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再生。―精霊がひっついてくる。-
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へーそんなことがねえ、君もいろいろあったんだ?
『おまえは?』
僕は名前がないから好きなように呼んでくれて構わないよ、「不死身の眷属」さま。
『ゲテワ』
2つの組織の名前を取ってくれるだなんて、君もあの御方に影響されてきたね?
『一部分はそうかもな、末恐ろしい奴だよ、あいつもおまえも』
あの御方だけじゃなく僕も?悔しいね、僕は「ただ」平穏に過ごせるかと思っていたのに。
『減らず口をたたくのがお前のやり方だろう、ゲテワ』
ひどいなあ、僕はあの御方の付属品だよ?
――君がよく理解しているはずだよ、「不死身の眷属」さま。
『付属品などとよく吠える、欠陥品の精霊が』
少なくともあいつらにそういわれても気にもしないのに君が言うと怖いね、明日は人狼の咆哮が響くのかな。
『人狼、というよりあいつらは』
朝は君たちの世界にはやってくるけれどこっちはまだ暗いんだ、まだね
『……』
とある国にお姫様とおじょうさんがいました、お姫様はおじょうさんのことが好きでした。
けれど、おじょうさんは別の国からやってきたのであと少しで元の国に帰らなくてはなりません。
それを静かにこっそり聞いていたお姫様は、悲しみました。
その時、お姫様は変な子供を見つけたのでつまみ出させました。
「お兄様、お兄様」
「どうしたのですか、おひいさま」
「もう、あなたはいじわるよ」
「そう思われましたか、おひいさま」
「おまえ、そこで何をしている!」
「まあ、王子様」
「おまえ!」
「おやめください、お兄様!」
「乱暴はよしてくださいと何度も申し上げたはずですよ、王子様」
「なぜ、おまえのようなものが!」
「迎えが来たようなのでこれで失礼します、おひい様方」
そこに来ていたのは、おじょうさんの知り合いである戦友の王族と先刻お姫様が追放した変な子供や宝石を売る人でした。
お姫様はおじょうさんを独り占めしたかったので、きつく縛っていたのです。
「あなたは何をしているのです?夢のような時間を壊してまで」
変な子供じゃなく宝石を売る人がそう言いました、にこりと。
その後、お姫様は気が動転してしまい王族の喉を刺してしまいました。
めでたしめでたし。
そこにゃ何もいねぇよ…そぞろ歩きしてねえで、目を覚ましな?
おねんねしてっと、酷え光景をその目で見ることになるぜ。
うちの主もたいがいだがね、お前んとこの主も。
――ま、精々愉しみな、凄惨な牢獄を。
囲われてるというのも、案外悪くねえもんだ。
『お母様、このお話はなあに?』
『可愛らしいフェレテリア、これは王様とその家臣たちが奮闘しているお話よ』
『せんゆう?』
『専有のことね、あなたのことが可愛らしく思えてきちゃったから私のモノにしたい』
『キャー、アハハ!』
『あらあら、そんなにはしゃいでいるとあなたの大切なモノが壊れてしまうわ』
はい、お母様。
『まったくもう、その聞き分けの良さは誰に似たのだか』
それはおじさまのことでしょうね、お母様。
『そうね、他国の王様の息子とその娘がこの貴族の喉を貫いたのよ』
『その貴族が仕事を進行している神様はあまたいらっしゃるけれど、その仕事が失敗しかけたときに二柱の神様がお慈悲をかけてくださったのでした』
『そうよ、あなたのことも助けて下さる方がいらっしゃるはずよ』
最期のお慈悲としてね。
お母様は嗚呼おっしゃっていたけれど、私はまだこの意味を理解していなかったのです。
嗚呼、それにしてもなぜこんなところに迷い出てきてしまったのでしょう。
しかも魔物に出くわしてしまうだなんて、運のなさを恨んでしまうわ。
大きい、しかもどうやら縄張りらしきところに入ってしまったよう。
咆哮が響いた、その瞬間。
見慣れない人影がやってきて、魔物の身体を貫いた。
フェレテリアは酷く動揺していた、すぐにその人影は草葉に隠れてしまったからだろうか。
その刹那、視界の死角に潜む魔物が淑女を襲ってきた。
それを阻むように鋭い剣筋が、魔物を切り裂いたように思われる。
すると魔物の声がした、不気味な声だがその体躯にたがわぬ凛々しさを感じさせる声音だった。
反応はあった、魔物の声音は苛立ちを感じさせない穏やかさも含んでいて。
剣をふるったその人物は、鋭い眼光を思わせるが面に隠されていてよくわからなかった。
魔物の方の面は木の面だったが、フェレテリアはそんなことに気をまわしている余裕はなかった。
あの魔物、二度も止められていたはずなのに傷一つ負っていないわ!
