何処かの世界の、ある『ふたご』のはなし

豆ぱんダ

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—永遠の戯れ—

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 数えきれない年月が経った。
 最悪で始まった遠い昔の記憶。


「あむ」
「・・・・・・美味いか?」
「ンんん、おいし」
「いつやらせてもメッカはしゃぶるのが上手だな」

 淫らな口の中につっこんだペニス。キッカは恍惚とため息をつく。
 あれからキッカはすぐに理解した。
 あのとき、アンデギヌスが言いかけていたのは『不浄の契約』についてだった。
 キッカの中にあるのは神の魂。半分の力しか持ち得ていないために、もう半分を求めて、定期的に肉体が疼くのだ。
 こんなふうになってしまうのは、なにもキッカだけではない。
 さまざまな理由から神力を失い、不安定な状態に陥ってしまう神は多数いるらしい。肉体が失った分の力を求めてしまうのである。
 復活も困難な場合には残った力をわざと二つに分け、片方を契約者に渡し、その契約者と繋がることで擬似的に肉体を満足させる方法を取る。
 これが『不浄の契約』。本来、神は神聖たる生命体であるため、性行為はタブーだ。純潔ではない人間と交わると、神の身体は溶けて消えてしまう。契約者に自らの神力を渡して己れの分身に昇華させるのには、これを防ぐ理由もある。
 色好みだったアンデギヌスはこの方法を悪用し、(本人の主張どおりに言うなら応用し)ネメトから生贄を奪っていたのだ。
 神力の程度により、契約を交わせる回数には限度がある。
 当然、メッカ以外の人間と契約を交わす気はなかった。
 キッカは神の力を利用して数多の世界線を駆けまわり、メッカが生まれ変わってくるのを待ち続けた。年月にして、おおよそ一千年とちょっと。
 生まれ変わったメッカはあのころの容姿そっくりに生まれてきた。神に通ずる儀式に関わっていたおかげか、うっすらとだが前世の記憶を持っていたことも幸いだった。
 そうして見つけ出したメッカと再び肉体を繋げ、神力の源である精を共有し合いメッカはキッカと同じ神同等の存在になった。
 菫の花のような紫色の瞳、美しく艶めいた黒髪、今は揃いの山羊の角を生やしている。そんな弟の顔を見つめるたびにキッカの性欲は最高潮に達した。
 それを言うと、『僕もだよ、兄上も変わらずかっこいい』と恥じらいながら応えてくれる。生まれ変わった際に親に与えられた名前をベグドールというが、昔の名を、——メッカと呼ばれるのを好む。そういったところも、いじらしく愛らしくて、キッカは堪らなかった。

「愛してるメッカ、今日はどっちがしたい?」

 キッカはチュッと弟の手の甲に口づけた。
 天界の雲の部屋に、神の力で創り出した巨大なベッド。ふわふわのスプリングの上で、大半の時間を絡み合って過ごすのが『ふたご』の日課だ。

「んー、兄上を抱きたいな」
「いいよ」

 ここには二人しかいない。二人だけの異空間。
 誰のことも気にせず、互いの精を貪ることに没頭できる場所。

「おいで」

 大きく足を広げて弟を迎える。下品でイヤらしい体勢を取ってやればやるだけメッカは悦ぶ。

「こんなに逞しい兄上を好きに鳴かせていいなんて、僕は幸せです」
「ふ、可愛いやつ、昔みたいに兄ちゃんって呼んでも構わないんだぞ?」
「それは恥ずかしいよ」
「ははは、そうか」

 メッカはメッカでも、今の弟にはベグドールとしての人格も混ざっている。単に長く生きている分、精神的に成長したということでもあるかもしれない。
 自分の知らない、昔の弟ではない部分があるのだと思うと、ほんのりと寂しい思いに駆られる。キッカが何気なく目を伏せた瞬間、どろっと粘度の高い先走りを後孔に擦り付ける動きをしていたメッカが腰をぐいっと前に突き出した。

「ぅ、あ、あああっ」
「兄上、集中して」

 じゅぷんっという粘液音。熱い雄の象徴がひと息に媚肉の輪を通過し、腹側のしこりをなぶってくる。
 たん、たん、と規則的に突き上げられ、あられもなく喘いでしまう。互いに知り尽くした身体。気持ちよくするのも、気持ちよくなるのもお手のもの。
 肉体どうしを繋げれば、すべてがどうでもよくなり、たちまち双方に夢中になった。

