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映画2

8番出口

　迷う人は、奇妙な通路を歩いていた。一見すると、地下鉄の通路だが、行き交う人が居ない。明らかに変な場所だった。しかも、出口がない。迷う人は、８番出口から出たかった。
　さて、以前、迷う人は、迷わない人だった。仕事と睡眠以外は、スマホを見て時間を過ごす。四角い世界に没頭する事で、迷いを捨てた。そんな男が、迷いを持ったのは、彼女からの電話で、妊娠した事を告げられたからだった。迷いが出た途端、この不思議な通路を歩く事になる。
　迷う人は、通路で子供と出会う。子供は、通路で起こる異変を察知する能力が優れていた。この通路では、異変を察知した場合、すぐに戻る必要がある。そうしないと、８番出口が現れない。迷う人は、何故か、初対面から子供を信用できた。

　そんな時、前方から洪水が押し寄せる。洪水に流された迷う人は、何故か浜辺に居た。隣には、恋人が居て、二人には子供が居た。二人の子供は、既に成長していて、迷う人に貝殻を渡す。その貝殻は、地下鉄の通路で出会った子供が持っていた物と同じだった。

　迷う人は、我に返ると、子供と一緒に濁流に流されている最中だった。その瞬間、父親になる決意をする。子供を８番出口を示す看板の上へ押し上げ、自身は流された。

　迷う人が意識を取り戻すと、８番出口が現れる。迷う人は、地下通路を抜け、電車に乗り込んだ。謎の地下通路では、些細な変化を見逃さなかった者だけが正解を得た。迷う人は、無関心では、絶望のループから抜け出せない事を学んだ。迷いが消えた事で、出口が現れたのだと確信した。