楽観的だった、いまだに悲惨な目に遭っていないせいだろう。
じっと見られているようで、その人物は不快感をあらわにしていた。
『魔物だろう』
『おまえ、精霊とつながっていただろう』
『それは些末なこと』
『人間には、だろう?』
『此処まで来たモノはあれど、あの淑女がここまでこれたこと賞賛に値する』
『お前が咆哮したから、俺がここまでこれた』
『その鳥、あの御方の化身か』
『俺には白いフクロウとしか、映らんぞ』
『そうだな、私の同胞はあの淑女を見ていたぞ』
『そうだろう、あの娘に何かがあって甚く気に入ったのかもしれんな』
『私も同胞と同様に、お前にも見出した』
『俺にも、だと?』
『そのとおりだ、天神の仔よ』
『なぜそれを』
『言わずともよく、私たちはお前たちを見ている』
『まっ…』
人物の言葉を遮るように、その魔物の姿が消えていく。
最後のやつは俺は翻訳しないから自分でやってみな、坊ちゃん。
『くそっ』
あら、こんなところにカンナムギヤイタがあるだなんて珍しい。
『これは何かに使えそうね、拾っておこうかしら』
偶然のフェレテリアは知らなかった、どの世界にも存在する草というのは移動する手段になりえることを。
『…』
もちろんのこと、得物も。
『…え』
『…』
目の前にいるフードの人物が、ある人物の懐刀同然の神霊だということも。
まあ、そんなことは隅に置いて。
偶然のフェレテリアは。
『…』
空気が重い、息ができなくなる。
『…』
あった当初から喋らないこのフードの人物が遠くを見つめている、偶然のフェテリアを見ていない。
神霊はその魔物を見つめていた、魔物は自然と一体化していてお互いどこ吹く風だ。
魔物や怪物に零落した神霊もいるにはいるが、その類は少なくともこの場に。
それもまた、世の移り変わりよの。
ふふ、滅多なことをいうものではありませんこと!
『おまえは?』
僕は名前がないから好きなように呼んでくれて構わないよ、「不死身の眷属」さま。
『ゲテワ』
2つの組織の名前を取ってくれるだなんて、君もあの御方に影響されてきたね?
『一部分はそうかもな、末恐ろしい奴だよ、あいつもおまえも』
あの御方だけじゃなく僕も?悔しいね、僕は「ただ」平穏に過ごせるかと思っていたのに。
『減らず口をたたくのがお前のやり方だろう、ゲテワ』
ひどいなあ、僕はあの御方の付属品だよ?
――君がよく理解しているはずだよ、「不死身の眷属」さま。
『付属品などとよく吠える、欠陥品の精霊が』
少なくともあいつらにそういわれても気にもしないのに君が言うと怖いね、明日は人狼の咆哮が響くのかな。
『人狼、というよりあいつらは』
朝は君たちの世界にはやってくるけれどこっちはまだ暗いんだ、まだね
『……』
とある国にお姫様とおじょうさんがいました、お姫様はおじょうさんのことが好きでした。
けれど、おじょうさんは別の国からやってきたのであと少しで元の国に帰らなくてはなりません。
それを静かにこっそり聞いていたお姫様は、悲しみました。
その時、お姫様は変な子供を見つけたのでつまみ出させました。
「お兄様、お兄様」
「どうしたのですか、おひいさま」
「もう、あなたはいじわるよ」
「そう思われましたか、おひいさま」
「おまえ、そこで何をしている!」
「まあ、王子様」
「おまえ!」
「おやめください、お兄様!」
「乱暴はよしてくださいと何度も申し上げたはずですよ、王子様」
「なぜ、おまえのようなものが!」
「迎えが来たようなのでこれで失礼します、おひい様方」
そこに来ていたのは、おじょうさんの知り合いである戦友の王族と先刻お姫様が追放した変な子供や宝石を売る人でした。
お姫様はおじょうさんを独り占めしたかったので、きつく縛っていたのです。
「あなたは何をしているのです?夢のような時間を壊してまで」
変な子供じゃなく宝石を売る人がそう言いました、にこりと。
その後、お姫様は気が動転してしまい王族の喉を刺してしまいました。
めでたしめでたし。
そこにゃ何もいねぇよ…そぞろ歩きしてねえで、目を覚ましな?
