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78 会いたくなったから
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心許なく口寂しさが拭えなくなった冬次は帰宅せず、気づけば南雲に会いにきていた。道路に佇んで屋敷を見上げ、迷っていた。
でも兄貴が会っていいって言ってたしと結論づけインターホンに指を伸ばしやめる。
「アホか俺は。普通のお友達んちに遊びに来たんじゃないんだぞ」
スマホを持って、座間に電話をかけた。しばらくのコールの後、座間が応答する。
「・・・・・・何時だと思ってんの」
「座間っち涼くんとこで仕事中でしょ。屋敷の前にいるから、あーけーて」
「まじで何時だと思ってんの⁈」
お怒りはごもっとも。
「やほー」
冬次は防犯カメラに手をふった。
「おい、押しかけてきても入れてやれないぞ」
「兄貴に面会許可もらったよ。確認してみたら」
防犯カメラに手をふり続けていると鍵があいた。
「近所迷惑になる。やめろ」
「どうもどうも」
冬次はありがたく中へ入れてもらう。
「なんかあったか。無理してないか」
「んー。はは、わかっちゃう?」
谷峨にかかってる疑惑を打ち明けてしまいたいが、座間にだけは言えない。谷峨が無実ならこちらへの信用を失くすだろうし、裏切り者なら幼馴染の座間にも怪しまなければいけない部分が隠れているかもしれない。冬次は心の中でお前はどっちだと問いかけた。
「なんだよ。涼くんに会いにきたんだろ。起きてるよ」
座間が地下室の階段を指した。住まう屋敷を移されたので間取りは変わったが、一般家庭にそぐわない不気味な地下室行きの階段が今はもう冬次に馴染み深さを感じさせる。
冬次はゆっくり階段をおり、ドアをノックした。
南雲が室内のマイク越しに喋る。
「誰。邪魔しないで」
スピーカーの下にスイッチがあった。これで室内に声を届けられるらしい。
「俺だよ」
「おっさんかよ⋯⋯入れば」
「どうもありがとう」
新しい地下室もじゅうぶんな広さがあるわりに圧迫感を感じる薄暗さだった。もぐら生活を何不自由なく満喫する南雲少年は冬次の急な訪問に興味がないようで空気同然の扱いをする。冬次は彼の時間を邪魔するつもりはなく座れそうな場所に勝手に腰をおろして見ていた。南雲はこの間も会話する暇はないと背中で語り、もくもく机にむかっていたが、不意にガクンと頭が揺れた。
「おーい、眠いならベッドに行きなよ」
「うるさい」
「そう?」
しかしその数分後また南雲の頭が揺れた。今度は頭を支えきれずに机に肘をついて苦しそうに息をしている。明らかに異常な様子だ。
「ごめんね、ちょっとそっち行くよ」
机に近づいて冬次は血の気が引く。南雲の体からいつも完璧に封じられているはずの甘ったるい匂いがする。
「これってヒートだよな」
冬次は鼻を手で覆った。
机の上に南雲が握っていられず落とした鉛筆が転がる。
「最近ずっと微熱が続いてて⋯⋯」
「それ座間に伝えた?」
「言ってない」
冬次は愕然としたが、気を取り直して息を止めたまま近づき南雲を抱き上げた。
「触ってごめんな。緊急事態だから」
ベッドに南雲をおろし、体の横に手をつく。
「おっ⋯⋯さん」
「うん。何もしない」
少し吸っただけで目眩を引きおこす香りに理性の自由が効きづらくなるのを感じる。ふらついてしまった手に気合を入れ、体を起こしベッドから離れた。
「俺はこのこと座間に報告してくるから」
南雲はカタツムリのように布団をかぶりうなずいた。冬次はうなずき返してドアに手をかけたが、出ていく寸前に南雲が蚊の泣くような声で待ってと言ったのが聞こえ振り向く。
「あんたの匂いがする」
