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03.リョウ
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この街を出よう。
あの女にカードを渡された翌日も、男は未練たらしく組合本部付近に赴いた。
当然のごとく女を見つけることはできず、その日の夜、適当に入った酒場で男は酒を飲みながらそう思った。
瞳が紫という多少毛色は違うものの、たかが色無しの女1人に何を自分はこんなにも執着しているのか。
明日この街を出て、あの女のことは忘れよう。
そう思いながら、男は目だけで店内を見渡した。
明らかに組合員だと分かる、何かしらの武器を見に付けた粗野な男たちで溢れた店内。
昨日買った女といい、この店といい、己に「適当」と言い聞かせているが、その実違うことは自分が一番分かっていた。
この店だって、適当になど選んでいない。
わざわざ組合員が多くいる店を選んでいる。
呆れて物が言えないとはまさにこのことだなと、内心自嘲しながら男が煙草に火をつける。
また今日も適当に女を買うかと、不味そうに酒を飲み干した男が席を立とうとした時、男のテーブルに組合員らしき男が2人座った。
「おう、お前、あの色無しの女に声掛けてただろ?」
男はそれには何も答えず、無表情で声を掛けて来た組合員の男の顔を見つめ、煙草の煙を吐き出した。
何も答えない男には構わず、組合員の男は続けた。
「悪いことは言わないからあの女に手ぇ出すのははやめとけ。痛い目に合うぞ。」
そうだと言わんばかりに、連れの男も頷く。
「人違いだ。消えろ。」
無表情のまま男がそう言うと、男たちは気分を害したように一瞬黙ったが、すぐに男を睨み付けた。
「人違いなもんか。お前のその目立つ髪の色。昨日、組合本部の近くで色無しの女に声掛けてたのはお前だ。俺たちはこの目でちゃんと見てたんだよ。」
「お前、よその街からきたばっかの新参者だろ?あの女のことを知らねえ奴はよくあいつにちょっかい出すんだよ。」
口々に男たちがまくしたてるのを遮るように、男が能面のような顔で言った。
「不愉快だ。その口を閉じて、とっとと去れ。」
男たちが怒りに顔を歪める。
「てめえ!俺たちゃお前のためを思ってわざわざ教えてやろうとしてんだぞ!いいか!?あの女はな…!」
組合員の男はその先を続けることができなかった。
組合員の男の悲鳴が響き渡り、店内が一瞬静まり返る。
何事かと客たちの視線が集まる中、組合員の男の口に煙草を押し付けたまま、男が相変わらず能面のような顔で言った。
「その口を閉じろと言ったのが分からなかったのか?」
激高した男たちが怒声を上げ、男に殴りかかろうと立ち上がろうとする。
しかし、男たちは立ち上がることができず、怒声もまた男たちの悲鳴に変わった。
手のひらとテーブルを短剣で縫い付けられた男が悲鳴を上げ、頬に短剣の切っ先を突き刺された男が呻く。
周りの客たちの喧嘩をはやし立てる野次や、喧嘩するなら外でやれと言う声を無視し、男は短剣を握っている手首を薙いだ。
頬を切り裂かれて絶叫する組合員を、立ち上がった男が蹴り倒し、手のひらを短剣で縫い付けられているもう1人の組合員の髪を掴むと、テーブルに顔を叩きつけた。
「頼んでもいないことをベラベラとうるさいな、お前ら。」
血を流し、動かなくなった男たちを見下ろした男は、能面の顔でそう言い捨て店を出た。
「あの女がなんだっていうんだ…!」
ロクでもない男の愛人だから手を出すなとでも言いたかったのか。
「クソっ!」
あの女が誰かの愛人だろうが、そうでなかろうが、どちらにせよあの女に関わってもロクなことはない。
明日、街を出る。
男は眠れないまま、安宿の染みだらけの天井を睨み続けて夜を明かした。
翌日、宿を引き払った男は1つだけの小さな荷物を持って、街を出るために歩いていた。
街を出る前に、最後にもう1度だけ。
そう思う自分に殺意さえ抱きながら組合本部まで来たとき、己の目に映ったものが信じられず、男は思わず息を飲んで足を止めた。
男の視線の先―以前、女と大男が組合本部から出てくるのを男が待っていたあの場所で、女が壁にもたれて煙草を吸っていた。
あの日の男のように。
女の足元には数本の吸い殻。
女は男を一瞥すると、吸っていた煙草を足元に捨て、そのまま歩き出した。
男は女の後を静かに歩き出した。
