壁ドンの壁

田×四

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お姫様抱っこであがる悲鳴は様々

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「はっちゃんはっちゃん、お姫様抱っこは乙女の夢なんだって。だから、俺にもお姫様抱っこをお願いできますか? 三十回のスクワット付きで」

 いつものことだか、また高俊たかとしが妙なことを言い始めた。
 しかもスクワット付き。軽いいじめか?
 俺よりも高俊は背が低くて華奢だが、決して高俊は乙女ではない。
 であるのに、「だから、俺にも」と続くのは意味不明だが、体格差的には実現可能な願いだ。
 お・ね・が・い、という高俊の上目遣いに俺は弱い。
 高俊の願いは俺が叶える。
 壊れ物のように大切に抱くと心に誓う。

「それではプリンセス、お体に触れますよ」

 紳士然としてやや腰をおろし、左腕を高俊の膝裏にかけ、右腕を高俊の背中に回す。
 持ち上げると、高俊が上半身を俺に預けてきた。
 色素の薄い高俊、ふんわりと柔らかな栗色の髪が俺の顔にかかる。
 この時点で、クラスの女子達からキャーという黄色い悲鳴があがっている。
 一部男子からもキャーという謎の悲鳴があがっているが、高俊が女顔なので、おそらくは高俊ファンなのだろう。

「スクワット♪ スクワット♪」

 俺にぎゅっと抱きつく高俊はご機嫌だ。
 俺の腕に包まれる高俊はそこまで重くはないが、軽くもない。

「「「い~ち、に~、さ~ん、よ~ん……」」」

 高俊とクラスメイトのカウントに合わせ、せっせとスクワットする俺。

「ぐおぉ~!!!」

 悲鳴というよりも呻きに近い、俺の声。
 回数二十を超えてくると、流石に足がぷるぷるする。
 明日はまず間違いなく筋肉痛だろう。
 耳元に生暖かい息が吹き込む。

「はっちゃん、がんばって」

 今回はお礼にマッサージをしてもらおうと思う。
 うつぶせでベットに横たわり、俺の体を跨ぐように高俊を臀部に座らせ、ふくらはぎから太ももからケツまでを丁寧に高俊の手で揉み込んでもらうマッサージ。

「ぐおぉ~!!!」

 煩悩にまみれた頭のまま、どうにかスクワット30回をやり終えた。

 「はっちゃん有り難う!」

 ほっぺたにお礼のチューがぷちゅーと贈られ、今日一番の黄色い悲鳴が次々にあがった。
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