ラブドール

倉藤

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ロイシア国の公爵《プリンス》のこと

55 公爵のために

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 それから少しして譲はDP54ことドムのつぶらな瞳に負けた。
 イザークの口車に乗せられたんじゃない。ドムに負けたのだ。
 譲は寸前まで言い訳がましく呟きながら、ドムの口の中にメッセージを忍ばせた。

「飲み込まないようにな。頼んだぞ」

 ドムの頭を撫でてやる。
 わかっているのかいないのか、ドムは使命を託され、「任せろ」と胸を張ったみたいに鼻先を上げた。
 実行に移してしまってからは、一日をソワソワして過ごした。
 メッセージを綴った紙が涎でヨレヨレになっていないか。
 ヴィクトルとロマンに見つかってやしないか。
 夜を迎えて就寝時間になり、譲は居ても立っても居られなくなる。中庭に忘れ物をしたと言って確認しに行くと、既に紙はドムの口から回収された後だった。
 胸を撫で下ろしたが、これでメッセージは譲の手を離れた。間者を通してイザークに届けられる。後戻りはできなくなったということだ。
 話を聞くだけのつもりでいるが、ヴィクトルについて教えて貰った後のことは正直わからなかった。
 ヴィクトルの印象は良いと悪いの両方。複雑であり、最初は最悪で、最近は良い方に傾いている。それがどう転んでしまうのかは神様にしかわからない。
 けれど何も知らないでいるより、力になれることがあるかもしれない。譲を動かしているのはヴィクトルに対するマイナスな感情ではないのだ。
 譲はイザークとのやり取りを墓場まで持っていく覚悟をしている。
 ひっそりと教えて貰うくらいならきっと許されると思った。
 だが確認を終えた譲は部屋に戻り、おやすみとキスをして去ろうとするヴィクトルを引き留めると、ベッドに引っ張り込んだ。後ろめたさを隠したかったのだ。
 ヴィクトルが不意を突かれ、倒れ込む。
 譲が笑うと、頭を撫でられた。

「急にどうしたの。眠たくないのかな?」
「んー、奉仕っていうの、そういう気分だからさ。たまには俺からさせて」
「可愛いことを言うね。うっかり抱き殺してしまいそうだ」
「はは、怖いよ・・・それでもいいけどさ」

 そんなふうに思える自分はどうかしている。

「公爵のあれを舐めたい。俺の手は繋がれてるから公爵が俺の口に咥えさせてよ」

 譲はヴィクトルを見上げた。鎖の長さには余裕があるので、ヴィクトルのものを股間から取り出すことはできる。譲は甘えていた。

「勿論だ。譲の願いなら」

 ヴィクトルが前立てをくつろげる。隆々と血管が張り巡らされた、漲った性器がぼろんと飛び出してきた。

「凄い、もうこんなに。今ので興奮した? うれしい?」
「ああ、たまらない」
「———ん」

 鼻に亀頭を擦りつけられる。むわっとした雄の匂いが鼻腔を通り、譲の脳髄を焼き、ぐらぐらと崩壊させる。

「んぁ、はい、ここにどうぞ」

 譲は口を開け、レェと舌を出した。
 その上に熱い肉棒が乗る。嵩が大きく重量があり、唇で包み込むと、竿の大部分がはみ出していた。
 喉を拓いて奥まで咥えても、全部はとても含めなそうだ。

(こんなデカいのが俺のナカにいつも・・・・・・ッ)

 窄まりが疼いた。そこの奥の、さらに奥も。譲は気を散らすように、ぺちゃぺちゃと音をさせながら裏筋に舌を這わせた。

「気持ち良いよ、もうちょっと深く挿れられるかな?」
「・・・ン、ん、ぅ」

 ヴィクトルが譲の頭を抱えて腰を逸らした。苦しくて涙が滲む。

「私の可愛い譲」

 うっとりと呟いて、ヴィクトルは譲の首に指を這わせた。

「もっと苦しくして欲しいかい?」

 掠れた声。穏やかで低いヴィクトルの声で問われてしまうと、譲は頭が上手く働かなくなる。

「ングっっ」

 頷くと喉が締まり、譲は目をぎゅっとつぶった。
 ぱんっぱっと乾いた音がリズミカルに響く。ヴィクトルが自分で腰を振り、譲の喉を使って先端をしごいている。
 譲の喉が、がぽがぽと痛ましい悲鳴を上げた。ヴィクトルはわざと強く腰を振り立て、このままではちっ息しそうだ思った時、大きな手で頭を抱え直される。

「ありがとう譲、もうすぐ出るよ」

 唇に金色のゆるやな茂みが打ちつけられ、喉を蹂躙しつくした凶器が脈打った。
 喉が熱い。吐きそうで苦しいのに、譲自身も勃起する。これで下も貫かれ壊れるまで揺さぶられたいと———、譲はヴィクトルの白濁を飲み干しながら、どうしようもない下半身の火照りを持て余してしまった。

「まだ物欲しそうだね」
 
 ヴィクトルは譲の蕩けた表情を見逃さない。
 譲は腰を持ち上げられ、長く深い夜に溺れた。
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