女は後ろを振り返ることなく、前を見据えて歩き続け、やがて以前女が消えた路地に入った。
人気のない路地を行く、ピンと伸びた女の背中を見ながら男は無言で歩き続けた。
どこへ行こうというのだろう。
やはりこの女はロクでもない男に囲われている愛人なのだろうか。
この先で、自分を殺そうとする男たちが待っているとでもいうのだろうか。
別段、何人いようが殺される気はしなかったが、もし殺されてもまあいいかと思った。
どうせロクな死に方はしないと思っているし、この街を出たら死の森へ行こうと思っていた。
もしこの先で死ななかったら。
その時は、この女を犯すのもいいかもしれない。
少し、男の胸が高揚した。
路地に入ってからも、女は1度も振り返らず、何も話さないまま歩いた。
しばらく進むと、ゴミが散乱する誰もいない小さな広場に出た。
女は広場の端にあるゴミ箱の上に足を組んで座ると、煙草を取り出し火を付けた。
男も、女から少し離れた場所で足を止めると煙草に火を付ける。
2人は無言で見つめ合ったまま煙草を吸っていたが、やがて女が口を開いた。
「アイシャの店には行ったのか?」
「…アイシャ?」
「こないだくれてやっただろう。カードの店だ。」
「行ってねえ。」
「なんだ行ってないのか。色無しの女を抱きたかったら行けっていったじゃないか。」
「色無しの女を抱きたいわけじゃない。」
「昨日、男2人を痛めつけたんだってな。」
「知り合いか?」
「顔も知らない。」
その後、女は何も言わず、男を見たまま煙草を吸っていた。
予想に反して誰もいなかった広場。
男が探していることを知っていた女。
男を待っていた女。
男を誰もいない広場に連れて来た女。
男と女が短くなった煙草を足元に捨てる。
もしかしてこの女は。
男が酷薄な笑みを浮かべた。
「なあ。一発ヤらせろよ。」
座っていたゴミ箱から立ち上がった女が、無表情のまま返す。
「色無しの女を抱きたくなったのか?」
「違う。お前をヤりたい。」
女が口の端を釣り上げて笑った。
初めて見た、無表情ではない女の顔。
初めて見た、女の笑顔。
悪くない、と男は思った。
それがたとえ、明確な殺意を持った笑みでも。
「私より弱い男とはヤらない。」
「へえ?なら今すぐヤらせろよ。」
やはりこの女は。
獰猛な笑みを浮かべたまま女が言った。
「だから、死ね。」
あの女にカードを渡された翌日も、男は未練たらしく組合本部付近に赴いた。
当然のごとく女を見つけることはできず、その日の夜、適当に入った酒場で男は酒を飲みながらそう思った。
瞳が紫という多少毛色は違うものの、たかが色無しの女1人に何を自分はこんなにも執着しているのか。
明日この街を出て、あの女のことは忘れよう。
そう思いながら、男は目だけで店内を見渡した。
明らかに組合員だと分かる、何かしらの武器を見に付けた粗野な男たちで溢れた店内。
昨日買った女といい、この店といい、己に「適当」と言い聞かせているが、その実違うことは自分が一番分かっていた。
この店だって、適当になど選んでいない。
わざわざ組合員が多くいる店を選んでいる。
呆れて物が言えないとはまさにこのことだなと、内心自嘲しながら男が煙草に火をつける。
また今日も適当に女を買うかと、不味そうに酒を飲み干した男が席を立とうとした時、男のテーブルに組合員らしき男が2人座った。
「おう、お前、あの色無しの女に声掛けてただろ?」
男はそれには何も答えず、無表情で声を掛けて来た組合員の男の顔を見つめ、煙草の煙を吐き出した。
何も答えない男には構わず、組合員の男は続けた。
「悪いことは言わないからあの女に手ぇ出すのははやめとけ。痛い目に合うぞ。」
そうだと言わんばかりに、連れの男も頷く。
「人違いだ。消えろ。」
無表情のまま男がそう言うと、男たちは気分を害したように一瞬黙ったが、すぐに男を睨み付けた。
「人違いなもんか。お前のその目立つ髪の色。昨日、組合本部の近くで色無しの女に声掛けてたのはお前だ。俺たちはこの目でちゃんと見てたんだよ。」
「お前、よその街からきたばっかの新参者だろ?あの女のことを知らねえ奴はよくあいつにちょっかい出すんだよ。」
口々に男たちがまくしたてるのを遮るように、男が能面のような顔で言った。
「不愉快だ。その口を閉じて、とっとと去れ。」
男たちが怒りに顔を歪める。
「てめえ!俺たちゃお前のためを思ってわざわざ教えてやろうとしてんだぞ!いいか!?あの女はな…!」
組合員の男はその先を続けることができなかった。
