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13歳の決心
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何がダメだったんだろうか。 朝起きて一番に考える。が、すぐに考えるのをやめた。「いまさらそんなこと」 最初からわかっていた。自分では釣り合えないことくらい。 またたくまに中学の制服に着替えて、何の変哲もない極普通の朝食を食べ終えると、即座に外へとつながるドアを無言で家の内部が見えないように押し込んだ。 いつからだろうか。仲の良かった友達と気まずくなったのは。いや、共に野球をプレーした仲間を避けるようになった。というほうが正しいか。小学校を卒業してからもう一か月が過ぎたのだ。そのグダグダな関係も、そろそろ慣れてくれるといいのだが。 学校に行く途中、朝から硬式ボールで壁当てをしている中学生らしき生徒がいる。 朝から劣等感に自分が襲われそうになってしまう。朝っぱらから、しかも硬球で。頑張るやつは違うなと改めて思い知らされる。彼はこんな心情になるのが大嫌いだ。「やってらんねーよ」壁当てをしている生徒に向かって言い捨てた。
ちゃっと上履きに履き替えて、目立たないように後ろの入り口から教室に入る。窓際の自分の席に座って外を眺めると、またもや野球をしている奴らがいて、倦まずにはいられない。(あぁ……疲れた)学校に来て早々そんなことを思っていると、不意に見知らぬ奴から声をかけられた。「君、野球やってたよね」驚いた。まさか自分が別のクラスの奴から声を掛けられるとは。そんな本質のない驚きが最初にきてしまうものの、本来の疑問が後から頭を何度もよぎる。何故自分が野球をやっていたことを知っているのか、彼は一体誰なのか。それからひとしきり頭を整理して頷く。何はともあれ嘘をついたところで、騙せないことくらい、この雰囲気からしたら承知の上だ。だから結局、正直に頷くしかなかった。「じゃあ何で今はやってないの?」たちどころにされたくない質問をされて、思わずそいつを睨んでしまう。答えたくないということを察してくれたのかと思えば、今度は意図不明な提案をしてきた。「うちのチームに入らない?」「……は?」そんなオファーを断ることに何故か、尻込みしてしまって秩序を失ってしまう。最初の一言が出てこない。もしかしたら自分は野球ができることに浮かれてしまっているのかもしれない。でも何かが引っかかって言葉が引っ込んでしまう。「……なんで?」やっとの思いでとりあえずそう聞いてみる。「なら逆に聞くけど君は野球やりたくないの?」またも答えにくいことを聞いてくるのでそのまま黙り込んでしまった。 しばらく二人の会話に沈黙が続いたが、その少年はそれ以上、なにも質問してこなかった。「今日の放課後校庭来てね!」とだけ最後に言い残して、返事をする間もなく、教室を出て行ってしまった。
ちゃっと上履きに履き替えて、目立たないように後ろの入り口から教室に入る。窓際の自分の席に座って外を眺めると、またもや野球をしている奴らがいて、倦まずにはいられない。(あぁ……疲れた)学校に来て早々そんなことを思っていると、不意に見知らぬ奴から声をかけられた。「君、野球やってたよね」驚いた。まさか自分が別のクラスの奴から声を掛けられるとは。そんな本質のない驚きが最初にきてしまうものの、本来の疑問が後から頭を何度もよぎる。何故自分が野球をやっていたことを知っているのか、彼は一体誰なのか。それからひとしきり頭を整理して頷く。何はともあれ嘘をついたところで、騙せないことくらい、この雰囲気からしたら承知の上だ。だから結局、正直に頷くしかなかった。「じゃあ何で今はやってないの?」たちどころにされたくない質問をされて、思わずそいつを睨んでしまう。答えたくないということを察してくれたのかと思えば、今度は意図不明な提案をしてきた。「うちのチームに入らない?」「……は?」そんなオファーを断ることに何故か、尻込みしてしまって秩序を失ってしまう。最初の一言が出てこない。もしかしたら自分は野球ができることに浮かれてしまっているのかもしれない。でも何かが引っかかって言葉が引っ込んでしまう。「……なんで?」やっとの思いでとりあえずそう聞いてみる。「なら逆に聞くけど君は野球やりたくないの?」またも答えにくいことを聞いてくるのでそのまま黙り込んでしまった。 しばらく二人の会話に沈黙が続いたが、その少年はそれ以上、なにも質問してこなかった。「今日の放課後校庭来てね!」とだけ最後に言い残して、返事をする間もなく、教室を出て行ってしまった。
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