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63 そんな朝
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「え、ふふ、どしたの?」
七草を好きになりたい。
好きになれたら罪悪感を抱かないで済む。
苦しめないで済む。
「いいの? 冬次さんから来てくれるなら僕は止めませんよ?」
冬次は七草の首筋に鼻をこすりつけた。密着すれば自ずとフェロモンが濃く感じとれ、心と関係なくオメガを求める反応が下半身に兆しはじめる。
「ん・・・・・・ぅ、ネックガード外す・・・・・・?」
冬次は頭を支配する葛藤を抑えこみ、動きを止めた。
七草は切なげに笑う。瞳に居座り続ける逡巡を、七草に見られてしまった。
「言ってみただけ。嘘ですよ~」
明るく言う七草が泣いているように思えて、目尻を親指の腹でぬぐう。指は濡れなかったが、七草はびっくりした表情の後で、いっそう悲しい顔をした。
冬次には沈んでしまった心を掬いあげる資格も、慰める資格もない。
かけてやる言葉を思いつけないまま、自分のせいで苦しむ七草を壊れ物のように抱きしめた。
それから顔を近づけ、唇にキスを落とす。
軽く触れたキスは、しだいに深く重なった。冬次は七草の頭の後ろを手で包むと離れないように押さえ、七草は冬次の首に腕をまわした。
「ふ、ぁ、ン・・・・・・」
七草が苦しげに胸を押す。
「もっと」
と、冬次は七草の顎を上向かせた。
キスで自分の心も変わればいいのにと乞いながら、唇を割り、口の中に舌を滑りこませる。時間を頭から排除して、仕事も環境も頭から排除して、言葉が必要な瞬間を一秒も作りたくない。
熱い舌にしたたる唾液をすすり、唇をかぶせ、酸欠で頭がクラクラするほど唇だけで繋がりあう行為に没頭する。
冬次は情動を手綱のように頼りにして身を任せ、だが急に七草の体がぐにゃんと柔らかくなり、我にかえった。
七草がぐったりと冬次の肩に頭をのせ、大きく喘いだ。
「はぁ・・・・・・はぁ——・・・・・・」
「無理させた」
「んーん、嬉しい。もっとする?」
溶けそうに熱に浮かされた瞳で見上げられ、喉がゴクリと鳴る。
これ以上進めば止まれなくなる黄色信号だ。
頬に触れると、七草の体がヒート同様に発熱しはじめていた。熱せられたフェロモンが甘ったるく鼻腔に絡みつく。
冬次の股間はすでに下着を持ちあげて固くそり返り、七草の中に入りたいとウズウズしていた。さらにはうなじを噛みたい衝動で歯茎がムズムズしてくる。フェロモンに充てられて、いつ抗えなくなるかわかったもんじゃない。
「俺の・・・・・・オメガ・・・・・・」
やばい。頭が朦朧としてきた。視界が狭まって七草のまわりが歪んでぼやけて見える。
「うん。はぁ、そうだよ、いいんだよ冬次さん」
後ろに押し倒そうと力を込めた冬次の手に七草は頬擦りし、自らキッチンに腰を反らせてキッチンに乗りあげた。
「おいで。僕のこと貰って?」
うっとりと声をかけられ、足が前に出る。首に糸を仕込まれたわけでもあるまいし、ついに頭が変になったと思わずにいられなかった。糸で誘導されるみたいにまっすぐ引かれて、七草の腕に吸いこまれる。
「好きです冬次さん」
七草の吐息が耳をくすぐる。冬次は密着した腰を押しつけ、昂りを腹に擦りつけた。
「あっ、あ」
膝裏に手を入れて足をひらかせ、股間どうしを擦りあわせると、七草が腰を浮かし、濡れた尻に冬次の昂りが当たるよう誘う。
そこを往復させると、布越しにもぐっしょり濡れているのがわかり、冬次は七草のズボンに手をかけていた。
起きた時点でパジャマからジーンズに着替えていた七草のズボンを引きちぎるように抜きとり、下着をずらしアナルを露出させる。
下の着衣を全部脱がすわずかな時間も待てなかった。濡れた孔は小さくキュッと閉じているが、とめどなく愛液をトロトロと溢れさせ、孔のまわりを指先でなぞると柔らかい。
