『鬼神の救済記』

影狼

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花魁ー遊郭に塗れ漏れた愛憎操舞ー

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通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの細道じゃ 天神さまの細道じゃ ちっと通してくだしゃんせ  御用のないもの 通しゃせぬ この子の七つのお祝いに お札を納めにまいります 行きはよいよい 帰りはこわい
帰りはこわいながらも 通りゃんせ

耳をすませてみれば鈴のような声が朗々と謡っていた。
  なるほど これはおもしろい    おもしろしかな なるかみ様のこさ、こらはいずこにいったというね
      チンドン屋 ここで一つ… ああ、あぁ、そうだ

囃し立てる声や驚嘆の声が聞こえ、それから町を行き交い話に興じる男女の声、または商いをする声がした。
それも染屋や甘味処だろうか、呼ぶ声が耳に入る。
                人々の声がした。   いつものことなのに今回はどこに出たのだろう、と困惑してしまう羽目になったのだが。      それよりもここは、どこなのだろうか。
                     ー  天神のお通りじゃ  ー

しかし、戯れに一つ石を投じてみたらあっという間に人々は顔をそちらへとやる。

            ー  顔見世行脚へと移ろう 天神さまの語らいが 揺蕩う 天神のおなり 珍かな 話 それは えい よい 話じゃ ー

             夜の      霞よ     雨を        祝子よ        扇子を

 そう、これより始まるのは。

白き衣を纏ふ祈り子が訪れる時 天の羽衣の如きゆらめきを以て 唄に現が瞬き萬の願いを紡ぐ  かの地にて雫が満つ満つ 唄に現が瞬き萬の願いを紡ぐ

恋い慕う二人が訪れる時 世界が花開く 花開く 花開く 朝まだきより光風を呼び上ぐ 名ばかりの神々を 示すところに 虚には求めるものなし

呼ばれざるモノ共が訪れる時 渇望の末に混沌に陥らせ滅亡を呼ぶ いかばかりかそねみあれどうらみなど 生温し  伽藍堂 伽藍堂 伽藍堂 髑髏を求めよ

 神々が訪れる時 終焉を与えん せめてもの劫炎を 業怨を 死を司る神なれど  神の一柱 されど人の世 いとかなし いとかなし いとかなし 

                    魔の世 妖の夜が訪れる時  啼く

    名をくれと 願い集る その眼は輝きなどなく
     命をくれと 願い集る その眼は輝きなどなく

                       求めるその姿  その姿

                           まっこと美しきかな  

                されど  やらぬ やらぬ やれぬ やれぬ
               嘆きの亡霊共 輩一人もおとさじ 

                        鈴の音をあすこへと出づ
                 ささ ささ 幽世へ    置いやれ    覆いやれ

然り その余興と うぬらの願い 夢に  しだり  おとす    

                             退屈させてくれるな
       ぬばたまの    酔いを   宵を   あげてくださんせ

     あげてくだしゃんせ あげてくだしゃんせ
                            
                      麗しきかな  麗しきかな 
                         
           されど  やれぬ やれぬ やらぬ やらぬ

「御方は むずかしいかんばせばかり  でないが
わろうた  ところ など一度もみず
御方は 紛うことなき亡霊を率いておる 
だが おとしがたき 男よ」

 そら 見よ そら 見よ 
その奥方が 細く麗しい 首をかたぶき 花のごとく可憐な御姿でしなだれかかり みいられておるぞ 
   おお おお これはおもしろし おもしろし
                さぞや   たのしかろ たのしかろ 
           なんとうい奥方か          かんばせは     しろたへに  袖に ふたぐが    なんとうい奥方なことだ 

「ものおもゐの 狂いほしけれ 今宵は 
 今宵は逃がさぬが 今昔も変わらず 麗しい姿なり 
ようやもしれぬ  ようやもしれぬ」
           御方のかんばせを知るは  吾のみ
            手前のかんばせを知るは  我のみ

      こればかりは何人たりとも侵すこと    赦さず
       之ばかりは何人たりとも侵すこと     赦さぬ

唄だ。

                         さて、さて。

                              目前に悠々と、立ち塞がるは。

                           そこも見えぬ泥梨ぞ。
                               果て知れぬ門よ。
                             巨木ぞ。
                              広大な穴よ。
                         さて、さて。

                         御身が彷徨する覚悟は宜しいかな?
                          御身が彷徨する覚悟も決まろうよ。
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