上 下
15 / 22
エピソード 5

○梅ババア

しおりを挟む
 私は、ドアの取手の部分をスマホで撮影します。花子さんは、お馴染みのピッキングスキルで解錠します。手が緊張で震える中、十年ぶりに扉を開けたのです。

 室内は、荒れ放題で汚れています。私は、玄関を通り、居間へ行きます。過去の記憶を呼び覚ますアイテムが、所々で目に入るのです。
 居間は、畳が焼け焦げていました。その痕跡は、母が灯油を被って焼身自殺をした時の物でしょう。窓硝子も割れています。

 私は、その時の様子を目撃していません。当時七歳だった私を哀れんで、メリーさんが見せない様に外へ連れ出していたのです。
「早苗、お母さんの最期を見る覚悟はある?」
 花子さんがスマホの中から声を掛けます。私は、何時になく真剣なオカッパ小学生を、茶化す事はできませんでした。
「お願いします」
 私は、覚悟を決めて返事をしました。すると、花子がブラックアウトし、画面が横向きに変化します。それに合わせ、スマホを横向きにしますが、上下が逆さまだったらしく、画面の方が修正して合わせてくれました。お気遣いどうも。
「ドジ!」
 花子さんから音声だけの突っ込みが入ります。ご指摘どうも。

 その後、映像が流れます。
しおりを挟む

処理中です...