「う・・・・・・っ」
七草の体がビクッと震え、冬次は一瞬手を引いた。
しかし七草が冬次の手首を掴んで自身のそこへ引き戻し、顔を真っ赤にしながら冬次の指を中へ押しこんだ。
「・・・・・・ううっ」
つぷっと、第一関節ほどまで埋まった指先は温かい場所に締めつけられ、柔らかく気持ちがよかった。
ここに指でなく性器を突っ込んでみたい。
そのための体の部位なのだから、そうするのが自然な流れというものだろう。
指先をさらに深く埋めクニクニと動かすと、中がうねる。外へ押し出そうとする力に逆らって、指を抜き差し繰り返した。
「ン、あっ、ふああ・・・・・っ」
ビクビク震えていた七草のつま先がピンと伸びる。
我慢できずあふれた声に、理性のリミッターが完全に外れた。
大丈夫だ。普通の行為なんだ。合意のアルファとオメガの自然な姿だ。
心臓が胸を激しく叩いている音がまるで聞こえないくらいに冬次の全部が七草に向けられていた。けれども冬次が自身の部屋着に手をかけた時、反対の感情が脳裏をよぎった。
頭の中でこちらを見ているのは高校の制服を着た冬次。
絡みあうふたりを見つめている高校生の自分が、「本当にそこを越えていいの?」と冬次を指さす。間抜けな顔でパンツを下ろそうとする大人の冬次は自分自身を見下ろすと理性を取り戻した。頭をショートさせていた興奮と熱があっけなく冷めていく。
「・・・・・・善光くん、俺のこと殴ってよ」
冬次は着ていたシャツを脱ぎ、七草の下半身に覆いかける。
「最低なことした。だから思いっきり殴ってくれ」
七草は引き裂かれたようなしい目で冬次を見つめ、首を横にふった。
「できないよ」
「でも」
「怒ってませんから。けど、今日は帰ってくれますか。この状態で一緒にいるのは辛いので」
そして膝を抱え、冬次のシャツに鼻をうずめる。
「ごめん」
「発情しちゃった体を冷まさないと僕だけ恥ずかしいやつだよね。帰る前にシャワー浴びるならどうぞ」
七草は気丈に明るく言って笑うと、寝室に閉じこってしまった。
七草を好きになりたい。
好きになれたら罪悪感を抱かないで済む。
苦しめないで済む。
「いいの? 冬次さんから来てくれるなら僕は止めませんよ?」
冬次は七草の首筋に鼻をこすりつけた。密着すれば自ずとフェロモンが濃く感じとれ、心と関係なくオメガを求める反応が下半身に兆しはじめる。
「ん・・・・・・ぅ、ネックガード外す・・・・・・?」
冬次は頭を支配する葛藤を抑えこみ、動きを止めた。
七草は切なげに笑う。瞳に居座り続ける逡巡を、七草に見られてしまった。
「言ってみただけ。嘘ですよ~」
明るく言う七草が泣いているように思えて、目尻を親指の腹でぬぐう。指は濡れなかったが、七草はびっくりした表情の後で、いっそう悲しい顔をした。
冬次には沈んでしまった心を掬いあげる資格も、慰める資格もない。
かけてやる言葉を思いつけないまま、自分のせいで苦しむ七草を壊れ物のように抱きしめた。
それから顔を近づけ、唇にキスを落とす。
軽く触れたキスは、しだいに深く重なった。冬次は七草の頭の後ろを手で包むと離れないように押さえ、七草は冬次の首に腕をまわした。
「ふ、ぁ、ン・・・・・・」
七草が苦しげに胸を押す。
「もっと」
と、冬次は七草の顎を上向かせた。
キスで自分の心も変わればいいのにと乞いながら、唇を割り、口の中に舌を滑りこませる。時間を頭から排除して、仕事も環境も頭から排除して、言葉が必要な瞬間を一秒も作りたくない。
熱い舌にしたたる唾液をすすり、唇をかぶせ、酸欠で頭がクラクラするほど唇だけで繋がりあう行為に没頭する。
冬次は情動を手綱のように頼りにして身を任せ、だが急に七草の体がぐにゃんと柔らかくなり、我にかえった。
七草がぐったりと冬次の肩に頭をのせ、大きく喘いだ。
「はぁ・・・・・・はぁ——・・・・・・」
「無理させた」
「んーん、嬉しい。もっとする?」
溶けそうに熱に浮かされた瞳で見上げられ、喉がゴクリと鳴る。
これ以上進めば止まれなくなる黄色信号だ。
頬に触れると、七草の体がヒート同様に発熱しはじめていた。熱せられたフェロモンが甘ったるく鼻腔に絡みつく。
冬次の股間はすでに下着を持ちあげて固くそり返り、七草の中に入りたいとウズウズしていた。さらにはうなじを噛みたい衝動で歯茎がムズムズしてくる。フェロモンに充てられて、いつ抗えなくなるかわかったもんじゃない。
「俺の・・・・・・オメガ・・・・・・」
やばい。頭が朦朧としてきた。視界が狭まって七草のまわりが歪んでぼやけて見える。
「うん。はぁ、そうだよ、いいんだよ冬次さん」
後ろに押し倒そうと力を込めた冬次の手に七草は頬擦りし、自らキッチンに腰を反らせてキッチンに乗りあげた。
「おいで。僕のこと貰って?」
うっとりと声をかけられ、足が前に出る。首に糸を仕込まれたわけでもあるまいし、ついに頭が変になったと思わずにいられなかった。糸で誘導されるみたいにまっすぐ引かれて、七草の腕に吸いこまれる。
「好きです冬次さん」
七草の吐息が耳をくすぐる。冬次は密着した腰を押しつけ、昂りを腹に擦りつけた。
「あっ、あ」
膝裏に手を入れて足をひらかせ、股間どうしを擦りあわせると、七草が腰を浮かし、濡れた尻に冬次の昂りが当たるよう誘う。
そこを往復させると、布越しにもぐっしょり濡れているのがわかり、冬次は七草のズボンに手をかけていた。
起きた時点でパジャマからジーンズに着替えていた七草のズボンを引きちぎるように抜きとり、下着をずらしアナルを露出させる。
下の着衣を全部脱がすわずかな時間も待てなかった。濡れた孔は小さくキュッと閉じているが、とめどなく愛液をトロトロと溢れさせ、孔のまわりを指先でなぞると柔らかい。
「う・・・・・・っ」
七草の体がビクッと震え、冬次は一瞬手を引いた。
しかし七草が冬次の手首を掴んで自身のそこへ引き戻し、顔を真っ赤にしながら冬次の指を中へ押しこんだ。
「・・・・・・ううっ」
つぷっと、第一関節ほどまで埋まった指先は温かい場所に締めつけられ、柔らかく気持ちがよかった。
ここに指でなく性器を突っ込んでみたい。
そのための体の部位なのだから、そうするのが自然な流れというものだろう。
指先をさらに深く埋めクニクニと動かすと、中がうねる。外へ押し出そうとする力に逆らって、指を抜き差し繰り返した。
「ン、あっ、ふああ・・・・・っ」
ビクビク震えていた七草のつま先がピンと伸びる。
我慢できずあふれた声に、理性のリミッターが完全に外れた。
大丈夫だ。普通の行為なんだ。合意のアルファとオメガの自然な姿だ。
心臓が胸を激しく叩いている音がまるで聞こえないくらいに冬次の全部が七草に向けられていた。けれども冬次が自身の部屋着に手をかけた時、反対の感情が脳裏をよぎった。
頭の中でこちらを見ているのは高校の制服を着た冬次。
絡みあうふたりを見つめている高校生の自分が、「本当にそこを越えていいの?」と冬次を指さす。間抜けな顔でパンツを下ろそうとする大人の冬次は自分自身を見下ろすと理性を取り戻した。頭をショートさせていた興奮と熱があっけなく冷めていく。
「・・・・・・善光くん、俺のこと殴ってよ」
冬次は着ていたシャツを脱ぎ、七草の下半身に覆いかける。
「最低なことした。だから思いっきり殴ってくれ」
七草は引き裂かれたようなしい目で冬次を見つめ、首を横にふった。
「できないよ」
「でも」
「怒ってませんから。けど、今日は帰ってくれますか。この状態で一緒にいるのは辛いので」
そして膝を抱え、冬次のシャツに鼻をうずめる。
「ごめん」
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七草は気丈に明るく言って笑うと、寝室に閉じこってしまった。
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