いくら練習して労苦しても 才能には勝てないはずなのに

佐村綺羅斗

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終わりの曙

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 最初は「頑張ろう」と思った。 だけどすぐに目の前が真っ暗になった。 自分の未熟さに……


 あれは少年野球クラブを卒団する直前の最後の試合だった。 相手は同じチームの低学年で、来年度に高学年に上がってくる4年生たちもいる。 その紅白戦で彼はいつも守っているキャッチャーの守備に就いた。 結果的に勝ちはしたものの、低学年相手に彼は、バットにかすりもしなかった。たかが紅白戦の試合でミスもくそもないなどと思っていたが、実際はそうではなかった。 みんながみんなというわけではないが、ほぼみんなバットに当ている。少なくとも、一度もボールがバットに当たらなかった選手は彼以外いなかった。 そんな現実に歯の根が合わない。
自分だけおいていかれているということに、以外にも焦る。 それから彼は、チームを卒団して中学での野球で学校のクラブチームに入部するか、それともシニアへ入部するかまだ、悩んでいる途中だった。 みんなは続々と中学の野球チームに入部していき、入部していないのはとうとう俺だけになった。(また出遅れたな……)だんだんと未熟な自分が嫌になってくる。何なのだろうかこの感情は。この時から彼は、こんな気持ちになるのが大嫌いになっていた。もうその時点で野球が嫌になっていたのかもしれない。 それから結局、野球部に入るのをやめた。親はやめることに対して、「やめたいなら好きにしなさい」とだけ口にしてほかには何も言わなかった。別にやめたくてやめたわけじゃない。実力の差がありすぎるから諦めただけだ。そう彼は自分に言い聞かせていたのだった。

 
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