花子さんはアプリの中にいるの

エピソード 5

○土蜘蛛 2

　鬼ババアさんを撃退したツイちゃん、私、花子さん、メリーさんは、次の行動に移ります。それは、私の住んでいたA505の玄関に残されたメッセージに従う事です。そこには、「早苗ちゃん、E103へ来て」などと書かれていました。

　さて、私たちが居るのはA棟で、通常ならば下まで降りてからE棟を目指す事になりますが、屋上から屋上を伝われば、もっと早く目的地へ移動できます。マンションは、公園を囲んで並んで建っているので、A棟はB棟とE棟に挟まれています。ピョンと跳べばE棟の屋上へ着地できるのです。
　とは言え、隣の棟までは十メートルはあり、人の跳躍力では無理があります。

「ツイン、皆を背中に乗せて行ける？」

　花子さんから下された命令に、ツイちゃんは従います。

「良いにゃ、早苗もメリーも背中にのるにゃ」

　ツイちゃんは跳躍すると、軽々とフェンスを飛び越え、A棟の屋上からE棟の屋上へ移動しました。一匹で……。

「にゃんだ、誰も乗って居ないにゃ」

　ツイちゃんがE棟の屋上で飛び上がって抗議するのが、A棟の屋上から見えました。

「バカ猫、乗客を確認してから飛びなさいよ！」

　花子さんの叱責が飛びます。

「オイラはプロドライバーじゃないにゃ！ 二種免許を持ってないにゃ！」

　ツイちゃんは、ブツブツ言いながらも戻って来て、私たちを乗せて跳躍します。こうして、無事にE棟の屋上へ着くと、次の目的地へ向かいます。