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調査員ー牽制。ー
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ザリ。
いたぞ、令嬢だ。
視線、そして微かな足音がする。
刹那、何者かがその場に倒れた。
どうやら転んでしまったようだ、動かない。
その何者かの身体から、じわりと赤いものが流れていく。
地面には、足跡が一つ残されるだけ。
恐らく人間の仕業ではない。
刺し傷があり、縦ではなく横。
その傷の横にはほんのわずかに浮き出ている、印があった。
変だな、ここはこんなに寒かったか?
黒薔薇によく似た、印。
すると、少し間が空いた後に。
音がほんの少し、聞こえてくる。
後退りをするような草の擦れる音、近づいていく足音。
かさ、がさ。
じり、じり。
がさ、ばさ。
じり、じり。
異音、苦痛の喘ぎ声。
痛い。
風に揺れる木々の音、遠吠え。
今宵は、美しい鏡月。
暗闇に浮かぶ、二つの人影。
目が慣れてないためか、よく見えない。
手前の人物は、大柄に偽装しているのか闇に。
深く溶けるような大きめの黒いローブを、着用している様子だ。
わずかに体を屈めており、異音はその人物の近くからする。
が、それにしても。
フードを被っているのか、見れない。
それがかえって恐怖を感じる。
その上に、異音が聞こえてくるというのだから。
その偽装はある程度、成功していると言わざるを得ない。
奥の人物は寝間着用のドレス、と言うにはあまりにも。
簡素、質素すぎる服装をしていた。
もしや、手前の人物に誘拐され暴行されていたのだろうか?
それなら何故その人物を、深い闇のローブで。
寒い。
隠れて見えない、奥の人物を。
まるで慈しむように、手前の人物が接するというのか。
さらには暴行するなら、人目のつかない所を選ぶだろう。
あるいは、声を出せないように口を塞ぐか。
やりようはあるのにも関わらず、そうしない。
耳に届くのは、先程の喘ぎ声ではなく。
欷歔する声がどこか苦しい、合図なのか一回胸を叩いたようだ。
まだ暗闇に慣れていない、どうしたものか。
それを受け、手前の人物が動く。
すると、徐に手を出して。
奥の人物の移動をそのまま無言で、促してきた。
その手の流れるような、優雅な仕草からして。
奥にいる人物は高貴な者だろう。
おずおずとその手に、自分の手を重ねる奥の人物。
こういった高貴な者は、処世術として。
笑顔の裏には、強弱あれど。
危険な遊びの如く、毒を隠し持っているものだが。
移動を始めた、二人の人物。
ゆっくり歩みを進める人物の手と、ついて行く人物の手。
かさ、がさ。
がさ、かさ。
森の奥へと誘導されている、その人物の横顔は。
ボロ切れの布に隠され、見えない。
俯いているのか、頭が下がっている。
しかし奥の人物には。
まったくもって、それがないように見受けられる。
周りの空気が、凍っているような気さえする。
名家、華族、上流階級など。
上流階級、と言っても。
何れかの階級かは、判別がつかないが。
なんにせよ、方方から声がかかる程に。
影響力のある家柄だと、推測できる。
それはつまり、影響力があると同時に何かを受けやすい。
なので少々警戒を、しなければならない。
その間も森の奥に誘導して戻ってきた、手前の人物。
木の奥で待っているようだ、目深に被っているフード付きローブが風に揺れる。
音もなく降下した、謎の人物の影があった。
その背には翼がある、赤色のフードを目深に被っているようだ。
瘴気と冷気が、漂い続ける。
その人物は手前の人物に結果を伝え、去った。
その直前、手前の人物が彼方を見ると。
その人物も一瞥しているようだ、その後ろ姿は。
何処か、虚ろな雰囲気だった。
伺いしれずされど冷笑うその視線、侮れず。
────────────────────────────それはさておき、人物達は人に在らずかそれとも人か。
いたぞ、令嬢だ。
視線、そして微かな足音がする。
刹那、何者かがその場に倒れた。
どうやら転んでしまったようだ、動かない。
その何者かの身体から、じわりと赤いものが流れていく。
地面には、足跡が一つ残されるだけ。
恐らく人間の仕業ではない。
刺し傷があり、縦ではなく横。
その傷の横にはほんのわずかに浮き出ている、印があった。
変だな、ここはこんなに寒かったか?
黒薔薇によく似た、印。
すると、少し間が空いた後に。
音がほんの少し、聞こえてくる。
後退りをするような草の擦れる音、近づいていく足音。
かさ、がさ。
じり、じり。
がさ、ばさ。
じり、じり。
異音、苦痛の喘ぎ声。
痛い。
風に揺れる木々の音、遠吠え。
今宵は、美しい鏡月。
暗闇に浮かぶ、二つの人影。
目が慣れてないためか、よく見えない。
手前の人物は、大柄に偽装しているのか闇に。
深く溶けるような大きめの黒いローブを、着用している様子だ。
わずかに体を屈めており、異音はその人物の近くからする。
が、それにしても。
フードを被っているのか、見れない。
それがかえって恐怖を感じる。
その上に、異音が聞こえてくるというのだから。
その偽装はある程度、成功していると言わざるを得ない。
奥の人物は寝間着用のドレス、と言うにはあまりにも。
簡素、質素すぎる服装をしていた。
もしや、手前の人物に誘拐され暴行されていたのだろうか?
それなら何故その人物を、深い闇のローブで。
寒い。
隠れて見えない、奥の人物を。
まるで慈しむように、手前の人物が接するというのか。
さらには暴行するなら、人目のつかない所を選ぶだろう。
あるいは、声を出せないように口を塞ぐか。
やりようはあるのにも関わらず、そうしない。
耳に届くのは、先程の喘ぎ声ではなく。
欷歔する声がどこか苦しい、合図なのか一回胸を叩いたようだ。
まだ暗闇に慣れていない、どうしたものか。
それを受け、手前の人物が動く。
すると、徐に手を出して。
奥の人物の移動をそのまま無言で、促してきた。
その手の流れるような、優雅な仕草からして。
奥にいる人物は高貴な者だろう。
おずおずとその手に、自分の手を重ねる奥の人物。
こういった高貴な者は、処世術として。
笑顔の裏には、強弱あれど。
危険な遊びの如く、毒を隠し持っているものだが。
移動を始めた、二人の人物。
ゆっくり歩みを進める人物の手と、ついて行く人物の手。
かさ、がさ。
がさ、かさ。
森の奥へと誘導されている、その人物の横顔は。
ボロ切れの布に隠され、見えない。
俯いているのか、頭が下がっている。
しかし奥の人物には。
まったくもって、それがないように見受けられる。
周りの空気が、凍っているような気さえする。
名家、華族、上流階級など。
上流階級、と言っても。
何れかの階級かは、判別がつかないが。
なんにせよ、方方から声がかかる程に。
影響力のある家柄だと、推測できる。
それはつまり、影響力があると同時に何かを受けやすい。
なので少々警戒を、しなければならない。
その間も森の奥に誘導して戻ってきた、手前の人物。
木の奥で待っているようだ、目深に被っているフード付きローブが風に揺れる。
音もなく降下した、謎の人物の影があった。
その背には翼がある、赤色のフードを目深に被っているようだ。
瘴気と冷気が、漂い続ける。
その人物は手前の人物に結果を伝え、去った。
その直前、手前の人物が彼方を見ると。
その人物も一瞥しているようだ、その後ろ姿は。
何処か、虚ろな雰囲気だった。
伺いしれずされど冷笑うその視線、侮れず。
────────────────────────────それはさておき、人物達は人に在らずかそれとも人か。
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