「もっと激しく」
「ん、ね、兄上、淫具使ってもいい?」
「え、またかぁ・・・どんな?」

 メッカはキラキラした目で訊いてくる。これは前世ではなかった趣味だった。毎日、各世界線に飛んでは淫らな性玩具を持ち帰ってくるという神力の無駄遣いをしている。
 苦笑すると、ニヤリと笑ったメッカがを取り出した。

「じゃじゃーん!」

 手のひらに乗る大きさの丸いそれ。

「何この石」
「石じゃないよ。ニホンってとこで手に入れてきたんだけど、ここのスイッチをカチッとやれば・・・・・・」
「うぉぉ、ぶるぶるしている」

 それは特別な力を通さずとも振動を始めた。なんという先鋭的な道具。するとメッカは目を丸くしているキッカの胸の尖りにそれを寄せた。

「ひあっ」
「気持ちいい? ローターって言うんだってさ。ふふ、すごいね、胸に当てるとナカがひくひくする」
「んあっ、あ、これ、ううううっ」

 乳首にローターが軽く触れるだけで胸全体が震わされ、甘く蕩けていくような刺激が広がっていく。
 徐々に強の段階をあげられ、尻に響いた。振動に耐えるために力が入るのか、弟のペニスを腸壁できゅうと締め付けてしまう。自然と内腔が狭くなり、自らしこりを押し付けるように腰が動く。そうなればもう止まらない、快感の連鎖がキッカを襲った。

「あう、あううっ」

 もう片側の乳首は舐め上げられ、ちゅるると音がするほど吸い出される。

「ひいいいっ」
「は、可愛い、兄上」

 キッカのペニスから白濁が溢れる。ピストンなしに、乳首への刺激で極めたのだ。
 頬にかかった精液を舐め取り、メッカは愉しそうな顔をする。普段なら憂いを帯びている菫色の瞳がぎらつき、さながら肉食獣に見えるくらいだ。

「兄上、もっとよがってるとこ見せて」

 ブゥゥンと蜂の羽ばたきみたいな音を響かせて、振動するローターが精を吐き出したばかりの子種袋に当てられる。

「うぐ、ンぉぉおっ」

 これにはたまらず呻き声が漏れた。キッカの上げた雄叫びは色っぽくも聞こえなかったのに、メッカは悦び勇んで兄の二度目の射精を見つめている。

「ひぎいい、やめ、やめでぇ・・・普通に・・・・・・普通にしたい」

 キッカは嗚咽で喉を詰まらせた。

「うん、うん、そうだね。ごめんね、つい可愛いから」

 ローターのスイッチが切られているにも関わらず、ぞくりと腹の奥底を震わせてくる声に背中がしなった。涎を垂らして首をもたげたキッカのペニスにメッカは優しく手を添えてくれる。

「あ、っう」
「大丈夫、今度はじっくり愛し合おうね」
「ン・・・・・・メッカ・・・・・・愛してる」
「僕も、兄上以外は何もいらない」

 濡れて甘えた声に煽られてキッカの方から口づけた。唇が合わさった途端に舌をしゃぶられる。
 幾度も角度を変えながら唇を重ね合い、呼吸を封じられたまま、息をひそめていた腹の内の熱の塊が蠢き出す。揺さぶるように焦らすように、時折り内臓をこねるようにぐるりと腰を使われる。
 互いの下生えが擦り合うほどに埋め込まれた肉杭が臍の裏側まで届いて、おかした身体をさらに拓こうと、突き当たりを掻き回した。

「兄上、好きなところに挿れてあげるからここ開けて」
「ふぐうう・・・っ、んあ、あっ、ふぅ、ふぅ、待っれ、んぃい!」

 歯を食いしばったと同時に、キッカの全身が引き攣った。

「はいっちゃったね。兄上と深く繋がれて嬉しい」
「・・・・・・あ、あっ」

 さすがに意識が白む。勝手に腹の中が収縮して痙攣し、こじ開けられた臍の裏側がいっぱいで苦しい。
 返事を返す余裕もないが、キッカはうっとりと自分を見ている弟に精一杯の微笑みを返した。

 
「こうしてると・・・ほんとうにひとつになれそうだ」


 もう誰にも邪魔されない。邪魔させない。


 ———キッカとメッカ、二人は『ふたご』。
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