おねんねしてっと、酷え光景をその目で見ることになるぜ。
うちの主もたいがいだがね、お前んとこの主も。
――ま、精々愉しみな、凄惨な牢獄を。
囲われてるというのも、案外悪くねえもんだ。
『お母様、このお話はなあに?』
『可愛らしいフェレテリア、これは王様とその家臣たちが奮闘しているお話よ』
『せんゆう?』
『専有のことね、あなたのことが可愛らしく思えてきちゃったから私のモノにしたい』
『キャー、アハハ!』
『あらあら、そんなにはしゃいでいるとあなたの大切なモノが壊れてしまうわ』
はい、お母様。
『まったくもう、その聞き分けの良さは誰に似たのだか』
それはおじさまのことでしょうね、お母様。
『そうね、他国の王様の息子とその娘がこの貴族の喉を貫いたのよ』
『その貴族が仕事を進行している神様はあまたいらっしゃるけれど、その仕事が失敗しかけたときに二柱の神様がお慈悲をかけてくださったのでした』
『そうよ、あなたのことも助けて下さる方がいらっしゃるはずよ』
最期のお慈悲としてね。
お母様は嗚呼おっしゃっていたけれど、私はまだこの意味を理解していなかったのです。
嗚呼、それにしてもなぜこんなところに迷い出てきてしまったのでしょう。
しかも魔物に出くわしてしまうだなんて、運のなさを恨んでしまうわ。
大きい、しかもどうやら縄張りらしきところに入ってしまったよう。
咆哮が響いた、その瞬間。
見慣れない人影がやってきて、魔物の身体を貫いた。
フェレテリアは酷く動揺していた、すぐにその人影は草葉に隠れてしまったからだろうか。
その刹那、視界の死角に潜む魔物が淑女を襲ってきた。
それを阻むように鋭い剣筋が、魔物を切り裂いたように思われる。
すると魔物の声がした、不気味な声だがその体躯にたがわぬ凛々しさを感じさせる声音だった。
反応はあった、魔物の声音は苛立ちを感じさせない穏やかさも含んでいて。
剣をふるったその人物は、鋭い眼光を思わせるが面に隠されていてよくわからなかった。
魔物の方の面は木の面だったが、フェレテリアはそんなことに気をまわしている余裕はなかった。
あの魔物、二度も止められていたはずなのに傷一つ負っていないわ!
楽観的だった、いまだに悲惨な目に遭っていないせいだろう。
じっと見られているようで、その人物は不快感をあらわにしていた。
『魔物だろう』
『おまえ、精霊とつながっていただろう』
『それは些末なこと』
『人間には、だろう?』
『此処まで来たモノはあれど、あの淑女がここまでこれたこと賞賛に値する』
『お前が咆哮したから、俺がここまでこれた』
『その鳥、あの御方の化身か』
『俺には白いフクロウとしか、映らんぞ』
『そうだな、私の同胞はあの淑女を見ていたぞ』
『そうだろう、あの娘に何かがあって甚く気に入ったのかもしれんな』
『私も同胞と同様に、お前にも見出した』
『俺にも、だと?』
『そのとおりだ、天神の仔よ』
『なぜそれを』
『言わずともよく、私たちはお前たちを見ている』
『まっ…』
人物の言葉を遮るように、その魔物の姿が消えていく。
最後のやつは俺は翻訳しないから自分でやってみな、坊ちゃん。
『くそっ』
あら、こんなところにカンナムギヤイタがあるだなんて珍しい。
『これは何かに使えそうね、拾っておこうかしら』
偶然のフェレテリアは知らなかった、どの世界にも存在する草というのは移動する手段になりえることを。
『…』
もちろんのこと、得物も。
『…え』
『…』
目の前にいるフードの人物が、ある人物の懐刀同然の神霊だということも。
まあ、そんなことは隅に置いて。
偶然のフェレテリアは。
『…』
空気が重い、息ができなくなる。
『…』
あった当初から喋らないこのフードの人物が遠くを見つめている、偶然のフェテリアを見ていない。
神霊はその魔物を見つめていた、魔物は自然と一体化していてお互いどこ吹く風だ。
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