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竹尾安五郎
◯安五郎 三
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暫くすると、勝堂が思いついた。
「そうだ、いいヤツが居るよ。うちの女郎に入れあげている半端な渡世人がいたよ」
安五郎は、あまり気乗りしない様子で言う。
「おいおい、そんなのに任せるのかよ」
「駄目で元々さ、兄弟」
「まぁ、そうだな」
安五郎は納得する。
「それで、そいつは何て名だい?」
「追分参五郎と言う流れ者さ。一月前から家に草鞋を脱いでいるんだが、妙に金回りの良いヤツで、毎日のように女郎屋に通ってやがる。馴染みは一人で、節と言う女さ。まぁ、稼ぎ頭の上玉だがな」
安五郎は、勝堂の説明を聞いて、段取りを考えた。早速、参五郎が呼ばれる事になる。
「親分さん、おいらに用ですって?」
追分参五郎は、様子の良い男だった。色白の優男で、江戸や京、大阪と言った華やかな場所でモテそうな役者顔をしている。関八州の荒くれ者が跋扈する土地に似合わない感じがした。当然、女にはウケるが、男には嫌われる。勝堂も安五郎も、参五郎を好きになれなかった。
「参五郎さん、あんたを漢と見込んで頼みがあるんだ」
勝堂は、改まって言う。参五郎は警戒した。甲州の大親分ともあろう者が、一介の渡世人に丁寧な言葉を使う。必ず裏があると予想できた。
「上州の前田栄五郎の所に、清水寿郎長と言う渡世人が草鞋を脱いでいる。この寿郎長は、清水湊で一家を構える天神一家の親分を斬り殺した凶状持ちだ。こいつを何とかして欲しい」
勝堂の頼みは、予想通りろくでもない内容だった。
参五郎は、苦い顔をする。
「おいら一人で行くんですかい?」
当然、不満に思う。参五郎は寿郎長に恨みなどないから、いくら一宿一飯の恩とはいえ、命のやり取りは御免こうむりたい。
「参五郎さん、あんたの働き次第で、節の借金を帳消しにしてもいいんだぜ」
参五郎は、勝堂の提案に心が揺れた。
「本当ですかい?」
勝堂は、参五郎の問いに胸を張って答える。
「おれも甲州じゃ名が売れた漢よ。嘘偽りは無いぜ」
参五郎は、勝堂の提案を検討していた。節は、何処かの誰かにしろ、人が死んだ金で自由になりたいとは思わないだろうし、参五郎も訳もなく命を取る行為は気乗りしない。
「勝堂親分、節は自分で身請けします。殺しの方は他を当たってくんなさい」
参五郎が頭を下げると、竹尾安五郎が口を挟む。
「そうかい、お前の愛しい女がどうなってもいいのかい? なぁ、勝堂よ。女にいっぺんに借金を返して貰ったらどうだ?」
勝堂は、兄貴分の言葉の意味を解りかねていた。怪訝な顔をしていると、安五郎は話を続けた。
「節と言う女郎を、寝かさずに働かせるのさ。客をどんどん取って、観音様が擦り切れるまで使わせろ。一発五十文でやらせれば、店の前はお祭り騒ぎの行列ができて、商売繁盛だろう。おれも島帰りだから、そうとう溜まっているぜ。参五郎、お前が身請けする頃には、使い物にならないごみ屑かもな」
勝堂は、安五郎に説明されて合点がいく。話を合わせた。
「そうだな、使い潰しちまおう」
参五郎は、勝堂が本当にそんな無茶な真似をするとは思っていなかったが、万が一でも可能性があるので、悩んでしまう。そこへ、追い打ちが来た。
「おい、参五郎、おれは本気だぞ」
勝堂の一言で、参五郎は降参した。
「分かりましたよ親分さん。清水寿郎長の命を取ってきますよ」
「そうだ、いいヤツが居るよ。うちの女郎に入れあげている半端な渡世人がいたよ」
安五郎は、あまり気乗りしない様子で言う。
「おいおい、そんなのに任せるのかよ」
「駄目で元々さ、兄弟」
「まぁ、そうだな」
安五郎は納得する。
「それで、そいつは何て名だい?」
「追分参五郎と言う流れ者さ。一月前から家に草鞋を脱いでいるんだが、妙に金回りの良いヤツで、毎日のように女郎屋に通ってやがる。馴染みは一人で、節と言う女さ。まぁ、稼ぎ頭の上玉だがな」
安五郎は、勝堂の説明を聞いて、段取りを考えた。早速、参五郎が呼ばれる事になる。
「親分さん、おいらに用ですって?」
追分参五郎は、様子の良い男だった。色白の優男で、江戸や京、大阪と言った華やかな場所でモテそうな役者顔をしている。関八州の荒くれ者が跋扈する土地に似合わない感じがした。当然、女にはウケるが、男には嫌われる。勝堂も安五郎も、参五郎を好きになれなかった。
「参五郎さん、あんたを漢と見込んで頼みがあるんだ」
勝堂は、改まって言う。参五郎は警戒した。甲州の大親分ともあろう者が、一介の渡世人に丁寧な言葉を使う。必ず裏があると予想できた。
「上州の前田栄五郎の所に、清水寿郎長と言う渡世人が草鞋を脱いでいる。この寿郎長は、清水湊で一家を構える天神一家の親分を斬り殺した凶状持ちだ。こいつを何とかして欲しい」
勝堂の頼みは、予想通りろくでもない内容だった。
参五郎は、苦い顔をする。
「おいら一人で行くんですかい?」
当然、不満に思う。参五郎は寿郎長に恨みなどないから、いくら一宿一飯の恩とはいえ、命のやり取りは御免こうむりたい。
「参五郎さん、あんたの働き次第で、節の借金を帳消しにしてもいいんだぜ」
参五郎は、勝堂の提案に心が揺れた。
「本当ですかい?」
勝堂は、参五郎の問いに胸を張って答える。
「おれも甲州じゃ名が売れた漢よ。嘘偽りは無いぜ」
参五郎は、勝堂の提案を検討していた。節は、何処かの誰かにしろ、人が死んだ金で自由になりたいとは思わないだろうし、参五郎も訳もなく命を取る行為は気乗りしない。
「勝堂親分、節は自分で身請けします。殺しの方は他を当たってくんなさい」
参五郎が頭を下げると、竹尾安五郎が口を挟む。
「そうかい、お前の愛しい女がどうなってもいいのかい? なぁ、勝堂よ。女にいっぺんに借金を返して貰ったらどうだ?」
勝堂は、兄貴分の言葉の意味を解りかねていた。怪訝な顔をしていると、安五郎は話を続けた。
「節と言う女郎を、寝かさずに働かせるのさ。客をどんどん取って、観音様が擦り切れるまで使わせろ。一発五十文でやらせれば、店の前はお祭り騒ぎの行列ができて、商売繁盛だろう。おれも島帰りだから、そうとう溜まっているぜ。参五郎、お前が身請けする頃には、使い物にならないごみ屑かもな」
勝堂は、安五郎に説明されて合点がいく。話を合わせた。
「そうだな、使い潰しちまおう」
参五郎は、勝堂が本当にそんな無茶な真似をするとは思っていなかったが、万が一でも可能性があるので、悩んでしまう。そこへ、追い打ちが来た。
「おい、参五郎、おれは本気だぞ」
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「分かりましたよ親分さん。清水寿郎長の命を取ってきますよ」
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