獣神の愛憎闘記

影狼

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花。ー不明。ー

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『………おや、こんなところに居たのかい?』
『……ふふ、見つかってしまったわ。』
『……本当にきみは目を離すとすぐに何処か、行ってしまうね。』
『ごめんなさい』
『……あはは、きみにそう言われてしまうとね。』
『こんな風に、拐かしたくなってしまう。』
『……え?』
『こんな風に、どうしたの?あなた。』
『え~、あははっ!本当にきみには敵わない。』

逆に勾引かどわす女性の声に笑う、男性の声がする合間に軽い音がした。
それを皮切りに、声が聞き取り難くなったように思う間もなく、あなたの意識が暗転した。
すると、ゴトンッと何かが落ちるような鈍い音がした。
そしてあなたでない声が相変わらず、聞き取りづらくはあるが微かにしたような、そんな気がした。

何故……、どんな種族が存在……問に思ったことは?
……ことはあるだろうか。
そうだな、……ないな。
……ているところ悪いが。

まるで走っているような音だ。
三人の声がする。

「今度からステップ踏むのはやめてくれ。」
「……はーっ、はーっ……!けほっ、なんなんだこの森!」
「……。」
開口一番に発したのは疑問のようだ。
一拍おくと、周りを見回していた少年が何かを見つけた。
「………あそこの建物がちょうどいいだろう。」
黒に白のグラデーションがある髪を、なびかせていた少年がそう呟く。
「……休憩におあつらえ向きだな。」

からから、からから、からから。
すると、ガラス瓶に入っているものがぶつかっているような音がどこからか、聞こえてきます
『伽藍堂……伽藍……伽藍堂……伽藍堂……伽藍……』
しばらく進むと、鈴の音が鳴り始めます。
りぃぃーん……
道が曲がっており、更にそこをしばらく進むと建物が見えてきました。
いかにも怪しく古びた、白い洋館がその姿を覗かせます。
洋館の周りには百合や薔薇が鮮やかに咲いており、花びらが地面にぽつぽつと落ちていました。
館の正面の扉の上にある影絵は、特段気にしないでしょうか。
松ぼっくりと……髪の長い女性の影絵で、それがこの洋館の象徴だと……納得するでしょう……
その隣には男性の手の中に包まれるようにある、小瓶のラベルと絵がありました。
ラベルに小さくあるのは、『猫』とイソトマの花弁でした。
優美で、しなやかに描かれています。
何処か、貴方の目に伽藍堂に映るのさ。
『誰が、あるいはおまえは。
この可愛そうで無垢な駒鳥はどこに羽ばたくか、知っているだろうな。』
そこにふと、にゃあんと猫の鳴き声がした気がしました。
見てみると、黒いしっぽがありました。
「にゃー……」
猫は一匹だけ、それで終わりだ。
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