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05.リョウ
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申し訳ありません。
昨日、4話目を飛ばして更新していました。
本日4話目を追加しました。
**************************
窓際に置かれた1人用の小さなベッド。その隣の小さな机と椅子。机の上に開いたまま伏せられた読みかけだと分かる本。
部屋の隅に適当に積まれた女の服。その横に脱ぎ散らかされた女の服。
それが女の部屋のすべてだった。
飾り気が一切ない部屋。
この女らしいと男は思った。
女が部屋の奥にある扉の方に歩きながら言った。
「この家に風呂はないんだ。でも、寝室に小さいけどシャワーが付いてる。」
女が扉を開ける。
言葉通り小さな、脱衣所すらない大人が1人入ればいっぱいになるシャワー室がそこにはあった。
「血まみれだからな。さすがにシーツまで血まみれになるのは困る。先に浴びていいぞ。服はその辺で適当に脱げ。」
限界だった。
扉を開け、こちらを見ていた女に大股で歩み寄った男が、女の体を小さなシャワー室に押し込んだ。
女の背中を乱暴に壁に押し付け、シャワーのコックを捻る。
冷たい水が降りかかる中、驚いたように紫の瞳を見開いた女に、男は噛みつくように口付けた。
挑むように女の瞳を見つめながら男が舌をこじ入れると、女が目を閉じて腕を男の首に回した。
降りかかる水が徐々に暖かくなり、狭い室内が湯気で白く煙る中、男は夢中で女の体の感触を味わった。
何をこんなに馬鹿みたいに夢中になっているんだと頭の片隅で思いながらも、男は止められなかった。
女が少し苦しげに、しかし、甘い吐息を吐きながら、己の腕や背中を確かめるように手を這わせるのがたまらなく嬉しかった。
褐色の肌の上を、女の白い手が這うのがとても淫靡に見えた。
女の口を味わいながら、男が背中に指を滑らせたとき、これまでのすべらかで吸い付くような肌の感触とは明らかに異なる感触が、男の指先に伝わってきた。
不思議に思った男がその感触を確かめるように指を動かすと、それに気づいたらしい女が僅かに口を離して囁いた。
「忘れてた。背中にデカい傷がある。」
少し乱れた互いの呼吸を感じることができる距離で、互いの睫毛が触れそうなほどの距離で、男の瞳を真っ直ぐに見つめたまま告げられたその言葉に、男は乱暴に女の体を返して壁に押し付けた。
果たして露わになった女の背中には、その言葉通り傷があった。
象牙色の艶やかな肌の上を走る、まるで何かに引っ掛かれたかのような醜く引き攣った傷。
男に胸を壁に押し付けられたまま、女が顔だけを男に向けて言った。
「子供のころ、魔物にやられたんだ。」
何でもないことのように告げられた言葉を聞きながら、薄紅に染まったその傷跡を男が指先でなぞっていると、女がくすぐったそうに体を捩りながら、少し楽しそうな口調で言葉を続けた。
「その時以来だ。今日みたいに血を流して痛い思いをしたのは。」
痛いのが久しぶりだと言っていたのはこのことだったのか。
気付かないうちに、自分ではない別の男に痛めつけられたのだと勝手に思い込んでいた男は、自分の馬鹿な嫉妬に呆れると同時に、心が高揚した。
女の背中に覆いかぶさるように抱き付いた男が女の傷跡に舌を這わせると、女はまた甘い吐息を吐いた。
少し落ち着けと、沸騰した頭の片隅で思いながら、後ろから抱き締めた女の足の間で指を動かしていた男がぴたりとその動きを止めた。
女が少し不思議そうに男を見やる。
「おい…待て。ちょっと待て。」
少し小首を傾げる女が憎らしく思える。
「俺の勘違いならいい。お前、まさか…。」
言いたいことが分かったのか、女が納得したように「ああ。」と小さく頷き、あっさりと言い放った。
「初めてだぞ。」
この女は何を言っているのか。
唖然とした顔で男が女を凝視し、ざあざあとシャワーの音だけが響いた。
「私より弱い男にはヤらせないっていっただろう。」
さも当然のような口調で言いながら、女が男と向き合う。
女が固まった男を見たまま、シャワーのコックを捻る。
降り注いでいた湯がぴたりと止まった。
「じゃあ、やめよう。」
この女は何を言っているのか。
押し退けるように肩を押して来た女の腕を男が掴み、逃げられないように体を密着させる。
「…誰がやめるって言ったよ。」
「初めての女が嫌なんじゃないのか。」
「誰もそんなこと言ってないだろ。」
じゃあなんだと言わんばかりの顔で見てくる女に苛立ちを覚える。
今更やめるわけがないではないか。
やめられるわけがない。
「初めてなら最初からそう言えよ。それならちゃんとベッドの上で優しく抱いてやったのに。」
嘘だ。
この女を優しく抱く自分が全く想像できなかった。
初めてだと、最初からそう言われたとしても結果は変わらなかったに決まっている。
それを見透かしたかのように、女が挑むような笑みを浮かべた。
男もまた挑むような目で女を見下ろす。
「言えよ。ベッドの上で優しく抱いてってな。今ならまだ間に合うぞ?」
女の答えを予期しながら男がそう言うと、女は男が思った通りの答えを返した。
「ここでいい。」
「お前、頭おかしいだろ。」
「よく言われる。」
挑むような笑みを浮かべていた女が真顔になり、「でも。」と続けた。
「この世界と私。どっちが狂っているのか。よくそう思う。」
まるで、お前もそうだろうと言わんばかりの紫の瞳。
そうだ。
やはりお前は。
俺と同類だ。
「奇遇だな。俺もだ。」
女が男の顔を両手で包み、噛みつくように口付けてきた。
その瞬間、男は我を忘れた。
身を捩り、甘い吐息を吐きはするものの、これまで1度も声を出さなかった女が、初めて小さく呻くような声を上げた。
男の胸に、昏い悦びが満ちた。
昨日、4話目を飛ばして更新していました。
本日4話目を追加しました。
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窓際に置かれた1人用の小さなベッド。その隣の小さな机と椅子。机の上に開いたまま伏せられた読みかけだと分かる本。
部屋の隅に適当に積まれた女の服。その横に脱ぎ散らかされた女の服。
それが女の部屋のすべてだった。
飾り気が一切ない部屋。
この女らしいと男は思った。
女が部屋の奥にある扉の方に歩きながら言った。
「この家に風呂はないんだ。でも、寝室に小さいけどシャワーが付いてる。」
女が扉を開ける。
言葉通り小さな、脱衣所すらない大人が1人入ればいっぱいになるシャワー室がそこにはあった。
「血まみれだからな。さすがにシーツまで血まみれになるのは困る。先に浴びていいぞ。服はその辺で適当に脱げ。」
限界だった。
扉を開け、こちらを見ていた女に大股で歩み寄った男が、女の体を小さなシャワー室に押し込んだ。
女の背中を乱暴に壁に押し付け、シャワーのコックを捻る。
冷たい水が降りかかる中、驚いたように紫の瞳を見開いた女に、男は噛みつくように口付けた。
挑むように女の瞳を見つめながら男が舌をこじ入れると、女が目を閉じて腕を男の首に回した。
降りかかる水が徐々に暖かくなり、狭い室内が湯気で白く煙る中、男は夢中で女の体の感触を味わった。
何をこんなに馬鹿みたいに夢中になっているんだと頭の片隅で思いながらも、男は止められなかった。
女が少し苦しげに、しかし、甘い吐息を吐きながら、己の腕や背中を確かめるように手を這わせるのがたまらなく嬉しかった。
褐色の肌の上を、女の白い手が這うのがとても淫靡に見えた。
女の口を味わいながら、男が背中に指を滑らせたとき、これまでのすべらかで吸い付くような肌の感触とは明らかに異なる感触が、男の指先に伝わってきた。