組合員の男の悲鳴が響き渡り、店内が一瞬静まり返る。
何事かと客たちの視線が集まる中、組合員の男の口に煙草を押し付けたまま、男が相変わらず能面のような顔で言った。
「その口を閉じろと言ったのが分からなかったのか?」
激高した男たちが怒声を上げ、男に殴りかかろうと立ち上がろうとする。
しかし、男たちは立ち上がることができず、怒声もまた男たちの悲鳴に変わった。
手のひらとテーブルを短剣で縫い付けられた男が悲鳴を上げ、頬に短剣の切っ先を突き刺された男が呻く。
周りの客たちの喧嘩をはやし立てる野次や、喧嘩するなら外でやれと言う声を無視し、男は短剣を握っている手首を薙いだ。
頬を切り裂かれて絶叫する組合員を、立ち上がった男が蹴り倒し、手のひらを短剣で縫い付けられているもう1人の組合員の髪を掴むと、テーブルに顔を叩きつけた。
「頼んでもいないことをベラベラとうるさいな、お前ら。」
血を流し、動かなくなった男たちを見下ろした男は、能面の顔でそう言い捨て店を出た。
「あの女がなんだっていうんだ…!」
ロクでもない男の愛人だから手を出すなとでも言いたかったのか。
「クソっ!」
あの女が誰かの愛人だろうが、そうでなかろうが、どちらにせよあの女に関わってもロクなことはない。
明日、街を出る。
男は眠れないまま、安宿の染みだらけの天井を睨み続けて夜を明かした。
翌日、宿を引き払った男は1つだけの小さな荷物を持って、街を出るために歩いていた。
街を出る前に、最後にもう1度だけ。
そう思う自分に殺意さえ抱きながら組合本部まで来たとき、己の目に映ったものが信じられず、男は思わず息を飲んで足を止めた。
男の視線の先―以前、女と大男が組合本部から出てくるのを男が待っていたあの場所で、女が壁にもたれて煙草を吸っていた。
あの日の男のように。
女の足元には数本の吸い殻。
女は男を一瞥すると、吸っていた煙草を足元に捨て、そのまま歩き出した。
男は女の後を静かに歩き出した。
女は後ろを振り返ることなく、前を見据えて歩き続け、やがて以前女が消えた路地に入った。
人気のない路地を行く、ピンと伸びた女の背中を見ながら男は無言で歩き続けた。
どこへ行こうというのだろう。
やはりこの女はロクでもない男に囲われている愛人なのだろうか。
この先で、自分を殺そうとする男たちが待っているとでもいうのだろうか。
別段、何人いようが殺される気はしなかったが、もし殺されてもまあいいかと思った。
どうせロクな死に方はしないと思っているし、この街を出たら死の森へ行こうと思っていた。
もしこの先で死ななかったら。
その時は、この女を犯すのもいいかもしれない。
少し、男の胸が高揚した。
路地に入ってからも、女は1度も振り返らず、何も話さないまま歩いた。
しばらく進むと、ゴミが散乱する誰もいない小さな広場に出た。
女は広場の端にあるゴミ箱の上に足を組んで座ると、煙草を取り出し火を付けた。
男も、女から少し離れた場所で足を止めると煙草に火を付ける。
2人は無言で見つめ合ったまま煙草を吸っていたが、やがて女が口を開いた。
「アイシャの店には行ったのか?」
「…アイシャ?」
「こないだくれてやっただろう。カードの店だ。」
「行ってねえ。」
「なんだ行ってないのか。色無しの女を抱きたかったら行けっていったじゃないか。」
「色無しの女を抱きたいわけじゃない。」
「昨日、男2人を痛めつけたんだってな。」
「知り合いか?」
「顔も知らない。」
その後、女は何も言わず、男を見たまま煙草を吸っていた。
予想に反して誰もいなかった広場。
男が探していることを知っていた女。
男を待っていた女。
男を誰もいない広場に連れて来た女。
男と女が短くなった煙草を足元に捨てる。
もしかしてこの女は。
男が酷薄な笑みを浮かべた。
「なあ。一発ヤらせろよ。」
座っていたゴミ箱から立ち上がった女が、無表情のまま返す。
「色無しの女を抱きたくなったのか?」
「違う。お前をヤりたい。」
女が口の端を釣り上げて笑った。
初めて見た、無表情ではない女の顔。
初めて見た、女の笑顔。
悪くない、と男は思った。
それがたとえ、明確な殺意を持った笑みでも。
「私より弱い男とはヤらない。」
「へえ?なら今すぐヤらせろよ。」
やはりこの女は。
獰猛な笑みを浮かべたまま女が言った。
「だから、死ね。」
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