「うん。そうだよ。こう見えておっさんアルファだからね。だから早く出てったほうがいいでしょ?」
「匂いが離れてくのやだ⋯⋯」
でも兄貴が会っていいって言ってたしと結論づけインターホンに指を伸ばしやめる。
「アホか俺は。普通のお友達んちに遊びに来たんじゃないんだぞ」
スマホを持って、座間に電話をかけた。しばらくのコールの後、座間が応答する。
「・・・・・・何時だと思ってんの」
「座間っち涼くんとこで仕事中でしょ。屋敷の前にいるから、あーけーて」
「まじで何時だと思ってんの⁈」
お怒りはごもっとも。
「やほー」
冬次は防犯カメラに手をふった。
「おい、押しかけてきても入れてやれないぞ」
「兄貴に面会許可もらったよ。確認してみたら」
防犯カメラに手をふり続けていると鍵があいた。
「近所迷惑になる。やめろ」
「どうもどうも」
冬次はありがたく中へ入れてもらう。
「なんかあったか。無理してないか」
「んー。はは、わかっちゃう?」
谷峨にかかってる疑惑を打ち明けてしまいたいが、座間にだけは言えない。谷峨が無実ならこちらへの信用を失くすだろうし、裏切り者なら幼馴染の座間にも怪しまなければいけない部分が隠れているかもしれない。冬次は心の中でお前はどっちだと問いかけた。
「なんだよ。涼くんに会いにきたんだろ。起きてるよ」
座間が地下室の階段を指した。住まう屋敷を移されたので間取りは変わったが、一般家庭にそぐわない不気味な地下室行きの階段が今はもう冬次に馴染み深さを感じさせる。
冬次はゆっくり階段をおり、ドアをノックした。
南雲が室内のマイク越しに喋る。
「誰。邪魔しないで」
スピーカーの下にスイッチがあった。これで室内に声を届けられるらしい。
「俺だよ」
「おっさんかよ⋯⋯入れば」
「どうもありがとう」
新しい地下室もじゅうぶんな広さがあるわりに圧迫感を感じる薄暗さだった。もぐら生活を何不自由なく満喫する南雲少年は冬次の急な訪問に興味がないようで空気同然の扱いをする。冬次は彼の時間を邪魔するつもりはなく座れそうな場所に勝手に腰をおろして見ていた。南雲はこの間も会話する暇はないと背中で語り、もくもく机にむかっていたが、不意にガクンと頭が揺れた。
「おーい、眠いならベッドに行きなよ」
「うるさい」
「そう?」
しかしその数分後また南雲の頭が揺れた。今度は頭を支えきれずに机に肘をついて苦しそうに息をしている。明らかに異常な様子だ。
「ごめんね、ちょっとそっち行くよ」
机に近づいて冬次は血の気が引く。南雲の体からいつも完璧に封じられているはずの甘ったるい匂いがする。
「これってヒートだよな」
冬次は鼻を手で覆った。
机の上に南雲が握っていられず落とした鉛筆が転がる。
「最近ずっと微熱が続いてて⋯⋯」
「それ座間に伝えた?」
「言ってない」
冬次は愕然としたが、気を取り直して息を止めたまま近づき南雲を抱き上げた。
「触ってごめんな。緊急事態だから」
ベッドに南雲をおろし、体の横に手をつく。
「おっ⋯⋯さん」
「うん。何もしない」
少し吸っただけで目眩を引きおこす香りに理性の自由が効きづらくなるのを感じる。ふらついてしまった手に気合を入れ、体を起こしベッドから離れた。
「俺はこのこと座間に報告してくるから」
南雲はカタツムリのように布団をかぶりうなずいた。冬次はうなずき返してドアに手をかけたが、出ていく寸前に南雲が蚊の泣くような声で待ってと言ったのが聞こえ振り向く。
「あんたの匂いがする」
「うん。そうだよ。こう見えておっさんアルファだからね。だから早く出てったほうがいいでしょ?」
「匂いが離れてくのやだ⋯⋯」
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