不思議に思った男がその感触を確かめるように指を動かすと、それに気づいたらしい女が僅かに口を離して囁いた。
「忘れてた。背中にデカい傷がある。」
少し乱れた互いの呼吸を感じることができる距離で、互いの睫毛が触れそうなほどの距離で、男の瞳を真っ直ぐに見つめたまま告げられたその言葉に、男は乱暴に女の体を返して壁に押し付けた。
果たして露わになった女の背中には、その言葉通り傷があった。
象牙色の艶やかな肌の上を走る、まるで何かに引っ掛かれたかのような醜く引き攣った傷。
男に胸を壁に押し付けられたまま、女が顔だけを男に向けて言った。
「子供のころ、魔物にやられたんだ。」
何でもないことのように告げられた言葉を聞きながら、薄紅に染まったその傷跡を男が指先でなぞっていると、女がくすぐったそうに体を捩りながら、少し楽しそうな口調で言葉を続けた。
「その時以来だ。今日みたいに血を流して痛い思いをしたのは。」
痛いのが久しぶりだと言っていたのはこのことだったのか。
気付かないうちに、自分ではない別の男に痛めつけられたのだと勝手に思い込んでいた男は、自分の馬鹿な嫉妬に呆れると同時に、心が高揚した。
女の背中に覆いかぶさるように抱き付いた男が女の傷跡に舌を這わせると、女はまた甘い吐息を吐いた。
少し落ち着けと、沸騰した頭の片隅で思いながら、後ろから抱き締めた女の足の間で指を動かしていた男がぴたりとその動きを止めた。
女が少し不思議そうに男を見やる。
「おい…待て。ちょっと待て。」
少し小首を傾げる女が憎らしく思える。
「俺の勘違いならいい。お前、まさか…。」
言いたいことが分かったのか、女が納得したように「ああ。」と小さく頷き、あっさりと言い放った。
「初めてだぞ。」
この女は何を言っているのか。
唖然とした顔で男が女を凝視し、ざあざあとシャワーの音だけが響いた。
「私より弱い男にはヤらせないっていっただろう。」
さも当然のような口調で言いながら、女が男と向き合う。
女が固まった男を見たまま、シャワーのコックを捻る。
降り注いでいた湯がぴたりと止まった。
「じゃあ、やめよう。」
この女は何を言っているのか。
押し退けるように肩を押して来た女の腕を男が掴み、逃げられないように体を密着させる。
「…誰がやめるって言ったよ。」
「初めての女が嫌なんじゃないのか。」
「誰もそんなこと言ってないだろ。」
じゃあなんだと言わんばかりの顔で見てくる女に苛立ちを覚える。
今更やめるわけがないではないか。
やめられるわけがない。
「初めてなら最初からそう言えよ。それならちゃんとベッドの上で優しく抱いてやったのに。」
嘘だ。
この女を優しく抱く自分が全く想像できなかった。
初めてだと、最初からそう言われたとしても結果は変わらなかったに決まっている。
それを見透かしたかのように、女が挑むような笑みを浮かべた。
男もまた挑むような目で女を見下ろす。
「言えよ。ベッドの上で優しく抱いてってな。今ならまだ間に合うぞ?」
女の答えを予期しながら男がそう言うと、女は男が思った通りの答えを返した。
「ここでいい。」
「お前、頭おかしいだろ。」
「よく言われる。」
挑むような笑みを浮かべていた女が真顔になり、「でも。」と続けた。
「この世界と私。どっちが狂っているのか。よくそう思う。」
まるで、お前もそうだろうと言わんばかりの紫の瞳。
そうだ。
やはりお前は。
俺と同類だ。
「奇遇だな。俺もだ。」
女が男の顔を両手で包み、噛みつくように口付けてきた。
その瞬間、男は我を忘れた。
身を捩り、甘い吐息を吐きはするものの、これまで1度も声を出さなかった女が、初めて小さく呻くような声を上げた。
男の胸に、昏い悦びが満ちた。
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