3 / 10
果実と肝。-シンギュラリティ、フォリア。-
しおりを挟む
さて、整理しよう。
淑女は夢見ていた、母君の妹で自らの母親とともに叔父の死の真相を探ることを。
しかし、何者かの妨害により危険だと判断した母親の妙なる機転で淑女は今。
けれどもうまくいかないようで、世知辛いことだろう。
フェテリアはフードの人物、先程の剣をふるっていた人物と魔物とも相対していた。
『…』
魔物が淑女の方へと顔を向け、ターパンで口を隠したままに。
目元で笑みを作るが、何処か目元が笑っていない。
『…』
剣をふるっていた人物は先程から無言だ、フェテリアは気まずく思った。
話しかけようと思っても、放つオーラが剣呑なので委縮してしまう。
『…』
フードの人物は先程と同じく、フェレテリアの方を見ておらず。
魔物の方を見通しているような、重い空気を叩き出しているようだ。
『淑女は何を知らず、晴らさずその場で』
フェレテリアがその視線に耐えかねていても、両者はどこ吹く風と。
――息ができない、潰れそう。
『魔物』
淑女には聞き取れない、魔物は耳を傾けつつもフェレテリアを見すがめている。
『おまえの同胞に遭った、どうしてくれる?』
答えることもせずフェテリアを見すがめている、容赦のなさはいかほどばかりか。
『恩恵授けられず、出涸らし』
魔物は人、人間をうっかりで倒してしまう個体が多いとされているがなぜか喰らわない個体がいる。
それが、淑女の持っている知識だ。
『薬師を知っているか?』
魔物はどうでもよさげな様子で、静かに人物の声に耳を傾けている。
フードの人物は魔物の姿を認めてはいる、しかしお互いどこ吹く風。
『果敢なき刹那、その慰めは弦楽器と高音』
閑話休題。
『堰月の災厄には?』
首肯した魔物、よく見るとターパンの陰に隠れて火傷跡があった。
さて、整理しようか。
魔物の火傷跡は何者かに焼かれた時だ、二つの世界のとある贈り物を守ろうとした時にできたもの。
魔物はそれを堪えていた、怨毒が己の身体をむしばもうとも構わず。
だからか、いきり立っていたが同胞が秘かに鎮めていたのだろう。
『怨恨の浮上の困難さ、和ぎ』
不気味な笑みを浮かべていたよ、あの魔物は。
さぞや器用に目元に笑みを作れるものなんだね、感心感心。
でもまだ、詰めが甘かったようだよ、偶然のフェレテリア。
それは認められないのだけれどね、怨恨どころじゃないだろうし。
一本の蔓がカンナムギヤイタに絡みついてくる、まるで抑えの利かない顰蹙を買う時のように。
『カナタマイカンナムソイツァマカラムギカンナムグサ』というのは、一つの世界に一つか二つかしかない貴重な薬草で。
『かの潔癖な令嬢』はそれをうっかり採ってしまった、ともいえるだろう。
『絡むは毒、はたまた誤った正義』
淑女は夢見ていた、母君の妹で自らの母親とともに叔父の死の真相を探ることを。
しかし、何者かの妨害により危険だと判断した母親の妙なる機転で淑女は今。
けれどもうまくいかないようで、世知辛いことだろう。
フェテリアはフードの人物、先程の剣をふるっていた人物と魔物とも相対していた。
『…』
魔物が淑女の方へと顔を向け、ターパンで口を隠したままに。
目元で笑みを作るが、何処か目元が笑っていない。
『…』
剣をふるっていた人物は先程から無言だ、フェテリアは気まずく思った。
話しかけようと思っても、放つオーラが剣呑なので委縮してしまう。
『…』
フードの人物は先程と同じく、フェレテリアの方を見ておらず。
魔物の方を見通しているような、重い空気を叩き出しているようだ。
『淑女は何を知らず、晴らさずその場で』
フェレテリアがその視線に耐えかねていても、両者はどこ吹く風と。
――息ができない、潰れそう。
『魔物』
淑女には聞き取れない、魔物は耳を傾けつつもフェレテリアを見すがめている。
『おまえの同胞に遭った、どうしてくれる?』
答えることもせずフェテリアを見すがめている、容赦のなさはいかほどばかりか。
『恩恵授けられず、出涸らし』
魔物は人、人間をうっかりで倒してしまう個体が多いとされているがなぜか喰らわない個体がいる。
それが、淑女の持っている知識だ。
『薬師を知っているか?』
魔物はどうでもよさげな様子で、静かに人物の声に耳を傾けている。
フードの人物は魔物の姿を認めてはいる、しかしお互いどこ吹く風。
『果敢なき刹那、その慰めは弦楽器と高音』
閑話休題。
『堰月の災厄には?』
首肯した魔物、よく見るとターパンの陰に隠れて火傷跡があった。
さて、整理しようか。
魔物の火傷跡は何者かに焼かれた時だ、二つの世界のとある贈り物を守ろうとした時にできたもの。
魔物はそれを堪えていた、怨毒が己の身体をむしばもうとも構わず。
だからか、いきり立っていたが同胞が秘かに鎮めていたのだろう。
『怨恨の浮上の困難さ、和ぎ』
不気味な笑みを浮かべていたよ、あの魔物は。
さぞや器用に目元に笑みを作れるものなんだね、感心感心。
でもまだ、詰めが甘かったようだよ、偶然のフェレテリア。
それは認められないのだけれどね、怨恨どころじゃないだろうし。
一本の蔓がカンナムギヤイタに絡みついてくる、まるで抑えの利かない顰蹙を買う時のように。
『カナタマイカンナムソイツァマカラムギカンナムグサ』というのは、一つの世界に一つか二つかしかない貴重な薬草で。
『かの潔癖な令嬢』はそれをうっかり採ってしまった、ともいえるだろう。
『絡むは毒、はたまた誤った正義』
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる