誰にも内緒で、俺は変態のホストを飼育している。

豆ぱんダ

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変態ホストと楽しい愛の生活

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 藍野 ジンはポケットの中身をまさぐった。ないぞ・・・・・・、おかしいな。いつも家の鍵は尻の右側のポケットに入れてるんだけど。出かけた時にもそうしたはずだが。

 ドシャと買い物袋を床に放り、全身を触って確認する。

 買ったばかりのプリンが容器の中で斜めに崩れ、持ち手の隙間からカラメルと黄色が混ざってしまっているのが見えた。

 ———あーあ、やっちゃった。

 あいつが好きなやつなのに、上にたっぷりと乗っかった生クリームも、不恰好に潰れてしまった。

 でもいいか。どうせ食べる際にはぐちゃぐちゃになる。

 それよりも、鍵・・・・・・鍵・・・・・・。

 ———あ、まさか。

 ジンは嫌な予感がして、そっとドアノブを下げた。

 あー、やっぱり。こっちもやっちゃってる。

 行く時に鍵をかけ忘れて、そのままコンビニへ出かけてしまっていたようだ。

 買い物袋を拾い上げると急ぎ足で部屋に入り、慎重にリビングのドアを開ける。

「ンーーーーーーー!」

 一番に聞こえてきたのは男の呻き声。

 ベッドのポールに両方の手足を手錠で繋がれて、はりつけにされた金髪の青年。首にはペットショップで購入した黒い首輪。似合うと思って、鈴のついたやつにしている。

 彼はホストのネオンくん。源氏名しか知らないから、本名はわからない。

 これでも彼は店でのナンバーワンを半年間も守り抜いてるんだって。すごいね。

 だけど今は、せっかくの整った顔立ちが涙と鼻水で崩れ、口に咬まされたボールギャグのせいで涎も垂れ流し状態だ。

「いい子にしてたか?」

 ベッドサイドに近寄って、ネオンの顔を覗き込むと、彼は必死の形相で頷いた。

「そっか、偉い偉い。あと三十分くらい頑張れたら、おやつにしようね」

 言うと同時に、手近にあった「それ」を一つ、ばちんと取り去る。

「・・・・・・んごッ!!」
「はは、すごい声。ネオンくんのお姫さまたちにも聞かせてあげたいねぇ」

 ジンはニンマリと笑いながら、ネオンの身体を愛おしげに撫でた。指先が「それ」にちょんと触れただけで、ネオンはガクガクと震え出す。揺れにあわせ、チリチリンと鈴が鳴る。

 ———ふ、面白いなあ、かわいい反応。

 ジンが彼に何を施しているのかというと・・・・・・、べつに大したことではない、お仕置きと称したちょっとしたプレイである。ホストクラブでの勤務中、彼が客の女に笑いかけた数だけ、身体に洗濯バサミを飾ってあげているのだ。

 酒飲みのくせして、滑らかで陶器のような肌。

 挟まれた箇所が赤く腫れ、見ているこっちが痛々しい気持ちになる。

「お仕置きされてどんな気分?」

 喋らないと答えられない質問をあえて聞く。

 ジンは「返事がないなあ」と顔を顰め、溜息をつきながら手を伸ばした。

 ひくんと喉が引き攣るのが丸わかりで、「くく」とほくそ笑んでしまう。

 洗濯バサミをつける場所は、敏感な部分の際どいところと決めている。

 たとえば乳暈、色づきの部分だ。

 あとは内股と蟻の門渡り、窄まりと陰嚢の間のところ。

 プレイの一貫として陰茎に被った皮を軽く挟んだりもするけれど、これをやると恐怖で失禁することがある。だから放置するときはあんまりやらない。

 ちなみに乳首に挟むと悦んじゃって、おしっこじゃない別のものを吹いちゃうから、これもお仕置きには不向き。

 ———とはいっても、ネオンくんは痛ければ痛いほど感じちゃう変態さんなんだけどね。

 ジンはテーブルわきの棚を漁り、今つけているものより、ひと回り小さな洗濯バサミを取り出した。

 小さいけれどバネの力の強い、挟まれる痛みが最強のタイプ。

 泣き腫らして真っ赤に潤んだネオンの瞳の前でカラフルな洗濯バサミをチラチラさせ、「どこにつける?」などと言って、身体を順番になぞってゆく。

「俺が帰ってきたからここにしようか」
「ふぐぅッ!?」
「・・・・・・かわいいね、そんなに嬉しい?」

 ジンは半勃ちのネオンのペニスを洗濯バサミでつつき、カチカチと音を鳴らした。

「ン・・・・・・ン!!」

 呻き声をあげ、ネオンは暴れて抵抗する。

「こらこら、暴れると危ないよ。うっかり間違えて皮じゃなく本体を挟んだら、ネオンくんのおちんちんは使い物にならなくなっちゃうんじゃない?」
「ン———!!!」

 ネオンの目は恐怖で大きく見開かれた。ジンが被った皮を指先で摘んだ瞬間、瞳孔がぐるんと瞼の裏に回り、白目をむく。

 そして同時にジンの手をあたたかく濡らし、ネオンは射精していた。

「まだ出るよね?」

 そう言って、ごりごりと中身の玉どうしを擦り合わせるように陰嚢を絞ってやると、「かひゅ」と喉を鳴らして痙攣する。

「んぐッ、んごぉお・・・・・・!」

 ぎゅぎゅと握ると、乳搾りの要領で白い蜜が溢れ・・・・・・、最後は何も出なくなった。

 そうしたあとに尻穴に指を突っ込み、前立腺を捏ね上げてやれば、止まらないメスイキ地獄に突入する。

 快感に悶える声に、チリリンと鈴の音が重なる。

 イキすぎて呼吸困難になるイケメンホストの姿に目を細め、ジンは自身のジーンズのジッパーを降ろした。


  ◇ ◇ ◇


 ジンとネオンの出逢いは運命的であった。

 ジンの普段の仕事は言うのも躊躇うような、ありきたりな普通のサラリーマン。

 深夜まで職場の飲み会に付き合わされた挙句に終電を逃し、タクシーを使うのも気が引けて、繁華街を歩いて帰宅している途中のこと。

 さすがは夜の繁華街ということもあり、ホストクラブにキャバクラ、怪しい風俗店までが艶やかに軒を連ね、一歩進めば客引きにあい、また一歩進めば客引きにあい・・・・・・うんざりした気分だった。

 下を向いて早歩きをしていたせいで、道路脇から飛び出してきた人影に気がつかず、ジンは思いっきり衝突してしまう。

 いてててと腰をさすりながら立ち上がったのは、今どきの髪形にド派手な金髪、襟もとをガッツリと開けたスーツ姿の青年。

 明らかな、ホストだ。

 客を見送ったところだったのか、ぶつかってしまった場所はちょうどホストクラブの店先。

 なにか文句を言われないかと、おどおどしながら店を見上げて驚いた。

 でかでかと「ナンバーワン」と記されて、大きな看板にキメ顔で収まっているホストと、目の前のホストが同じだったのだから。

 ———いやあ、すごいなぁと感じると共に、男として自分が持ち得ない『すべて』を手にしているんだと思い知らされ、この一瞬で、別世界を生きる彼に嫉妬と羨望を抱いた。

 もちろん、追いかけるつもりなんてなかった。

 けれどほんの少しの出来心から、その後しばらくして、彼の勤務するホストクラブに行ってみたのだ。

 女性ばかりかと思いきや、男の客もちらほらといて、きちんと金さえ払えば、誰にでも楽しい時間を提供してくれる。

 ホストたちの評価はジンの中でうなぎのぼりに上がり、彼——ネオンへ向けられた嫉妬と羨望は瞬く間に爆発寸前まで膨れ上がった。

 ———いいなぁ。めちゃくちゃにしてやりたい。

 ———跪かせて、懇願させたい。

 ———彼の一生を壊して、俺の奴隷にしたい。

 ジンが生み出した狂気的な執着心は、『恋愛感情』ととても似ていた。

 ・・・・・・決行は、明日の朝にしよう。

 そしてネオンが勤務を終えてホストクラブを出た瞬間を狙い、頭を殴り、

 家に連れ帰ると丁重に縛りあげ、彼が覚醒するのを待った。

 どんな顔をしてくれるのか楽しみだ。

 でもその前に、綺麗すぎる顔は殴っておいたほうがいいだろうか・・・・・・?

 手に入れたとたんに湧いてくる強い独占欲。

 自分以外の誰かがネオンを好きになることへの憎悪。

 ジンは悩むが、ホストとしての命が絶たれてしまうのは本意ではなかった。

 彼にはホストを続けてもらいたい。なぜなら、自分が酔いしれたのは『ネオン』だからだ。

 ネオンである彼でなければ意味がないのだ。

 こうしてたぎるような衝動を抑え込み、そばで手を握り、気を失ったままの彼を見守った。

 目覚めたネオンはジンを見て慄き、次に怒り、罵倒する言葉を口にする。

 ジンは悲しくなって、たまらず彼の頬をぶってしまった。

 すぐに大変なことをしてしまったと我にかえり、ごめんね、ごめんねとギュッとすると、あらぬ硬いものが腹に触れた。

 ネオン本人も相当びっくりしているようで、とんでもない恥ずかしめに唇を噛んでいる。

 この頃はまだ彼の中に眠る淫らな性癖を、彼自身は自覚していなかった。
 
 しかしネオンは少しずつ少しずつ、秘められた欲望を開花させていってくれたのだ。

 これは自分とネオンとの、何モノにも変えられない愛の日々の記録である———。
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