先走りすぎなのですよ、貴方は。』
呆れたように言ったその人影は、面を手に取り、その方の顔に着けました。
着けられた面を触り、頷いた『かの何らかの神様』は後に残った二百あまりのモノを館に向けて指を動かすと、一気に館に向かいました。
そして『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』は、一瞬で消えました。
『さて、貴方とははじめまして、ですよね。』
『ええ、『フィセヅミア・ニングライ』さん。』
『おお、私の名前を知っていただいているとは光栄です。』
『……ええ、貴方が『かの何らかの神様』を誑かして幽世に引きずり込んだんでしょう。
……汚らしい紋様を持っている御方。』
『ふふふふ……汚らしい紋様とは大層なことを仰いますね。
こんなに綺麗な紋様だと言うのに、酷いお方だ。』
『貴方の目が腐っているだけでは?』
『そうは思いませんよ、『かの館の主に仕えているただの【案内人】さん』。』
『ほう、そうですか。
『かの魔法陣で召喚した莫迦としか言いようがないモノ』さん。』
『そう思ってくださいよ、『かの水龍を呼び込んで穢した罰当たりのモノ』さん。』
『ははっ、お二人共手厳しいようで。』
『それでは私は失礼いたします、また会う機会がありましたら…。』
そう言って『フィセヅミア・ニングライ』は消えました。
消える直前に、牽制のために切り刻もうと彼は刀を二百ほど振りました。
それらを全て弾くと、笑い声をあげながら消えてゆきました。
『………………結界の強度を高めておきますか……。』
『お手伝いいたします。』
ーーー演目終了いたします。ーーー
「『皆様方』、演目は如何でしたでしょうか?
楽しめたのなら良かったです。
【案内人】ですか?
もうしばらく戻ってきませんよ。
それではまたおいでくださいませー!」
(【もう一人の案内人】は『劇場』の入口に『皆様方』を誘導してから、入口で元気に手を振り45度に腰を曲げてお辞儀いたします。)
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